以下の内容はhttps://www.imaoto.com/entry/2025/07/02/063000より取得しました。


ヒット曲がチャートに長くとどまるようになった理由を米ビルボードが分析した件

ビルボードジャパンは2025年度下半期より、ソングチャートおよびアルバムチャートにおいてストリーミングの指標化時にリカレントルールを導入しています。これはStreaming SongsチャートおよびStreaming Albumsチャートを指標化する際に、一定期間以上ランクインした作品に対し減算処理を行うというものです(なおStreaming Albumsチャートは現時点で公開されていません)。

ビルボードジャパンはリカレントルールの導入理由を”チャートのリフレッシュ”が目的と説明しており、新陳代謝や新曲のフックアップがその背景にあるものと考えられます。一方で米ビルボードのソングチャートにおいては先んじてこのリカレントルールが導入されていますが、その内容は異なります。

米ソングチャートでは一定週数以上ランクインしている曲が一定順位を下回った際にチャートから外れるというのが、リカレントルールの内容です。21週以上在籍の場合は50位未満、53週以上の場合は25位未満に後退した際に適用されますが、強力なアルバムが初登場した際に収録曲がソングチャートにも大挙登場することで、その登場曲の上位進出が一時的であってもリカレントルールが適用される曲が少なくありません。

他方、米ソングチャートではクリスマス関連曲が毎年大きく上昇しますが、それによりリカレントルールに抵触した曲はクリスマス関連作品の一掃後に復活します。復活する/しないは抵触時期により変わりますが、米では"チャートから外れる"ことがリカレントルールの基礎となっている点が、日本とは大きく異なります。

 

しかしながら、チャートから外れる形でのリカレントルールを採用した米でも、ロングヒットは際立っています。今回は5月31日付米ソングチャートの動向を踏まえて米ビルボードが紹介した記事を意訳の上掲載し、米での動向を押さえます。これを知ることは、リカレントルールの内容こそ異なれど日本でも起きているロングヒットの理由の一端を理解することにつながるものと捉えています。

 

 

ビルボードが5月28日に公開した記事はこちら。

この記事について、以下に意訳を記載します。なお記事内の一部データは最新7月5日付のものに更新しています。また言及された曲のいくつかについて、公式動画を貼付しています。

 

『ヒット曲がチャートに長くとどまるようになった、その理由とは』

 

テディ・スウィムズ「Lose Control」が米ビルボードソングチャートで歴代最長エントリーを達成し、記録をさらに更新する中、他のヒット曲もチャートを駆け続け、まるで終わることなくチャートインを続けています。これらのメガヒットの背景には何があるのでしょうか。

 

 

テディ・スウィムズが5月31日付米ビルボードソングチャートで歴史を塗り替えました。ソウルフルなポップアンセム、「Lose Control」がソングチャート100位以内に通算92週ランクイン。グラス・アニマルズ「Heat Waves」の持つ91週在籍記録を上回り、67年近い歴史を持つソングチャートにて最長在籍記録を更新しています。

 

「Lose Control」は2023年8月26日付ソングチャートで99位に初登場し、2024年3月に首位を獲得。頂点に立ったのはわずか1週ですが、しかしそこから1年以上経った現在でもトップ20内にランクインを続け、トップ10には通算68週ランクインするという記録を打ち立てています(2025年7月5日付現在)。

SiriusXM & Pandoraの音楽番組担当副社長であるアレックス・ティア氏は「Lose Control」のブレイクスルーヒットが勢いを維持していることについて、「焼け付くようなダメージは最小限に抑えられています」と語ります。「私たちはリスナーの反応に完全に、忠実に従っています。ユーザーが何を聴きたいのか、どれくらいの頻度で聴きたいのかを私たちに伝えてくれるのです。そして「Lose Control」が依然として、純粋なマスアピール力を持っていることは疑いようもありません」。

 

