以下の内容はhttps://www.imaoto.com/entry/2025/11/24/070000より取得しました。


2026年度開始を前に、ビルボードジャパンへの改善提案をまとめる (その1:チャートポリシー変更に関して)

ビルボードジャパンは例年、11月下旬が各種チャートの集計期間初日となります(仮に2025年度が52週だった場合は本日が2026年度の集計期間初日に該当します)。今回は2025年度年間チャート、そして2026年度初週チャートの発表を前に、ビルボードジャパンの各種チャートに対する改善提案を記します。

今回の提案は2025年度集計期間初日に行った内容に準じます(2025年度の集計開始日に、ビルボードジャパンへの改善提案をまとめる(2024年11月25日付)参照)。参照)。またこの改善提案は、毎週土曜に掲載しているCHART insightからヒットを読むカテゴリーのエントリーなどで既に述べている内容等をまとめたものです。

ビルボードジャパンに対する改善提案については、チャートポリシー(集計方法)変更に関するものを本日付にて、また情報発信に関するものを今週中に紹介する予定です。

 

ちなみに、一個人がこのような提案を記すこと自体に違和感を抱く方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、音楽チャートがより社会的ヒットを示す鑑になることを願ってのものであり、提案記載時には非難をメインとした言葉遣いを用いないよう心がけています。その点をご理解いただけれるならば幸いです。

なお1年前の改善提案にて、アルバムチャートへのストリーミング指標導入について記しています。この提案がどれだけ影響したかは分かりかねますが、ビルボードジャパンは昨年最終週にこの変更を実施しています。今後発表される年間チャートをみれば、このチャートポリシー変更がプラスに作用したと考えていいはずです。

 

 

ビルボードジャパンへの改善提案 (チャートポリシー変更に関して)>

 

 

(1) ソングチャート 各指標の変更

① フィジカルセールス指標のウエイト減少、および係数処理適用方法の見直し

ビルボードジャパンソングチャートにおけるヒットの理想形はストリーミングや動画再生といった接触指標群が高水準で安定し、総合チャートでロングヒットに至ることだと捉えています。一方で所有指標は、瞬間的には上位進出に寄与するものの持続しないのが特徴です。

2025年度においても所有指標、その中でフィジカルセールスがストリーミングと乖離する傾向は変わらなかったといえます。そのような曲が瞬間的に上位進出を果たした場合、音楽チャートに精通していない方ほどオリコンとの差異に疑問を覚えるかもしれません。フィジカルセールス指標自体のロングヒット曲との乖離を踏まえれば、ウエイト自体の減少はやはり検討すべきでしょう。

 

(なおフィジカルセールスでは一定枚数を超える週間セールスを記録した曲について、ビルボードジャパンは指標化時に、その一定枚数超過分のセールスに対し減算処理を施しています。この減算処理を採用した2017年以降、ビルボードジャパンソングチャートの"社会的ヒット曲の鑑"化は高まったというのが私見です。)

 

一方で、リリースから時間が経過した曲が施策によりフィジカルセールス再上昇、総合ソングチャートでも上位進出するケースが目立ちます。ただ、そのような曲のほとんどは他指標が伴わず、翌週急落する傾向にあります。これは先述した"一定枚数超過分の週間セールスに減算処理"というチャートポリシーが、あくまで週間セールスに課せられる(累計のそれには課せられない)ためです。

ゆえに、中長期でみると累計売上枚数と指標化後の順位が大きく異なります。そのアンバランスさも解消すべく、累計セールスに対し減算処理を適用するよう提案します。一定以上の枚数を売り上げた曲がフィジカルセールス施策のみで再浮上するという現象を抑えることができ、単週のチャートから社会的ヒットがみえやすくなるでしょう。

 

② ストリーミング指標のカウント対象範囲拡大、およびプラットフォーム毎の係数処理適用

ビルボードジャパンは2025年度下半期初週からリカレントルールを実施。ロングヒット曲において、Streaming Songsチャートからストリーミング指標へ計算する際に減算処理を行うというのがその内容です。昨年のこの時期も係数処理適用を提案していましたが、こちらが求めた内容とは異なりながらもリカレントルール自体は好いと感じています。

そのビルボードジャパンはソングチャートにおいて、構成指標はいずれも300位までを加点対象としています。しかしストリーミング市場の拡大を踏まえれば、ストリーミング指標だけでも加算対象範囲を拡げるほうがより好いと考えます。

 

音楽チャート分析者として以前から願っていた係数処理適用は、サブスクリプションサービス毎への対応というものです。特に、LINE MUSICに代表される再生キャンペーンを適用した曲全体への係数処理適用はやはり必要でしょう。実際この企画を採用した曲のほとんどが企画終了直後に急落し、ロングヒットする曲(すなわちサブスクサービスの区別なくヒットが継続する作品)の動きと大きく逸脱します。

