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K-POP、ヒップホップ、バッド・バニー…第68回グラミー賞ノミネート発表を踏まえ、私見を記す

日本時間の11月7日金曜、第68回グラミー賞のノミネーションが発表されました。一覧は下記リンク先で確認できます。

それでは主要6部門のうち4部門におけるノミネーションを踏まえ、私見を記します。最優秀プロデューサー賞(ノンクラシック)および最優秀ソングライター賞(ノンクラシック)は近年主要部門になったこともあり、今回は触れていません。

 

 

第68回グラミー賞、主要4部門のノミネーションは以下の通りです。

 

最優秀レコード賞 (Record Of The Year)

・バッド・バニー「DtMF」

・サブリナ・カーペンター「Manchild」

・ドーチー「Anxiety」

・ビリー・アイリッシュ「Wildflower」

レディー・ガガ「Abracadabra」

・ケンドリック・ラマー & シザ「Luther」

・チャペル・ローン「The Subway

・ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」

最優秀アルバム賞 (Album Of The Year)

・バッド・バニー『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』

ジャスティン・ビーバー『Swag』

・サブリナ・カーペンター『Man's Best Friend』

・クリプス『Let God Sort Em Out』

レディー・ガガ『Mayhem』

・ケンドリック・ラマー『GNX』

レオン・トーマスMutt

・タイラー・ザ・クリエイター『Chromakopia』

最優秀楽曲賞 (Song Of The Year)

レディー・ガガ「Abracadabra」

・ドーチー「Anxiety」

・ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」

・バッド・バニー「DtMF」

・HUNTR/X (ハントリックス)(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」

・ケンドリック・ラマー & シザ「Luther」

・サブリナ・カーペンター「Manchild」

・ビリー・アイリッシュ「Wildflower」

最優秀新人賞 (Best New Artist)

・オリヴィア・ディーン

・KATSEYE

・ザ・マリアス

・アディソン・レイ

・ソンバー

レオン・トーマス

・アレックス・ウォーレン

・ローラ・ヤング

 

 

注目点はまず、K-POP作品の複数ノミネートでしょう。ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」が最優秀レコード賞および最優秀楽曲賞に、HUNTR/X (ハントリックス)(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」が最優秀楽曲賞にノミネートされたのみならず、HYBEとゲフィンレコードの企画によってメンバーが決定したKATSEYEが最優秀新人賞候補となったことにも注目です。特に「APT.」そして「Golden」は米で、チャート動向が保守的と呼べるラジオでもヒットしており、ノミネートは自然と考えます。

そのグラミー賞においては、BTSが「Dynamite」や「Butter」で米ビルボード総合ソングチャートを制しながらも主要部門にノミネートされなかったことで非難されることが少なくありませんでした。上記リンク先をみるとBTSの曲はラジオでもヒットしたことが分かりますが、他方総合ソングチャートでは他の歌手の作品に比べて所有指標の強さが際立っていた点は否めません。その点は下記エントリーにて私見を記しています。

ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」やHUNTR/X「Golden」はストリーミングでも強さを発揮し、ロングヒットに至ったことを踏まえればノミネートは納得でしょう。「Golden」が披露された映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ (原題:Kpop Demon Hunters)』の人気がK-POP全体の浸透につながり、今後はBTSをはじめとするK-POPのロングヒット、そしてグラミー賞主要部門候補選出も増えるかもしれません。

ただしHUNTR/X「Golden」は、最優秀楽曲賞にノミネートされた8曲のうち最優秀レコード賞候補から唯一外れています(その枠にはチャペル・ローン「The Subway」が収まっています)。ヒット規模や映画人気を踏まえれば尚の事、「Golden」は(最優秀楽曲賞以上に)最優秀レコード賞へのノミネートがふさわしいものと考えるに、この点に引っ掛かりを覚えるというのが率直な見方です。

 

