先週はオリコンによる年間ランキング、そして昨日は『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)による年間のCDTVオリジナルランキングが発表されています。後者は複合指標から成り、また前者にはダウンロードおよびストリーミングをフィジカルセールスと合算したランキングが存在しますが、このブログでは複合指標から成るチャートにてビルボードジャパンソングチャートが最も社会的ヒット曲の鑑であると、以前から記しています。
3つのチャート/ランキングについては2023年度および2024年度を比較した上で、信頼できるのはビルボードジャパンのみと断言しました。では2025年度はどうか、あらためて比較します。
ビルボードジャパンによる2025年度の年間チャート記事、およびソングチャートを主体に分析したエントリーはこちら。今回はこのエントリーにて掲載した表を基に、3つのチャート/ランキングの順位比較表を作成しています。
Billboard JAPAN 2025年年間チャート発表、Mrs. GREEN APPLE/Snow Manが首位 https://t.co/1KyOYjudpe
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年12月4日
オリコンの年間ランキングはこちら。
今回発表されたチャート/ランキングを踏まえ、作成した順位比較表を掲載します。なおオリコンについては『無断で番組でのご使用、Webサイト(PC、モバイル、ブログ等)や雑誌等で掲載するといった行為は固く禁じております』とホームページ下部に記載されています。そのため、オリコン側から指摘があった際は表を取り下げる予定です。
さて、まずは昨年記した内容を再掲します。
ビルボードジャパン以外のふたつのランキングについては、このブログにて以前より問題点を指摘しています。
しかし2023年度、そして今年度の年間ランキングを見るに、問題が解決されたとは言えません。オリコン合算シングルランキングでは公開範囲の狭さ、また”フィジカルシングル(パッケージ)”を単位とするチャートポリシー(集計方法)では曲としてのヒットを読みにくいことが問題であり、一方のCDTVオリジナルランキングにおけるチャートポリシーの曖昧さについてはチャート管理者としての責任意識を疑わざるを得ません。
3つのチャート/ランキングを比較するとオリコンおよびCDTVオリジナルランキングにおいてはフィジカルをリリースしたシングルの上位進出が目立ちます。オリコンではビルボードジャパンのように一定枚数以上の週間セールスに係数処理(減算処理)を施していないことが要因ですが、CDTVオリジナルランキングではおそらくビルボードジャパンと同じサウンドスキャンのデータを用いながらその比重を高めていると思われます。
・2024年度年間ソングチャートを比較…ビルボードジャパンのみ信頼可能と考える理由(2024年12月21日付)より
昨年のエントリーを再掲したのは、オリコン合算シングルランキングが2025年度も変わらず、そしてCDTVオリジナルランキングについては基礎となるチャートポリシーについて引き続き明かされていないため。後者についてはビルボードジャパンからのデータ提供を受けた上で、独自のチャートを制作しているものと思われます。
(ビルボードジャパンによるデータの提供はJ-WAVE『TOKIO HOT 100』でも行われています。詳しくはJ-WAVE「TOKIO HOT 100」ビルボードジャパンのデータを合算開始 | Daily News | Billboard JAPAN(2022年4月3日付)をご参照ください。)
しかしながら、CDTVオリジナルランキングは2025年度において大きく変貌しています。実は2025年度6月度以降の月間ランキングにて、"(ビルボードジャパンと同様の)リカレントルール適用"に加えて、"一定期間より前にリリースされた曲の中長期チャートからの除外"も行われています。そのことは、3つのチャート/ランキング結果を比較するとよく解ります。



3つのチャート/ランキングの比較表はこちら。

ビルボードジャパンソングチャートによるリカレントルールは、ストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートを指標化する際、総合ソングチャートに52週ランクインした曲に対しその翌週以降減算処理を施すというもの。これはMrs. GREEN APPLE「ライラック」を筆頭に6月以降行われているのですが、その「ライラック」はCDTVオリジナルランキング(データはこちら)でも減算処理が実行されていると推測可能です。
その上で、CDTVオリジナルランキングでは年間ランキングにおいて、2025年リリース曲のみで構成する形を採っています。テロップや冒頭ナレーション等でその旨が紹介されており、またそのチャート(変更)を好意的に受け止めている方もいらっしゃる模様です。しかしながらこの点についてはいくつかの問題があるといえます。
たしかにチャートはフレッシュとかもしれません。集計期間内にヒットした"集計期間内リリース曲"が読み取れるゆえです。しかしながら集計期間内には集計期間外リリース曲もきちんと聴かれており、CDTVオリジナルランキングが採用したチャートポリシーではその存在が可視化されないことになります。
またこのチャートポリシーでは、たとえば2024年以前にリリースされながら今年になって(再度)ヒットした曲(ORANGE RANGE「イケナイ太陽」や清水翔太「PUZZLE」、ちゃんみな「SAD SONG」等)はヒットが可視化されません(「SAD SONG」は2019年のアルバムにボーナストラックとして収録後、今年1月配信開始)。この状況は今年ヒットしたKAWAII LAB.(FRUITS ZIPPER、CANDY TUNEおよびCUTIE STREET)の各曲でも同様です。
2025年リリース曲に絞った年間ランキングの用意は、いわば"あちらを立てればこちらが立たず"の状況を作ることになります。しかも週間単位では(先程例示したMrs. GREEN APPLE「ライラック」に代表されるように)2024年以前リリースの複数曲がランクインを続けている状況であり、そのことは番組ホームページから確認できるゆえ尚の事混乱を招きかねません。