さて、何も「Lose Control」だけがソングチャートで数ヶ月に渡りソングチャートの上位に留まっているわけではありません。モーガン・ウォーレンによる『I'm the Problem』がアルバムチャートに初登場したタイミングにて、アルバム収録の29曲が5月31日付ソングチャートで初登場を果たしていますが(結果的に同日付ではアルバムから1曲を除く36曲が同時エントリー)、言い換えればこのタイミングまでソングチャート50位以内に数ヶ月、場合によっては1年以上もランクインし続けて曲が多く存在していました。

シャブージー「A Bar Song (Tipsy)」、レディー・ガガブルーノ・マーズ「Die With A Smile」、ポスト・マローン & モーガン・ウォーレン「I Had Some Help」などは複数週に渡り首位を獲得した後もランクインし続けています。また、ベンソン・ブーン「Beautiful Things」、ジジ・ペレス「Sailor Song」、サブリナ・カーペンター「Espresso」などは週間チャートを制することはできなかったものの2024年中頃から留まり続け、さらにケンドリック・ラマー & シザ「Luther」は5月31日付にてモーガン・ウォーレン & テイト・マクレー「What I Want」が首位初登場を果たすまで13週間続けてソングチャートで首位を記録。この曲においては3月1日付にて初の首位を獲得するまで、3ヶ月近くに渡りランクインを続けていました。

ソングチャートでは常に幅広いジャンルの普遍的なヒット曲が登場しますが、それらのヒット曲がまとまって、これほど多くランクインすることは稀です。5月24日付のソングチャートではトップ10在籍曲のうちチャートインが10週未満の作品はありませんでした。トップ20ではランクイン曲の平均在籍週数が30.35週となり、5年前(2020年5月30日付 平均18.75週)の1.5倍以上に。またトップ20のうちチャートに30週以上在籍した曲は2025年5月24日付では9曲だったのに対し、10年前(2015年5月30日付)ではわずか1曲という状況です。

 

あたかも永遠にランクインし続ける(ようにみえる)大ヒット曲が目立つ現在ですが、その要因は何でしょうか。Spotify編集長のタリア・クレインズ氏は、2025年のチャートの動きが鈍い理由のひとつに前年産のポップミュージックが大量に流れ込んだことを指摘しています。「2024年はポップミュージックにとってまさにクレイジーな一年でした。素晴らしい新曲や歌手が誕生しましたが、それは何年もかけて作り上げられたものだったと思っています」。

クレインズ氏は、チャペル・ローン(「Pink Pony Club」が50週近くランクイン)やチャーリーXCX(2020年発表の「Party 4 U」がチャートインしたばかり)といった歌手を例に挙げ、これらの歌手が昨年メインストリームヒットを定義付けることに貢献したのみならず、ストリーミングサービスでファンが楽しめるアーカイブも豊富に持ち合わせていることを指摘。「これらの歌手は完成された存在でした。全く新しい世代が、自分たちの新しいお気に入りの歌手と新しいお気に入りの曲を見つけ、それを熱心に聴いているように感じます」。

 

チャートの長寿化は、パンデミック後ということも影響しているかもしれないと、Audacyのプログラミング担当SVPであるマイケル・マーティン氏は述べています。「Lose Control」が92週チャートインを記録する前には、ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」(通算90週)とグラス・アニマルズ「Heat Waves」(同91週)が隔離時代のアンセムとして、それぞれ2021年4月と2022年10月に記録を樹立していました。

ビルボードソングチャートにおいて歴代最長ランクイン記録が5年の間に三度も更新されたという事実は、大ヒット曲の寿命が観客の嗜好に合わせて変化してきたことを物語っています。マーティン氏はパンデミック時代のポップスについて、「誰もが心を癒される食べ物を求めていたのでは」と指摘。「お気に入りのテレビ番組をもう一度イッキ見するといったように、人々は馴染みのあるものを欲しがっています。ロングヒットする曲には、人々が愛し、ずっと聴き続けたいと願う何かがあるのです」。