最多ノミネートはケンドリック・ラマーによる8部門(同一部門複数ノミネート有)であり、最優秀新人賞を除き主要部門でも候補に。一方で"最多部門獲得"はラッパーが輝くことが多く、ヒップホップと近しい関係にあるR&Bの楽曲に客演等の形で参加し、その作品が候補に成ることが影響しています。現に今回、シザのアルバムに収録された「30 For 30」もノミネートされています(ただしR&B部門ではなくポップ部門でのノミネートとなります)。

一方でヒップホップのジャンルからは今回、最優秀新人賞候補が登場していません。これは2019年開催の第61回以来となりますが、ヒップホップの米でのピークが2020年であること、そして直近の米ビルボードソングチャートでは総合40位以内からヒップホップ作品が消えたことを踏まえれば自然なことなのかもしれません。ヒップホップのピークやR&Bの興隆については昨日付エントリーにて記しています。

そのヒップホップからは、最優秀アルバム賞に3作品がノミネートされています(クリプス『Let God Sort Em Out』、ケンドリック・ラマー『GNX』およびタイラー・ザ・クリエイター『Chromakopia』)。この傾向はソングチャート上で強くなくなったとされるヒップホップにおいて希望になり得るのではないでしょうか。ただ、同一ジャンルの候補作が多いことで票割れが起きる可能性も考えられます。

 

さて、今年開催の第67回グラミー賞にて"和解"が紹介され且つパフォーマンスも行ったザ・ウィークエンドですが(和解についてはボイコット宣言から4年。ザ・ウィークエンドがグラミー賞2025にサプライズ出演 | Vogue Japan(2月3日付)参照)、今年はじめにリリースされたアルバム『Hurry Up Tomorrow』およびその収録曲はグラミー賞にノミネートされていません。この事態を踏まえてグラミー賞が非難される可能性はあります。

しかし、ボイコットのきっかけとなった「Blinding Lights」(グラミー賞未ノミネート)が米ビルボードで特大ヒットに至った一方、『Hurry Up Tomorrow』およびその収録曲のヒット規模は大きくありません。音楽チャートとノミネート/受賞結果が連動するわけではないものの、近年の主要部門は比例傾向が強まっていると捉えています。そしてアルバムの評価(下記参照)も踏まえれば、今回のゼロノミネートは妥当かもしれません。

The Weeknd - Hurry Up Tomorrow - Reviews - Album of The Year

ただし、このような結果を"煽る"ことはあってはなりません。ましてやそれを米ビルボードが行っていることについては強い違和感を抱きます。下記リンク先では"2026年のグラミー賞にノミネートされるべきだった、無視されたアーティストは誰か?"という投票企画を行っていますが、煽動以上の意味は持たないはずです。客観性を担保すべき音楽チャート管理者が、このようなことを行うことを強く疑問視します。

 

 

最後に。

 

グラミー賞は長きに渡り"差別的"と批判されてきました。特に黒人歌手に厳しく、選ばれるべき人やジャンル(特にヒップホップ)が主要部門に選ばれていないというのがその背景にあります。グラミー賞はこの10年ほどで投票権を有する方の人種やジェンダーにおける構成を是正しており、第67回の主要部門でケンドリック・ラマーやビヨンセが選ばれたのはその変革も影響しているといえるでしょう。

今回はバッド・バニーが主要3部門にノミネートされていますが、来年のスーパーボウルハーフタイムショー出演については米大統領やその熱烈な支持者が激しく非難しています。そのこともあり、来年のグラミー賞ではバッド・バニーが主要部門を獲得するかが最大の焦点になるかもしれません。スーパーボウルグラミー賞開催の1週間後に行われることから、尚の事注目といえるでしょう。

 

もうひとつ。投票者の構成変化は主要4部門におけるサプライズを生みにくしたとも感じています。保守的と揶揄されながら、しかしグラミー賞独特の目線がノラ・ジョーンズやサマラ・ジョイ、ジョン・バティステ等の主要部門受賞につながり、彼らをフックアップしたという側面もあるはずです。音楽チャートと比例傾向が強まった結果ともいえますが、その点においては寂しさを覚えるということを最後に書き添えておきます。




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