ビルボードジャパンは本日、2025年度年間チャートを発表しました。集計期間は2024年12月4日~2025年11月26日公開分(集計期間:2024年11月25日~2025年11月23日)の52週となります。
(Global Japan Songs Excl. JapanおよびJapan Songs(国別/地域別)チャートについては2024年12月5日~2025年11月27日公開分(集計期間:2024年11月22日~2025年11月20日)の52週が集計期間となります。)
主要3チャートの首位獲得曲/アルバム/歌手をサムネイルに配置した、ビルボードジャパンによる記事まとめはこちら。
主要チャートはソングチャート(Hot 100)、アルバムチャート(Hot Albums)およびトップアーティストチャート(Artist 100)の3つを指します。トップアーティストチャートはソングチャートとアルバムチャートを合算したものです。
Billboard JAPAN 2025年年間チャート発表、Mrs. GREEN APPLE/Snow Manが首位 https://t.co/1KyOYjudpe
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年12月4日
ビルボードジャパンによる各チャート記事のリンク、および詳細なデータは下記エントリーでまとめています。こちらにはソングチャート毎週の1~5位曲リスト、各指標週間上位20曲(フィジカルセールスを除く)、Top User Generated Songsチャート、ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20、Heatseekers SongsチャートおよびHot Shot Songsチャートの週間上位20曲等を四半期毎にまとめたエントリーのリンクも掲載しています。
年間ソングチャート100位まで、およびフィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミング各指標の基となるチャートの順位は下記表をご参照ください。Top Singles Salesチャート、Download SongsチャートおよびStreaming Songsチャートについて、総合100位以内ランクイン曲は100位まで、総合100位未満については50位までを掲載しています。指標の基になるチャートと指標化後の順位は、ダウンロード以外異なります。



またトップアーティストチャート20位までの歌手における指標別順位はこちら。なお下記画像はこのエントリーにて最初に紹介したポスト内の記事に掲載されています。

今回のエントリーにて貼付しているソングチャート、アルバムチャートおよびトップアーティストチャートのCHART insightは、2025年12月3日公開分(2025年度最終週)までの最大60週分となり、CHART insightにおける順位は同日公開分のそれを指します。
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位(棒グラフ表示)、および構成指標等(折れ線グラフ表示)において、いずれも100位まで表示
(今回紹介するCHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています。ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています。)
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
それでは、年間チャートから見えてくる2025年度の注目ポイントを10項目紹介します。2024年度については(追記あり) ビルボードジャパンが2024年度年間チャートを発表、10の注目ポイントとは(2024年12月6日付)をご参照ください。
<ビルボードジャパン 2025年度年間チャートにおける注目点>
- はじめに:2025年度におけるふたつのチャートポリシー変更
- ① Mrs. GREEN APPLE、ソングチャートでトップ10の半数を席巻
- ② Mrs. GREEN APPLE、トップアーティストチャートで2位以下を圧倒
- ③ 米津玄師「IRIS OUT」、わずか10週でソングチャート4位到達
- ④ HANA、トップアーティストチャート5位にランクイン
- ⑤ 「クスシキ」「怪獣」「Plazma」「革命道中」…アニメ曲が今年もヒット
- ⑥ アイドル/ダンスボーカルグループによるストリーミングヒット連発
- ⑦ 2025年度リリースのオリジナルアルバムは強くない状況
- ⑧ 「APT.」が大ヒット、一方でK-POPを含む洋楽は勢いが低下
- ⑨ 過去曲のリバイバルヒット、仕掛けることの重要性
- ⑩ STARTO ENTERTAINMENT、デジタルの強さとフィジカル優先姿勢との乖離
- おわりに
はじめに:2025年度におけるふたつのチャートポリシー変更
さて、2025年度には大規模なチャートポリシー(集計方法)変更がふたつ行われています。チャートを理解する上で、この変更を知ることは欠かせません。
ひとつは、第1四半期前半となる2024年最終週から、アルバムチャートにストリーミング指標が組み入れられたこと。これにより、多くの方に聴かれるアルバムが週間チャートで上位に進出、そして長く聴かれるようになることで年間チャートでも上位進出を果たすようになりました。米ビルボードアルバムチャートに近い形に成ったといえます。
もうひとつは下半期初週以降、ストリーミングにおいてリカレントルールが適用開始されたことです。
ソングチャートおよびアルバムチャートのストリーミング指標においてStreaming SongsチャートおよびStreaming Albumsチャート(後者は未公表)のデータを指標化する際、ソングチャートは総合100位以内に52週、アルバムチャートでは同26週ランクインした作品に対し、翌週以降減算処理を施します。ロングヒット曲の上位在籍が目立つことに対するこの措置に伴い、新たなヒット曲が可視化されやすくなった形です。
とりわけ後者の変更に伴い、上半期と下半期とではチャート動向が大きく異なっています。その状況を踏まえ、ビルボードジャパンに対し下半期チャートについての開示を求めています(2026年度開始を前に、ビルボードジャパンへの改善提案をまとめる (その2:情報発信に関して)(11月29日付)参照)。叶う可能性は高くないものの、まずはチャートポリシー変更について知ることが重要と考え、記した次第です。
① Mrs. GREEN APPLE、ソングチャートでトップ10の半数を席巻
Mrs. GREEN APPLEが「ライラック」で年間ソングチャートを制しています。元々は昨年リリースの作品ですが、通算7週の首位獲得のうち5週分が2025年度に入ってからとなり、とりわけ1月8日公開分(集計期間:2024年12月30日~2025年1月5日)以降3連覇を果たしたのが象徴的です。


