ビルボードジャパンでは2025年下半期の集計期間初週である6月4日公開分以降、ソングチャートおよびアルバムチャートのストリーミング指標においてリカレントルールを導入しています。Streaming SongsチャートおよびStreaming Albumsチャート(後者は未公表)を指標化する際、ソングチャートは100位以内に53週以上、アルバムチャートでは同27週以上ランクインした作品に減算処理を施すというものです。
リカレントルールは新陳代謝を促し、新しい作品のヒットをよりはっきり可視化させるのみならず、過去曲の(再)ヒットも際立たせます。特に今夏は平成の夏を彩る代表曲が複数登場しており、ビルボードジャパンの主要3チャートでORANGE RANGEが躍進…背景からみえてくる施策とは(7月11日付)で紹介したORANGE RANGE「イケナイ太陽」(2007)は、その後最新8月6日公開分にて5週連続となるトップ20入りを果たしています。
そんな平成夏ソングとして、今回採り上げるのがaiko「花火」。1999年にリリースされたシングルは、最新ソングチャートで51位にランクインしています。

(上記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています(ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています)。なお、以下に紹介するCHART insightも同様に、有料会員が確認可能なものとなります。)
直近120週分のCHART insightからも解るように、aiko「花火」は毎年夏に総合チャートに登場するのが恒例となっています。特に牽引するのがラジオ(CHART insightでは黄緑で表示)、そしてカラオケ(緑)ですが、直近3年において一昨年は動画再生(赤)人気が高く、またストリーミング(青)は一昨年そして今年順位を伸ばしています。ストリーミング指標の今年における上昇には、先述したリカレントルールの影響も考えられます。
そして興味深いのは、この「花火」が収録されたオリジナルアルバム『桜の木の下』(2000)が最新8月6日公開分ビルボードジャパンアルバムチャートで19位にランクインしているということです。

先程と同様、CHART insightは直近120週分を表示。2年前はアナログ盤リリースに伴い、2023年7月19日公開分にて(CHART insightでは黄色で表示される)フィジカルセールス指標が12位、総合では17位に登場していますが、昨年最終週に導入されたストリーミング指標ではその初週から加点を続け、リカレントルールが採用された今年6月4日公開分で同指標81位に上昇して以降、ストリーミング/総合の双方で順位を伸ばしています。
「花火」の他にも「カブトムシ」や「桜の時」といったヒット曲が収録されていることも、『桜の木の下』の人気の一因といえるでしょう。一方、aikoさんにおいてはオリジナルアルバムとベストアルバムとでチャート動向に大きな差が生じています。


aikoさんはベストアルバムを二度リリース。「花火」を収録した『まとめI』(2011 『まとめII』と同時リリース)は2023年4月26日公開分でのダウンロード指標、また『aikoの詩。』(2019)では2024年10月9日公開分での同じくダウンロード指標が、いずれも最後の加点対象に。昨年最終週に組み入れられたストリーミング指標は、ベストアルバム2作品においては加点対象となる300位以内に一度も入っていません。
先述したORANGE RANGEにおいては、「イケナイ太陽」を収録したオリジナルアルバムの『PANIC FANCY』(2008)が最新8月6日公開分ビルボードジャパンアルバムチャートでストリーミング指標91位、総合96位にランクインし同作品初のトップ100入りを果たした一方、ベストアルバム『ALL the SINGLES』(2010)は4週連続でトップ20入り、当週は1ランク後退するも7位に登場しています。


aikoさんとORANGE RANGEとでは、ソングチャートで上位に進出した平成夏ソングを収録するアルバムがオリジナルとベスト盤とで動きが大きく異なります。
ORANGE RANGEにおいては複数の代表曲をTHE FIRST TAKEや夏の地上波音楽特番で披露しており、それら代表曲を通じて歌手全体を訴求したことが再ブレイクにつながり、まずはベスト盤をチェックしようとする方を増やしたのではないかと捉えています。
他方、aikoさんは今年春に1年ぶりとなるダブルAサイドのフィジカルシングル「シネマ」「カプセル」をリリースしていますが、先述したCHART insightを踏まえれば「花火」は(新曲の有無に関係なく)毎夏駆け上がるものとみられます。それがストリーミングを味方につけ、さらにリカレントルール導入に伴いフックアップされたことで、同曲は2008年7月30日公開分で記録した最高位(38位)まであと少しのところまできています。
その中で、オリジナルアルバム『桜の木の下』がベスト盤以上に注目を集めているのは「花火」の人気もさることながら歌手人気の継続、オリジナルアルバムの評判、また複数のヒット曲を収録していること等が影響しているのではないでしょうか。

ソングチャートとアルバムチャートを合算したビルボードジャパンによるトップアーティストチャート、直近120週分におけるaikoさんの動向を上記に。昨年リリースした「相思相愛」がストリーミングヒットしていますが、当週のストリーミング指標が昨年のピーク(2024年5月15日公開分 15位)を上回る13位に到達していることに注目です。
【ビルボード】ストリーミング1億回突破曲一覧 新たに387曲が判明https://t.co/CD5RYUKidV pic.twitter.com/xmUrBwReCf
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年7月8日
ビルボードジャパンソングチャートにおけるストリーミング指標の集計対象は引き続き300位までながら累計再生回数についてはきちんと加算するという形に変更したことで、ストリーミング1億回突破曲が大量に登場したことが先月アナウンスされています。注目はその際新たに1億回突破が報告された曲の累計再生回数であり、aikoさんについてはたとえば「花火」が1.6億回、「カブトムシ」が1.8億回と紹介されています。
今夏新たにストリーミング突破曲が判明した387曲のうち、累計再生回数が1.5億回を上回ったのは2割近くに。ここからは週間300位未満ながらも聴かれ続けてきた曲が多かったことが読み取れますが、aikoさんの2曲が該当したことは歌手としての長期的な人気を示したといえるかもしれません。そしてその2曲とも『桜の木の下』に収録されていることが、同作品のチャート人気を証明するものと言っても差し支えないでしょう。
当週において「花火」はソングチャート45週目、『桜の木の下』はアルバムチャート13週目のエントリーとなっています。「花火」が最高位を更新するか、『桜の木の下』がトップ10入りを果たすか、注目です。