 

一方、レーベルがバイラルヒットをどのように発掘し、プロモーションした上でチャートインを長く維持するかについて、Spotify編集長のタリア・クレインズ氏は5年前の音楽業界と今日とで決定的に違っていると指摘します。TikTok時代が幕を開けた頃は、バイラルヒットの火付け役となった歌手が無名であれ即座に契約を交わし、ラジオ番組やストリーミングサービスで推薦された一方、テディ・スウィムズ(YouTubeのカバー曲が話題となり2019年後半にワーナーと契約)のような歌手はシングルが主流のプロモーションを受けるまでに何年もかけて育てられることが多いのです。

「歌手の成長には時間がかかるものだと理解しています」とクレインズ氏は述べます。「そして、最初から大ヒットしなかった曲でも、確実に人気が伸びています」。その好例がテディ・スウィムズ「Lose Control」であり、米ビルボードソングチャートで初登場時は99位だったこの曲は32週をかけてチャートのトップに上り詰めています。「人々は音楽にじっくりと向き合い、楽しむ時間が増えています。一度きりの音楽で終わりにするようなことはしないのです」。

 

さて、ストリーミング時代においては歌手が積極的にプロモーションするシングルと、チャート上位に食い込む見込みのないとされるアルバム収録曲との区別が曖昧になっています。昨年、ビリー・アイリッシュはアルバム『Hit Me Hard And Soft』の主力曲として「Lunch」を用意していましたが、ストリーミングサービスで「Birds Of A Feather」がファンに受け入れられたことで即座に方針を転換。「Birds Of A Feather」はそのリリース以来、プラットフォームを問わず高い人気を維持しており、ラジオ番組では繰り返しプレイされ、ストリーミングサービスは主要プレイリストの上位にランクイン。そして2025年5月31日付にて、同曲はソングチャートでのランクインが2年目に突入しています。

SiriusXM & Pandoraの音楽番組担当副社長であるアレックス・ティア氏は、長期ヒットの鍵のひとつが後続するシングルにおける巧みな展開にあると指摘。後続シングルとは、人気歌手の曲においてリスナーがメガヒットに飽きないようにしつつ、その邪魔にならないような曲を指します。一世代前にはラジオ局が同じ歌手による複数の作品をヘビーローテーションすることができなかった一方、ストリーミングの普及によってその境界線が曖昧になった現在では、番組編成担当者は同じ歌手の曲をバランスよく組み合わせることが可能となり、最終的には大ヒット曲の寿命を延ばすことができるのです。

「リスナーは同じ曲を何度も繰り返し聴きたいわけではありません」とティア氏は説明します。「今はサブリナ・カーペンター、ベンソン・ブーン、テディ・スウィムズの時のように、1組の歌手につき2曲、3曲、4曲…と続けて再生が可能に。そうすることでリスナーの疲労は少し軽減され、長くチェックしてくれるのです」。

 

逆説的に言えば、ポピュラー音楽の断片化、そしてストリーミング時代が文化的に遍在する楽曲の数に与えた影響こそが、現代において永遠に記憶に残る大ヒット曲がこれほどまでに多く存在する理由なのかもしれません。ベテランラジオ番組制作者でコンサルタントのガイ・ザポレオン氏はキャリアを通じてポピュラーラジオ局の10年周期における音楽サイクルを記録してきましたが、音楽プラットフォームの急増によってもたらされた現代の”コンセンサスの欠如”が、一度ヒットした曲が長く人気を維持することを意味していると述べています。

「様々なソースから曲を拾える現在にあっては、特大ヒット曲以外がヒットするのは困難です」とザポレオン氏は言います。「ヒット曲に至るまでには時間がかかるものの、ヒットすればかつてないほど長い期間その地位を維持するのです」。