Mrs. GREEN APPLEは昨年末の音楽番組に多数出演したのみならず、音楽番組以外のメディア露出も積極的。そのひとつが年始『さんま・玉緒のお年玉!あんたの夢をかなえたろか30周年SP』(TBS)出演であり、そこで披露した「ライラック」そして「ケセラセラ」(年間8位)が大きく伸びています。メディア活用の巧さは過去曲のフックアップや今後リリースする作品への期待値も高め、その勢いを現在まで続けているといえます。

最終的にMrs. GREEN APPLEは、トップ10のうち5曲(「ライラック」「ケセラセラ」のほか「ダーリン」(2位)、「クスシキ」(5位)および「ビターバカンス」(9位))がランクイン。そして50位まで拡げると17曲が登場し、3分の1以上を占めているのです。


(「クスシキ」のミュージックビデオ、およびCHART insightは後述。)
【ビルボード 2025年 年間総合ソング・チャート“Hot 100”】
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年12月4日
1位 Mrs. GREEN APPLE
2位 Mrs. GREEN APPLE
3位 ロゼ & ブルーノ・マーズ
4位 米津玄師
5位 Mrs. GREEN APPLE
6位 HANA
7位 サカナクション
8位 Mrs. GREEN APPLE
9位 Mrs. GREEN APPLE
10位 米津玄師 pic.twitter.com/d97feDHCsK
はじめにの項目でリカレントルール導入について紹介しましたが、その影響を最も大きく受けたのはMrs. GREEN APPLEでした。しかしながらその後もソングチャートにおいて「ライラック」が一度も総合30位未満に後退しなかったのは、多くの方が聴き続けていることの証明です。チャート変更により新陳代謝を促すことも重要ながら、それだけ多くの方の支持を集め続けているという現状はきちんと理解する必要があります。
② Mrs. GREEN APPLE、トップアーティストチャートで2位以下を圧倒
リカレントルールにより下半期の状況が大きく変わりながらも、Mrs. GREEN APPLEはトップアーティストチャートにおいて圧倒的な強さをみせています。2025年度52週のうち45週で首位となり、また年間トップアーティストチャートの指標構成ではフィジカルセールス(3位)を除く5指標を制覇。いわばほぼ完勝と呼べる状況なのです。