ゆえに過去曲が入っていないことは、もっとはっきりと訴求すべきではないかというのが私見です。それを堂々と示した上で、ビルボードジャパンとの差別化を図っていると述べればいいのではないでしょうか。ただしそれを行うならば、チャートの設計方法等を明示することも必要となるはずです。これら提案を記し、改善を強く願います。
そのCDTVオリジナルランキングはチャートの設計方法のみならず、集計期間についても明示していません。それが次の問題を引き起こしているといえます。
CDTVオリジナルランキングでは、SEVENTEEN「消費期限」(ビルボードジャパンでは2024年12月4日公開分にて51万枚以上のフィジカルセールスを記録)および乃木坂「歩道橋」(同12月18日公開分にて60万枚以上のフィジカルセールスを記録)が、2024年度そして2025年度双方のランキングにも登場していません。ビルボードジャパンやオリコンではどちらかの年度に何かしらの形でランクインしているのとは対象的な動きです。
考えられるのは2点。ひとつはCDTVオリジナルランキングが昨年12月途中からの52週を集計期間とした一方で今年リリースの曲のみを抽出したために「消費期限」等が上位80曲に含まれなかったこと。もうひとつはCDTVオリジナルランキングの集計期間が2025年以降となり年間52週未満であるという可能性です。しかしながら前年度も同種の問題が起きていたことを考えれば、後者の推測が正しいのではいうのが自分の見方です。
そのような状況も踏まえ、昨年記した内容を再掲します。CDTVオリジナルランキングは変わったものの、説明不足であることを踏まえればやはり昨年の印象が大きく好転することはありません。
無論推測の域を出ないと言われればそれまでですが、CDTVオリジナルランキングは集計期間等のチャートポリシーをホームページ(→こちら)にて明かしておらず(そもそも年間ランキングも未掲載のままです)、年間ランキングを紹介した『CDTVライブ!ライブ!』(TBS 12月16日放送)でもポリシーを紹介していません。ポリシー未記載ならばどんな対応も可能にできる以上、このランキングを信頼することは厳しいと考えます。
そもそもCDTVオリジナルランキングが週間で100位までに対し年間で80位までの公開にとどめることも信用するに至れない理由ですが、公開範囲の問題はオリコンも同様です。週間の合算シングルランキングが50位までの公開に対し、年間ではフィジカルシングルが25位まで、ダウンロード(デジタルシングル(単曲))およびストリーミングが10位まで、そして合算シングルが10位までというのはやはり納得できるものではありません。
そのオリコンは、合算シングルランキングにおいてフィジカルシングル(パッケージ)が単位となっており、パッケージに複数のヒット曲が含まれている場合はどの曲が強いか、このランキングでは把握することができません。たとえばSixTONES「Imitation Rain」とSnow Man「D.D.」が2in1の形でフィジカルリリースされた際にも同種の指摘を行っていますが、これらからはオリコンのスタンスがみえてくるかもしれません。
オリコン合算シングルランキングは売上金額の把握に有効ゆえ必要と見る向きもありますが、仮にそうだとして、それ以上に不備やいわゆる突っ込みどころの多いランキングゆえ信用するに至れないというのが、厳しくも私見です。
ビルボードジャパンソングチャートについても改善が必要と考える点はありますが(弊ブログではその都度提案を実施しています)、オリコンおよびCDTVは問題点の未解決が続いている状況も含め、チャート管理者としての姿勢を疑わざるを得ないというのが自分の見方です。
・2024年度年間ソングチャートを比較…ビルボードジャパンのみ信頼可能と考える理由(2024年12月21日付)より
(なおビルボードジャパンへの改善提案については、先月のエントリーにて記しています。つきましては、2026年度開始を前に、ビルボードジャパンへの改善提案をまとめる (その1:チャートポリシー変更に関して)(11月24日付)および2026年度開始を前に、ビルボードジャパンへの改善提案をまとめる (その2:情報発信に関して)(11月29日付)をご参照ください。)
オリコンについてはビルボードジャパンより早く、合算アルバムランキングにストリーミング指標を採り入れていますが、ビルボードジャパンが2025年度序盤にこの指標を組み入れたことでオリコンの優位性は薄れたと捉えています。合算アルバムチャート/ランキングの公開範囲、フィジカルセールスのウエイト、聴かれ続けるアルバムの可視化状況を踏まえれば、ビルボードジャパンがより好いというのが私見です。
今回比較したチャートに対する自分の判断は厳しいと言われかねませんが、音楽チャート管理者のチャートポリシー開示は前提と考えます。なおCDTVオリジナルランキングにおける集計期間の未公表や1年未満での設定は多くのサブスクサービスでも同様であり(ビルボードジャパンおよび主要ストリーミングサービスの年間チャートを表にまとめ、比較する(12月14日付)参照)、音楽チャート発信者全体の意識向上が特に必要でしょう。
その上で、今回採り上げた3つのチャートについて好意的な表現を用いるならば、"差別化ができた"のかもしれません。フィジカル単位を優先するオリコンは大まかな売上金額を、CDTVオリジナルランキングはその年リリースした曲のヒットを、そしてビルボードジャパンはリリース年に関係なくリリースした曲のヒットをそれぞれ可視化し、私たちはそれぞれのチャート/ランキングからそれらが把握可能になったといえるでしょう。
ただし、今年初開催されたMUSIC AWARD JAPANのエントリー(ノミネートの前段階)基準においてはビルボードジャパンのデータが特に重視されていることもあり、業界内の信頼度はビルボードジャパンが最も高いと考えられます。昨年も最後に記したことを再掲するならば、ビルボードジャパンには『尚の事、オリコンに知名度で勝り、CDTVオリジナルランキングのようにメディア露出を高めるよう努める』ことを強く願います。