ビルボードジャパンは12月5日金曜に2025年度年間チャートを発表します。今回はそれに伴い、ビルボードジャパンソングチャートに大きな影響を与えるストリーミング指標のうち再生回数全体のおよそ2割を占めるSpotifyの動向を紹介します。
まずは日本のSpotifyにおける特性について紹介します。
日本の場合、再生回数は平日では金曜が最も少ない一方で土日祝日には上昇する傾向にあります。これは金曜が飲み会等の影響で聴取機会が減る一方、土日祝日は行楽等に伴い増えるためと推測されます。また、帰省等の大きな移動が発生する際は再生回数が大きく減る傾向もみられます。
詳しくは下記エントリーをご参照ください。”50位の壁”と形容するSpotifyならではの特性についても紹介しています。
以下のグラフは2024年11月25日付~2025年11月23日付(ビルボードジャパンにおける2025年度主要チャートの集計期間と同期間)における1位、50位および200位のデイリー再生回数推移をまとめています。なおSpotifyではデイリー200位までの再生回数が可視化されています。

<日本のSpotifyデイリーチャート 首位獲得曲一覧>
(集計期間:2024年11月25日付~2025年11月23日付)
・ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」
(2024年11月25日付~12月23日付)
・マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」
(2024年12月24日付)
・back number「クリスマスソング」
(2024年12月25日付)
(2024年12月26日付~2025年1月28日付、1月30日付、2月1日付~2月19日付、3月2日付、3月7日付~3月9日付、3月11日付~4月5日付、5月4日付、6月28日付~6月29日付、7月5日付~7月8日付、7月12日付~7月13日付)
・Mrs. GREEN APPLE「ダーリン」
(2025年1月29日付、1月31日付)
・サカナクション「怪獣」
(2025年2月20日付~3月1日付、3月3日付~3月6日付、3月10日付)
・Mrs. GREEN APPLE「クスシキ」
(2025年4月6日付~5月1日付、5月3日付、5月5日付~5月20日付、6月7日付~6月8日付)
・Mrs. GREEN APPLE「天国」
(2025年5月2日付)
・JIN「Don't Say You Love Me」
(2025年5月21日付~6月6日付、6月9日付~6月11日付、6月16日付~6月27日付、6月30日付~7月4日付、7月9日付~7月11日付、7月14日付、8月14日付~9月14日付)
・Mrs. GREEN APPLE「breakfast」
(2025年6月12日付~6月15日付)
・HANA「Blue Jeans」
(2025年7月15日付~8月13日付)
・米津玄師「IRIS OUT」
(2025年9月15日付~11月23日付)
期間内の首位獲得曲は12作品。そのうち米津玄師「IRIS OUT」は9月23日付で日本のSpotifyデイリー最高再生回数となる1,066,620回を記録しています。同曲は述べ5日間に渡りデイリー100万回再生を達成し、期間内では70日間連続でデイリーチャートを制しています(現在も首位継続中)。
またMrs. GREEN APPLE「ライラック」は述べ93日間に渡り首位に。Mrs. GREEN APPLEにおいては2024年末の地上波長時間音楽番組への多数出演、また年明け放送のバラエティ番組をはじめとするメディア露出の多さもあいまってヒット曲が相次いで誕生。さらに、その新たなヒット曲が「ライラック」をはじめとする過去曲のフックアップにもつながっています。
他方、米津玄師「IRIS OUT」を上回る通算73日間首位を記録したJIN「Don't Say You Love Me」については、Spotifyに特化したヒットと捉えて差し支えないでしょう。

上記は毎週土曜に掲載しているCHART insightからヒットを読む カテゴリーのエントリー、その最新回(11月29日付)で掲載したストリーミング表ですが、JIN「Don't Say You Love Me」はリリースして間もない頃から現在に至るまで、Spotifyと他のサブスクサービスとで大きな乖離が発生し続けています。
JIN「Don't Say You Love Me」は日本における11月30日付Spotifyデイリーチャートまでに7019万回の再生回数を記録しながら、ビルボードジャパン側は本日までに同曲のストリーミング1億回再生突破をアナウンスしていません。Number_i「INZM」がストリーミング1億回再生突破…その内容、そして考えるべき3点について(9月3日付)で紹介したJIN「Who」やNumber_iの各曲のような偏りが、この曲でもみられます。
これらの曲を輩出した歌手のファンダムは音楽チャートに対する熱量が高く、チャートについても深く学んでいるという印象です。さらに歌手側による公式、もしくはファンダムによる自発的なリスニングパーティーがStationheadや、最近ではSpotify自体でも開催されること、またSpotifyがデイリー200位までの再生回数を可視化していることでファンダムの熱量が維持され、高い再生回数をキープする曲が増えている印象です。
日本のSpotifyデイリーチャートでは近いうちに、米津玄師「IRIS OUT」をJIN「Don't Say You Love Me」が上回るかもしれませんが、その事実を知った方のうち後者の知名度が勝る、社会的にヒットしていると捉える方が後者のファンダム以外でどれだけいらっしゃるでしょう。大事なことはサブスクサービスの偏りない形でのヒットであり、そのような偏りなくヒットした曲のほうが世間に親しまれていることは自明でしょう。