これは多くの曲がストリーミングで強く、年間ソングチャート100位以内に22曲が登場したことが大きく影響しています。
さらに、上半期途中からストリーミング指標が導入されたアルバムチャートでも年間100位以内に8作品がランクインし、特に過去作『ANTENNA』および『Attitude』が聴かれ続けたことやベストアルバム『10』のリリースも大きく影響しています(年間アルバムチャートでは2~4位に)。リカレントルールに伴い後退した作品も多い中でロングヒットが続き、結果的にMrs. GREEN APPLEは歌手別チャートで史上初の連覇を達成しています。



Mrs. GREEN APPLE『10』初登場時にはアルバムチャートにおける構成3指標、そしてトップアーティストチャートにおける構成6指標を完全制覇。ソングチャートでの占有率の高さも含め、Mrs. GREEN APPLEの勢いが証明された形です。
③ 米津玄師「IRIS OUT」、わずか10週でソングチャート4位到達
米津玄師「IRIS OUT」が年間ソングチャートで4位に。リリースからわずか10週でこの位置に到達したのは驚異的です。ビルボードジャパンソングチャートはストリーミングが大きく影響、且つ(そのストリーミングヒットに伴い)ヒット曲が長期滞在することが常であるため、尚の事です。

米津玄師「IRIS OUT」が主題歌となった映画「劇場版『チェンソーマン レゼ篇』」自体も、興行収入が現時点で92億円を突破する大ヒットに。その人気は「IRIS OUT」に波及し、10月1日公開分ソングチャートでは構成指標が8→6となった2023年度以降において週間最多ポイントを更新しています。この勢いは同じくアニメ主題歌であるYOASOBI「アイドル」、またCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」を彷彿とさせるものです。
先述したMrs. GREEN APPLE「ライラック」の動向(過去に例を見ないリリース翌年度の勢いの増幅)も素晴らしいながら、「アイドル」や「Bling-Bang-Bang-Born」のようなリリース間もないタイミングから著しい強さを発揮したのは今年度では米津玄師「IRIS OUT」が初といえます。無論リカレントルールの存在も年間チャート上位進出につながったとして、週間チャートでの独走はそのルールがなくとも成し得たはずです。
「IRIS OUT」のヒットは過去作にも波及し、結果的に米津玄師さんは年間トップアーティストチャートで3位に。上半期が4位だったことを踏まえれば、「IRIS OUT」の存在が如何に大きいかはこの点からも分かるでしょう。

(なおビルボードジャパンではトップアーティストチャートにおいて、客演や共演有の作品についてはその名義にてランクインする形を採っています。ゆえに「JANE DOE」については"米津玄師, 宇多田ヒカル”名義となり、この名義にて年間チャート90位に登場しています。仮に米ビルボード方式(共演作品を各歌手に加算する計算方法)を採っていたならば、米津玄師さんがより高い位置に就いていたかもしれません。)
④ HANA、トップアーティストチャート5位にランクイン
オーディション番組から登場したHANAが2025年度を代表する新人歌手であることは間違いないでしょう。「ROSE」が年間ソングチャート6位に登場、また「Blue Jeans」は第3四半期のリリースながら同13位にランクインを果たしています。


2025年1月に「Drop」でプレデビュー、4月に初のフィジカルシングル「ROSE」をリリースしたHANAは、年度内にはその「ROSE」(2億回再生突破)を含む4曲がストリーミング1億回再生を突破しています。なお下記ポストをみれば、Mrs. GREEN APPLEや米津玄師「IRIS OUT」の勢いもよく分かるでしょう。
2025年のヒットソングを振り返ろう🎶
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年11月26日
ストリーミング累計再生数1億回突破曲
アイナ・ジ・エンド
「革命道中 - On The Way」
幾田りら
「恋風」🆕
サカナクション
「怪獣」(2億回突破)
ちゃんみな
「SAD SONG」※デジタルリリース
back number
「ブルーアンバー」
HANA
「ROSE」(2億回突破)…
最終的にHANAは、年間トップアーティストチャートで5位に到達。先述したようにMrs. GREEN APPLEが制したこのチャートにおいて、back number、米津玄師さん、Vaundyさんに続き、2025年デビュー歌手では最高位となります。HANAはアルバム未リリースの状況下(リリース曲が少ない段階)でこの記録を成し遂げたことになるのです。