現状ではStreaming Songsチャートで再生キャンペーン適用曲が首位を獲得した場合にのみ、指標化の際に他のサブスクサービスとの乖離等を踏まえて係数処理が適用されます。しかし最近は、施策を施した曲でStreaming Songsチャートを制する作品はありません。逆に言えば2位以下の曲は係数処理が適用されないため、総合チャートでの一時的な上位進出が可能となっています。

ロングヒットの要となるストリーミングは歌手のファンではないが曲が気になるというライト層の人気を如実に示しますが、再生キャンペーンはコアファンの熱量が強く反映されるために所有指標のような急上昇と(企画終了直後の)急降下を招きます。この状況はCHART insightからヒットを読むカテゴリーのエントリーで紹介する曲にて目立ち、単週のチャートで真の社会的ヒット曲が可視化されにくい一因となっています。

 

またStationheadを用いたリスニングパーティについても注視が必要でしょう。このリスニングパーティは歌手側が企画する、またファンダム内で自主的に行われることも少なくありません。その結果、特にSpotifyにて曜日特性をなぞらずまた他の曲と大きく異なる動きを示す作品がみられます。近年ではSpotify自身もリスニングパーティを開催する傾向にあり、尚の事です。

(StationheadはApple Musicも対象ながら、デイリー100位ではなく200位まで、そしてその再生回数が可視化されるSpotifyに熱量がより注がれていると捉えています。)

施策そのものはすべての歌手が実施しているものの、それが際立った場合にはチャートポリシーの見直しが必要と考えます。ビルボードジャパンはStationhead、そしてそれが反映されるSpotifyの動向を常に追い、浮上曲が他サービスと乖離傾向にあるならばSpotifyの再生回数に係数処理を適用すべきか議論することが必要と考えます。最近ではSpotifyでヒットが継続しながら他サービスと乖離する曲が目立つゆえ、尚の事です。

 

③ ラジオ指標のカウント対象範囲拡大、もしくは指標廃止の検討

ラジオ指標はプランテックによる全国31のFMならびにAM局のOAランキングを基に、各放送局の聴取可能人口等を加味して算出されます。一方でこの指標は放送局のパワープレイや番組ゲスト/コメント出演等の影響度が高く、総合チャートとの乖離が大きくなっています。元来ラジオは他指標以上にロングヒットが難しいのが日本の特徴ですが、その中でもパワープレイ選出曲等はその終了後の急落が目立つ状況です。

31局はいずれも都心部にある放送局であり、ともすれば地方局を加味することでOAランキングならびにそれに基づくラジオ指標のチャートは少しでも総合チャートに近い形になるかもしれません。それも踏まえ、たとえばradikoの対象局すべてを網羅することを視野に入れてもいいのではと考えます。

2024年度の集計期間開始日に、ビルボードジャパンへの改善提案をまとめる(2023年11月27日付)より

一昨年のこの時期に上記内容を記しましたが、昨年以降はラジオ指標について廃止を視野に入れる必要があるのではという考えを抱き続けています。

この指標はフィジカルセールスに次いで総合順位との乖離が大きいこともさることながら、主に男性アイドル/ダンスボーカルグループにおいて施策に伴う上昇とその後の急落が目立つことも、廃止の検討を提案する理由です。後者の動きは、ラジオが所有指標に近いと思わせるに十分かもしれません。

 

ラジオ指標は廃止も視野にと考えるもうひとつの理由は、ラジオ業界が旧態依然のままだということです。

聴取率調査への疑問は以前から記していましたが、未だその調査週は豪華ゲストやプレゼント企画等ドーピングと呼べる手法が当たり前に行われ、また結果発表の仕方にも違和感を抱いています。上記ポストは1年前のものですが、直近の調査でもほぼ変わっていませんでした。

 

ラジオ指標の基となるRadio Songsチャートの掲載がなくなって久しく、ビルボードジャパンソングチャートにおけるラジオ指標の影響力は既に弱くなっていると感じるに十分です。無論ラジオという特殊性を考えれば加算対象からの排除が難しいのは承知で、しかし現行では一度排除について議論の場を設ける必要があるのではと感じます。

 

④ 動画再生指標のウエイト上昇、およびショート動画の組入検討

この点については各メディアのトレンドランキングとヒット曲との乖離が小さくないことを踏まえ、提案しています。特に”歌ってみた”や”踊ってみた”に代表されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)やTikTokでの人気曲とビルボードジャパンソングチャートとで差が生じることを、UGC人気を示すTop User Generated SongsチャートやTikTokチャート(後者は現在オリコンにて展開)から実感していることが、ウエイト上昇提案の理由です。

短尺動画については現時点でもソングチャートの構成指標に含まれていません。おそらくは短尺動画では曲を聴いたことにならないというのが判断理由と思われますが、たとえばSpotifyでは30秒再生すれば1回再生にカウントされることもあり、現行の判断理由は検討が必要だというのが私見です。

