次週9月20日付(集計期間:9月5~11日)以降の米ビルボードソングチャートに注目です。
Tom MacDonald’s “CHARLIE” has reached #1 on US iTunes. pic.twitter.com/Kp01UaLjsX
— Talk of the Charts (@talkofthecharts) 2025年9月12日
上記は米ビルボードソングチャートを予想するXアカウントのポストですが、9月11日にリリースされたトム・マクドナルド「CHARLIE」がiTunes Storeにて首位に。ダウンロード数は不明ですが、この指標を含む総合チャートでも上位に進出する可能性があります。
トム・マクドナルドはカナダのラッパー。そして今回リリースされた「CHARLIE」は、10日に射殺されたチャーリー・カーク氏を指します。カーク氏は現大統領当選の立役者といわれ、極度と呼べる右派として知られる存在でしたが、そのカーク氏を殺害した容疑者は12日に拘束されています。
トム・マクドナルドは「CHARLIE」にて追悼曲の側面を持ち合わせながらも、『Killed in cold blood for having a discussion / And liberals are celebrating murder like it's justice (議論をしただけで冷酷に殺害された / そしてリベラル派は殺人を正義であるかのように称賛している)』として、事件を左派の問題に仕立てています(「CHARLIE」の歌詞はこちら)。しかし容疑者家族の背景等を読むと、その仕立ては正しくないといえるでしょう。
『ウォールストリート・ジャーナル』によると、チャーリー・カーク殺害容疑者タイラー・ロビンソンの両親は「共和党員」、タイラー自身は「無党派」として登録。 一家は敬虔なモルモン教徒。タイラーは数日前の食事時に「カークがユタに来る」「ヘイト (憎悪) を巻き散らしている」と語ったそう。 pic.twitter.com/CBSSpcWjRW
— Mystery Parrot (ミスパロ)🦜 (@ParrotMystery) 2025年9月12日
(ちなみに、トム・マクドナルド「CHARLIE」における『議論をしただけで…』というリリックに強い違和感を覚えた次第です。現代において”議論すら成り立っていない”と捉えているのがその理由。この点については『大竹まこと ゴールデンラジオ!』(文化放送)の9月9日放送回冒頭にて語られた内容に納得するところが多いゆえ、当該部分のポッドキャストをチェックすることをお勧めします(ポッドキャストのYouTubeはこちら)。)
このトム・マクドナルドもまた極度な右派として知られていますが、2025年度の米ビルボードソングチャートで既に4曲をダウンロード指標トップの座に送り込んでいる状況からは、エンタテインメント業界でも右傾化が存在感を高めていることを感じずにいられません。そのトムによる「Facts」が昨年度上半期に実績を挙げたことを紹介した際のエントリーを再掲する形で、私見を記します。
ダウンロードはトム・マクドナルドが保守系政治評論家のベン・シャピーロと共演した「Facts」が8位に。銃規制やブラック・ライヴズ・マター等を断罪するという曲は米ビルボードソングチャートで16位に初登場を果たしています。実際、昨年は強固な保守派から支持を集めた曲が米ビルボードソングチャートを制する等の動きがあり、「Facts」はストリーミングも強くなれば同チャートトップ10入りの可能性もあったでしょう。
大統領選が行われること、また直近では暴力事件も発生した状況においては、群衆の熱量に伴いチャートを席巻する曲が今後登場するのではないかということを、昨年春のチャートアクションから想起しています。この点は注視する必要があります。
・ルミネイト、2024年上半期の米アルバム/楽曲動向を公開…主要チャートを確認する(2024年7月17日付)より
この記載以降、分断は加速の一途を辿っています。チャーリー・カーク氏の死亡が伝えられた翌日に(左派との対立を煽る意味も持ち合わせた)追悼曲をトム・マクドナルドが用意したことも、その迅速さも含め状況を悪化させるに十分でしょう。日本でも今夏の選挙でSNSや短尺動画の重要性が指摘されていますが、フレキシブルな対応等が日本を含む世界中で加速し、議論がさらに成り立たなくなる社会を作るものと危惧します。
最後に。
相手がどんなに憎いとして、人命を消すという行為は絶対にあってはなりません。また、命が潰えたことを称賛することもあってはならないと強く考えます。そしてもうひとつ、命が潰えたことを対立する相手のせいと決めつけ攻撃材料に用いることも絶対に違うということを、大統領の”仕立て”から強く感じます(トランプ氏、左派批判に利用 SNSで飛び交う「内戦」―カーク氏射殺事件:時事ドットコム(9月13日付)参照)。
そしてそもそも、なぜ米で銃規制を行わないのか、行わなかったことでどうなっているかを議論しなければ、今回をはじめとする問題の一端は解決できないのではないでしょうか。この銃規制議論も不能な状態ですが、真にチャーリー・カーク氏を追悼したいと思うならば議論は必須です。