さらにはHANAを輩出したオーディションにてプロデューサーを務めたちゃんみなさんもヒット。2019年リリースのアルバム『Never Grow Up』にて初回限定盤に収録された「SAD SONG」(単曲ダウンロードは長らく不可の状況)が今年になって単曲でデジタルリリース、且つストリーミング配信を開始。オーディションにて最終選考に残ったメンバーと共に披露したことも相まって、年間ソングチャートでは44位に登場しています。

ちゃんみなさんはトップアーティストチャートにて昨年度の48位から10位に飛躍。HANA共々『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下"紅白"と表記)へ出場を果たしたのは納得といえるでしょう。

⑤ 「クスシキ」「怪獣」「Plazma」「革命道中」…アニメ曲が今年もヒット
年間ソングチャートは2024年度以前のリリース曲が強いながら、2025年度内リリース曲も強さを発揮。特にアニメ関連曲のヒットが目立っています。
「ライラック」が年間首位に輝いたMrs. GREEN APPLEによる「クスシキ」(年間5位)はTVアニメ『薬屋のひとりごと』オープニングテーマ、サカナクション「怪獣」(同7位)はテレビアニメ『チ。―地球の運動について―』オープニングテーマに。また映画「劇場版『チェンソーマン レゼ篇』」主題歌の「IRIS OUT」が年間4位に入った米津玄師さんによる「Plazma」(同10位)は『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』主題歌となっています。



年間トップ10には入らなかったものの、米津玄師「BOW AND ARROW」(年間23位 テレビアニメ『メダリスト』オープニング主題歌)やアイナ・ジ・エンド「革命道中」(同35位 テレビアニメ『ダンダダン』オープニングテーマ』)も50位以内に登場。さらに映画「劇場版『チェンソーマン レゼ篇』」からは、エンディングテーマとなる米津玄師, 宇多田ヒカル「JANE DOE」がわずか9週の在籍にて年間43位にランクインしています。



アニメタイアップ曲はストリーミングの強さもさることながら、いずれの曲もダウンロード指標が年間20位以内にランクインしているのが特徴。歌手のみならずアニメ作品のファンが、作品の世界観を的確に表現している曲に対し所有行動にて敬意を示す姿勢が見て取れます。なお米津玄師さんが今年リリースした6曲(リミックスを除く一方でトリビュート盤参加曲を含む)のうち、4曲がアニメ関連曲となります。
⑥ アイドル/ダンスボーカルグループによるストリーミングヒット連発
アイドルやダンスボーカルグループにおいてはフィジカルセールスが強い一方でストリーミングは強くなく、ヒットが瞬発的に成るということが大半でした。今もその動向が主流とはいえますが、しかしながらこのジャンルにおいてストリーミングヒットが目立ってきたという印象です。先述したHANAもさることながら、2025年度はKAWAII LAB.所属歌手によるヒットが象徴的といえます。



KAWAII LAB.所属歌手作品ではCUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」が年間12位、CANDY TUNE「倍倍FIGHT!」が49位、そしてFRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」が同54位にランクイン。いずれもショート動画等でのバズがストリーミングヒットにつながり、最終的にFRUITS ZIPPERおよびCANDY TUNEは紅白初出場を射止めています(CUTIE STREETの紅白未出場も含め出場の背景を下記にて分析しています)。
さらに、FRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」に続き年間ソングチャート55位に登場した=LOVE「とくべチュ、して」も、ショート動画からストリーミングヒットに波及。その流れは「ラブソングに襲われる」にも踏襲されています。