また今年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)にてM!LKが初出場を果たしますが、上半期の流行を象徴する彼らの「イイじゃん」はビルボードジャパンソングチャートにて週間最高45位、100位以内エントリー4週となっています。流行とチャートの乖離を狭めるには(上記リンク先にてその流行が最も大きく反映されていることが解る)動画再生指標について、ウエイト上昇およびショート動画組入をあらためて検討すべきと考えます。

 

 

(2) アルバムチャートにおけるストリーミング指標の計算方法見直し、およびStreaming Albumsチャートの開示

ビルボードジャパンは2024年最終週、総合アルバムチャートへのストリーミング指標組み入れを開始しました。それにより2025年度上半期のアルバムチャートは聴かれ続ける作品が上位に進出しましたが、下半期初週には以前から聴かれ続ける作品に対し指標化時に減算処理を施すというチャートポリシー変更を、ソングチャート同様に実施しています。

個人的にはリカレントルール導入自体を好いと考える一方、係数処理適用前のStreaming Albumsチャートが公開されないために”実際聴かれている作品のチャート”がみえないことを懸念しています。まずはその開示が必要であり、加えてアルバム収録曲数に呼応した計算方法を採る必要があるのではとも考えます。

ダウンロード/ストリーミングについて

(中略)

③Hot Albumsのストリーミング数は、どのように合算していますか?

 各DSPから報告される収録アルバム情報を元に、どのアルバムに収録された楽曲が再生されたのかを特定・集計しています。なお、アルバムによって収録曲数が異なりますが、弊社による検証の結果、チャートに係数を乗じることによって、大きな影響はないことが判明しました。それにより、該当アルバムに収録された曲のストリーミング数を合算して係数を乗じ、各ポイントを算出しています。

 

ストリーミング指標化時の計算方法は、収録曲数の区別なく一律であることが上記引用部分から読み取れます。一方で、ストリーミングのアルバム換算分(SEA)が同じように収録曲数の区別なく算出され、そのSEAが年間チャートに大きく影響する米ビルボードアルバムチャートでは、30曲以上を収録したモーガン・ウォーレンによるアルバムの強さが続いています。曲数の大小は本当に大きく影響しないのか、検討は必要と考えます。

 

 

(3) 日本のチャート集計方法のグローバル化(リミックスの合算、集計期間の金曜開始等)

この点についてはまず、米ビルボードが2020年秋に新設したグローバルチャート(Global 200、およびGlobal 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.)について紹介した下記エントリーをご参照ください。

またビルボードジャパンは2023年9月にGlobal Japan Songs Excl. Japan、およびJapan Songs (国/地域別チャート)という二種類のチャートを新設しています(後者は現時点で13ヶ国が対象)。計算方法はいずれも米ビルボードのグローバルチャートに準じ、たとえばGlobal Japan Songs Excl. JapanはGlobal 200から日本市場分を除いた上で日本の楽曲を抽出したものとなっています。詳しくは下記エントリーにて解説しています。

この前提の下で、”リミックスの合算や集計期間の金曜開始等、海外に倣ったチャートポリシーへの変更”を今一度提案します。この点は既にGlobal Japan Songs Excl. Japan紹介時にて提案を実施、また以前TOKIONへ寄稿したコラムでも詳しく記しています。

 

デジタルリリースは海外での発信とほぼイコールであり、米ビルボードによるグローバルチャートは日本市場でのヒットもチャートに反映されます。YOASOBI「アイドル」は英語版をグローバルチャートの集計期間初日である金曜にリリースしたことも相まって、日本の楽曲として初めて(且つ現在でも唯一)Global Excl. U.S.を制していますが、金曜リリースはグローバルチャートを理解し、重視したゆえの施策といえます。

「アイドル」のGlobal Excl. U.S.制覇においては海外の支持もさることながら、日本市場での人気がやはり大きいといえます。ビルボードジャパンがGlobal Japan Songs Excl. Japanを打ち出すことも好いのですが、そのチャート以上にGlobal 200の認知度が海外で勝ると考えるならば、やはりGlobal 200の重要性を国内でも浸透させることが必要であり、そのためにも日本の集計方法を海外チャートに添わせることが最善と考えます。

 

なお、米ビルボードによるグローバルチャートにチャートポリシーを添わせることで、リミックス施策(リミックスの複数リリースによりダウンロード指標が増加)に伴い総合チャートでも上昇する曲が登場すると予想されます。ただしダウンロード数自体は全体的に下がっているため、現象の大きさ自体はそこまで大きくないといえるかもしれません。なお、施策に伴うチャート上昇時には記事にてその旨を記すことを求めます。

 

 

 

おわりに

以上、チャートポリシー(集計方法)変更をメインとするビルボードジャパンへの改善提案を記しました。

 

音楽への接し方が時代に即して変わり続ける以上は音楽チャートが完全に成ることはありませんが、その中にあって複合指標から成る音楽チャートではビルボードジャパンが最良といえます。その精度をさらに高めるべく、議論の場を設けることを願います。




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