チャートインが長期化する現在の音楽業界において、歌手の区別なくヒット曲が重視されるのは好いことです。ケンドリック・ラマー、シザ、モーガン・ウォーレンといった歌手の作品がここ数ヶ月の間にソングチャートを制していますが、トップ10に範囲を広げると昨年同様、2025年に初めてチャートインした歌手が溢れています。

「「Lose Control」のような、リスナーが飽きることのない作品を提供し続けると同時に、彼らが求めている新しい歌手…たとえばドーチー、ソンバー、アレックス・ウォーレン、ローラ・ヤング、レイヴン・レネー等の曲も提供できます」とAudacyのプログラミング担当SVPであるマイケル・マーティン氏は語ります。「それゆえ、新たな作品や新たな歌手の停滞は起きていないと思うのです」。

 

(記事の意訳はここまで。)

 

 

特に興味深いのは『リスナーは同じ曲を何度も繰り返し聴きたいわけではありません (中略) 1組の歌手につき2曲、3曲、4曲…と続けて再生が可能に』の部分。米ビルボードソングチャートではラジオ指標首位曲の数値が減少していますが、ともすればこのことも背景にあるのかもしれないと感じた次第です。そして『』内の部分が端的に示された例が、最新7月5日付米ビルボードソングチャートの記事で示されたといえるでしょう。

モーガン・ウォーレン feat. テイト・マクレー「What I Want」が3→2位に上昇。(中略) なおモーガンは「Just In Case」が当週4位、「I'm The Problem」が同5位にランクインし、2025年において3曲以上同時トップ10入りが通算6週目に。ケンドリック・ラマーの5週を上回り、最高記録を更新しています。

<米ビルボードソングチャート 単年における3曲以上同時トップ10入り記録>

・13週 50セント (2005)

・12週 ドレイク (2018)

・10週 ザ・ビートルズ (1964)

・9週 T-ペイン (2007)

・8週 サブリナ・カーペンター (2024)

・6週 モーガン・ウォーレン (2025)

・6週 ジャスティン・ビーバー (2016)

<米ビルボードソングチャート 3曲以上同時トップ10入り歴代記録>

・19週 ドレイク

・15週 50セント

・11週 ジャスティン・ビーバー

・10週 ザ・ビートルズ

・10週 ケンドリック・ラマー

・9週 T-ペイン

・8週 サブリナ・カーペンター

・8週 モーガン・ウォーレン

・7週 テイラー・スウィフト

上記記録の過半数が2010年代後半以降の、いわばストリーミング時代に達成されたものであることも、リスナーの聴取傾向の変化(同じ曲を何度も繰り返し聴きたいわけではないが1組の歌手の別の曲を続けて聴くこと)を示しているといえるかもしれません。

 

一方で、先述したラジオ指標のみならずストリーミング指標首位曲の数値も低下しており、ストリーミング指標首位曲の盛り上がり時は2024年度において、クリスマス、ケンドリック・ラマーによるドレイクへのビーフテイラー・スウィフトやサブリナ・カーペンターといったポップアイコンの新曲登場、ポスト・マローンとモーガン・ウォーレンというジャンルを超えたコラボレーション曲のヒットに限られています。

これらの作品ではストリーミングを高めるための各種施策も功を奏した一方、たとえばビーフにおいては『ゴシップ好きな見学者(興味本位でその顛末を見てみたいという者)も増やすことでストリーミングの高水準につながった』と捉えています((追記あり) ティザー等動画発信、ストーリー構築…最新米ソングチャートでストリーミングが高水準に達した背景(2024年5月22日付)より)。音楽ファンにとどまらない形で興味を高めることがストリーミングの上昇につながりやすいのではないでしょうか。

 

 

特に今年に入り、米ビルボードソングチャートではいわば凪の状態が目立ってきているというのが、毎週チャートを追いかける者としての見方です。この状況を良い意味で打破する作品が表れ、米エンタテインメント業界の主役に躍り出る歌手が出てくるかに注目していきます。




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