ストリーミングヒットに伴う年間チャート上位進出は女性アイドルやダンスボーカルグループにて目立つ一方、男性アイドルやダンスボーカルグループにおいてはロングヒットするDa-iCE「I wonder」(37位)もあれど、2025年度リリース曲の上位進出は多くはない印象です。その中で、フィジカルシングル表題曲ではないBE:FIRST「夢中」が28位にランクイン。男性アイドル/ダンスボーカルグループ最大のヒットとなっています。

年間ソングチャートではさらに、Number_i「GOD_i」が33位にランクイン。またSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品も複数がソングチャート100位以内に登場しています(この点は後述)。その中にあって年間トップアーティストチャートではNumber_iが2024年度以降12→12位、そしてBE:FIRSTが2021年度以降55→22→26→29→16位と推移していることは注目に値します。



女性歌手に話を戻すと、坂道グループはLINE MUSIC再生キャンペーンにてストリーミング指標が加点されながらもサブスクサービス全体でヒットに至らず、年間チャートにおける差につながっています。HANAのヒット、さらに年度最終週におけるBuono!「初恋サイダー」の再登場(ストリーミング指標が貢献)等も踏まえれば、アイドルやダンスボーカルグループがデジタルに明るくなることは必須です(未解禁歌手の解禁も含む)。
⑦ 2025年度リリースのオリジナルアルバムは強くない状況
はじめにの項目でも触れたように、ビルボードジャパンは昨年最終週にアルバムチャートへのストリーミング指標組入を開始。これにより、多くの方に聴かれ且つ長く愛される作品が上半期そして年間チャートで上位に登場するようになりました(その上位滞在が続くこともビルボードジャパンによるリカレントルール導入の一因といえるでしょう)。
その結果、年間アルバムチャート10位以内における年度内リリース作品はSnow Man『THE BEST 2020 - 2025』(1位)、Mrs. GREEN APPLE『10』(4位)およびtimelesz『Hello! We're timelesz』(8位)のみ。これらはベスト盤もしくはコンピレーション作ゆえ、年度内リリースのオリジナルアルバムは藤井風『Prema』の12位が最高となります。なお年間100位以内で集計期間前にリリースされた作品の登場は8→72作品に急増しています。
(なおSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品については10番目の項目にて採り上げます。)

トップ50に範囲を拡げても2025年度にリリースされたオリジナルアルバムの登場は多くはないものの、ベテランのサザンオールスターズによる『THANK YOU SO MUCH』(30位)、海外歌手とのコラボレーションも盛り込んだ星野源『Gen』(35位)、Netflixドラマに登場するバンド名義でのTENBLANK『Glass Heart』(44位)等がランクイン。いずれもストリーミング指標が比較的高いことが特徴です。



アルバムチャートにストリーミング指標が加わりながらも年度内リリースのオリジナルアルバムはヒットしづらい状況ですが、2026年度の年間チャートはより好くなるはずです。リカレントルール採用前と後のチャートが混在するという現象がなくなること等がその理由であり、ビルボードジャパンも記事にて『音楽の聴き方に合わせて進化し続けることによって、社会的浸透度を表すチャートを目指していく』と表明しています。
2024年度の年間アルバムチャートは所有2指標のみで構成されており、男性アイドルやダンスボーカルグループの作品が上位をほぼ占めていました。ソングチャートではストリーミングの重要性が広く音楽ファンにも浸透している印象ゆえ、アルバムチャートにおいてもストリーミング指標が重要だと多くの方が認識するようになるならば、チャートポリシー変更後のチャートに理解そして納得をしていただけるはずです。
⑧ 「APT.」が大ヒット、一方でK-POPを含む洋楽は勢いが低下
年間ソングチャートでは、ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」が3位に登場しています。