<日本のSpotify動向から真の社会的ヒット曲を見極める方法>
・ ① ビルボードジャパンでのストリーミング1億回再生突破時、Spotifyの割合は著しく高くないか
・ ② Spotifyと他のサブスクサービスとで週間チャートの順位は大きく乖離していないか
・ ③ Spotifyデイリーチャートにおいて他の曲よりも再生回数の増減が大きくないか
ファンダムの熱量が維持され、高い再生回数をキープする曲は独自の特性を有しています。それを見極める方法は以前記した通りですが、このような曲が増えていけばいずれビルボードジャパンがSpotifyの再生回数について(他のサブスクサービスよりも)ウエイトを下げる可能性もあり得るでしょう。そのことも視野に入れれば尚の事、ファンダムがライト層(将来のコアファン候補)をみつけるべく動くことがより好いと考えます。
さて、強力なストリーミングヒットの存在は全体の再生回数増加にも波及することが、2025年度の動向からもみえてきます。
【Spotifyデイリーチャート 200位再生回数推移】
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ『imaoto on the Radio』) (@Kei_radio) 2025年10月14日
2021年11月29日付~2025年10月13日付日本のSpotifyデイリーチャート、200位の再生回数を定点観測。
10月13日付における再生回数(59,147回)は9月23日付(58,730回)を上回り、200位における最高再生回数を更新。初めて5万9千回を突破しています。 pic.twitter.com/n4l8iMfT6f
上記については、米津玄師「IRIS OUT」および米津玄師, 宇多田ヒカル「JANE DOE」がヒットを続ける中、米津玄師さんが新曲「1991」をリリースしたことが大きく影響しています。
日本の11月19日付Spotifyデイリーチャート、1~50位の再生回数は合計10,922,754回に。#米津玄師「IRIS OUT」がデイリーチャートを制して以降の最高記録は10月13日付における10,657,052回であり、『Dear Jubilee RADWIMPS TRIBUTE-』のリリース日に上回った形です。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ『imaoto on the Radio』) (@Kei_radio) 2025年11月20日
そしてこちらはRADWIMPSのトリビュートアルバム『Dear Jubilee -RADWIMPS TRIBUTE-』の勢いが反映された形です。「1991」もトリビュートアルバムも、サブスクサービスの区別なくヒットしています(後者については『Dear Jubilee -RADWIMPS TRIBUTE-』がビルボードジャパンアルバムチャートを制覇…その強さの源を探る(11月28日付)にて紹介しています)。
SpotifyについてはStationheadの影響力拡大、また極端な動きが増えてきていることで他のサブスクサービス(特に施策が影響しにくいApple Music)との乖離が際立ちつつあると感じるものの、そのような曲を除けば再生回数全体の推移は他のサービスと大きく変わらないだろうと考えるに、Spotifyの動向を押さえることは音楽チャート全体を知る意味で未だ有効と捉えています。それがXにて日々Spotifyの動向を発信する理由です。
ただし、他のサブスクサービスと比較すること、そして様々なサブスクサービスのデータをまとめたビルボードジャパンのStreaming Songsチャート、そして総合ソングチャートをチェックすることがより大切です。いずれのサブスクサービスにも独自の特性があるのですが、その特性が際立つSpotifyだけでヒットを断言するのは危ういというのが厳しくも私見。その点は先日もこのような形で述べたばかりです。
#今年イチバン聴いた歌 は昨年放送時に対象データをApple MusicからSpotifyに変更。今年もSpotifyを用いるとのことですが、Apple Musicよりデータに偏りがあるゆえ、”なぜ(複合データに基づく)ビルボードジャパンのStreaming Songsチャートを用いないのか”という疑問は拭えません。 https://t.co/ykXSF83vu9
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ『imaoto on the Radio』) (@Kei_radio) 2025年11月29日
#今年イチバン聴いた歌 に関する疑問は、昨年の放送後に #イマオト にて記しています。その際SpotifyとApple Music、LINE MUSICの年間チャートを比較した上で、このように結論づけています。https://t.co/cZba96CS6H pic.twitter.com/bj4eLMfvQb
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ『imaoto on the Radio』) (@Kei_radio) 2025年11月29日
チャートを見る際は冷静さと客観性を持つことを勧めます。そしておかしいと思えば、同じく冷静さと客観性をもって指摘することを願います。下記エントリーで紹介しているストリーミング表等が、見極めの参考になるならば幸いです。