「APT.」はBLACKPINKのロゼによるソロアルバムに収められながらも、ブルーノ・マーズが参加しているゆえかビルボードジャパンではK-POPではない洋楽として括られ、K-POP以外の洋楽のみで構成されるHot Overseasチャートにも登場しています。この曲を洋楽とみなすならば、年間ソングチャート5位以内に洋楽が入ったのはエド・シーラン「Shape Of You」(2017年度 2位)以来、8年ぶりとなります。
ただ、K-POPを含む洋楽の勢い自体は弱まっています。2025年度年間ソングチャート50位以内の登場は「APT.」、aespa「Whiplash」(30位)の2曲のみ(前年度より1曲減少)。年間アルバムチャートではストリーミング指標導入に伴い所有に強いK-POP男性グループの上位進出が減ったほか、(K-POPを除く)洋楽のランクインはエド・シーラン『÷ (Divide)』(66位)、サブリナ・カーペンター『Short N' Sweet』(89位)の2作品のみです。

そのアルバムチャートでは、『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ (原題:Kpop Demon Hunters)』サウンドトラックが年間22位に入り、HUNTR/X(ハントリックス)(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」も年間ソングチャートで81位にランクイン。この曲はHot Overseasチャートにも登場し、洋楽と位置付けられています。グラミー賞で主要部門にノミネートされた「Golden」の、2026年度の動向に注目です。


⑨ 過去曲のリバイバルヒット、仕掛けることの重要性
ビルボードジャパンソングチャートの構成6指標のうち、上位に過去曲が進出しやすいのがカラオケ、次いでストリーミングとなります。すなわち、カラオケでヒットしている曲が何かしらの注目を集めることでストリーミングでも人気となり、週間そして年間ソングチャートに登場するほどのヒット曲に成る可能性を有しているといえるでしょう。その注目を高めるべく施策を投入し、ヒット規模を増幅させた曲が存在します。

その最たる例が、2007年にリリースされたORANGE RANGE「イケナイ太陽」。懐かしの流行を数多く配置した新録のミュージックビデオも話題となり、年間ソングチャートでは79位にランクイン、またORANGE RANGE自身は年間トップアーティストで61位に登場し、紅白出場も果たしています。ORANGE RANGEはソニーミュージックに移籍(復帰)し、そのことが施策実施に大きく寄与しただろうことは以前紹介したとおりです。
ソニーミュージックにおける施策の巧さは直近におけるポルノグラフィティ「アゲハ蝶」(2001年リリース)のリバイバルヒット(ドラマ主題歌起用に伴う上昇)からもみえてきます。「サウダージ」(2000)が長らくカラオケ人気を続ける中での別曲のヒットにより、来年にかけてのポルノグラフィティの動向にも注目です。事実、2025年度年間トップアーティストチャートではポルノグラフィティが91位にランクインしています。
⑩ STARTO ENTERTAINMENT、デジタルの強さとフィジカル優先姿勢との乖離
STARTO ENTERTAINMENT所属歌手によるデジタルアーカイブ化が少しずつ進み、またデジタルオンリーでリリースされる曲(後にオリジナルアルバムにてフィジカル化)も増えています。その中で、Snow Man「カリスマックス」が年間ソングチャートで80位、またtimelesz8人体制下初の楽曲「Rock this Party」が同92位に登場しています。


(timelesz「Rock this Party」のミュージックビデオはショートバージョンとなります。)
さらにSnow Manは、今年はじめにリリースしたベストアルバム『THE BEST 2020 - 2025』が年間アルバムチャートを制し、timeleszが「Rock this Party」と同時にリリースしたデジタルコンピレーションアルバム『Hello! We're timelesz』も年間8位に登場しています。後者においてはオーディション(番組)効果も大きく反映された形です。


一方で、CHART insightにおける総合順位のブランクからも分かるように、Snow Man『THE BEST 2020 - 2025』はデジタル後発の施策を採っています。これは「カリスマックス」を収めたSnow Man『音故知新』(フィジカルセールスのみで年間46位に登場)、またtimelesz『FAM』でも同様です。仮にデジタルリリースまでにフィジカルを用意していれば、いずれの作品もより高い位置に到達したと考えるのは自然なことです。
STARTO ENTERTAINMENT所属歌手の大半がデジタル解禁に踏み出しながら、アーカイブの完全デジタル化は多くの歌手で行われていません。また解禁した後もフィジカル先行/デジタル後発を採る歌手が目立ちます。フィジカル優先、デジタルへの不信感、"勝てるところでだけ勝てればいい"という姿勢(オリコン重視)等が未だ根強く有るのかもしれませんが、果たしてデジタル人気がフィジカル売上を大きく毀損するでしょうか。
さてSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品の中で、2025年度年間ソングチャートで最高位を記録したのはNEWS「チャンカパーナ」(78位)でした。

NEWS「チャンカパーナ」については前項で挙げたリバイバルヒットの形でもありますが、デジタルを解禁したことでNEWSのコアファン以外にも(あらためて)見つかったといっていいでしょう。サブスク解禁(ストリーミングの徹底)はコアファン以外にも気付いてもらう機会を与え、またメディアで採り上げられた際の機会損失を防ぐことにもつながります。
過去曲の再上昇という点において、「チャンカパーナ」はSTARTO ENTERTAINMENTにとって大きな経験となったはずです。ならば、現在も活動する歌手のみならずかつて在籍していた方の作品もデジタルアーカイブ化することは必須でしょう。
おわりに
最終項にて問題提起を記しましたが、加えて”ストリーミングの中身を深く分析する必要性”について提示します。
たとえばLINE MUSIC再生キャンペーン採用により開催期間内にヒットしながら終了直後に急落、且つ同サービスのみで強い曲は今も目立ちます。またSpotifyではリスニングパーティー開催等、ファンダムによる(自発的な)聴取徹底に伴うロングヒットが増えている印象です。しかし他のサブスクサービスや他指標と乖離する曲が目立ち、(プレゼント等はないながらも)永続的なキャンペーンを行っているかのような推移を辿っています。
ビルボードジャパン年間ソングチャートで100位以内に登場した曲のうち、Spotifyでの再生比率が特に高い例としてはJIMIN「Who」やNumber_i「GOD_i」が挙げられます。「Who」は年間ソングチャートで73位に登場するものの、他指標が伴っていません。

Number_iにおいては、アルバム『No.Ⅱ』リリース時にて収録曲がSpotify主体で大挙上昇し、ビルボードジャパン年間アルバムチャートでは24位に登場するヒットに。一方で、社会的にヒットする作品は過去曲等関連作品もフックアップする傾向にありながら、Number_iにおいては『No.Ⅱ』リリースのタイミングで前作『No.Ⅰ』が後退。再生先が切り替わったと呼べる状況から、ライト層の支持数に対し疑問を抱きかねません。


(Number_i『No.Ⅱ』は10月1日公開分ビルボードジャパンアルバムチャートで首位に初登場。一方で『No.Ⅰ』は同日公開分にて、前週の34位から100位未満に後退しています。なお同作品は9月24日公開分の段階で、総合100位以内在籍が52週目となっていました。)
Spotifyの特徴、そしてSpotify主体に強い作品については下記エントリーにて採り上げています。このエントリーで紹介しているストリーミング表は、主要サブスクサービス毎の順位比較、また真の社会的ヒット作品の動向を知るための手がかりになるはずです。
この項で採り上げた作品がヒットしていないというわけでは決してありませんが、このような傾向が目立つならばいずれビルボードジャパンがSpotifyやLINE MUSIC全体のウエイトを下げる(減算処理を施す)可能性もゼロではないでしょう。それを想起できるならば、歌手側そしてファンダムにおいてもライト層拡大により力を入れる必要があると考え、動くことができるはずです。
最後に。このブログでは先月、ビルボードジャパンに対する改善提案を記しました。
2026年度初週のチャートを見る限り、チャートポリシーや情報発信に関する変更は見当たらず、上記提案が叶ったとはいえません。それでも、進化を続けるビルボードジャパン各種チャートがより好く成ること、そしてそのチャートがより広く伝わることを願い、今後も指摘を続けていきます。
(なお日本の音楽業界、またメディアに対する提案については後日掲載予定です。)
2026年度のビルボードジャパン各種チャートに注目しましょう。