
キックボクシングの試合前日の気分っていうのを、綴ってみようと思う。
とりあえず、不安で緊張している。
どこかで講演する時よりも。
テレビに出る時よりも緊張している。
だって知らないおじさんと、しばき合うんだから。
パンチだけじゃない。
蹴りも飛んでくる。
年齢もわからない。
素性もわからない。
わかっているのは、所属ジム情報くらい。
そんなおじさんと、本気でボコり合う。
怖くないわけない。
だから不安。
心臓もバクバクしてる。
なんだか上の空。
それを忘れようとして、SNSにやたら投稿したり、部屋の片付けをしたり。
何なら、ポールダンスのステージ衣装になるであろうレディースの洋服や水着を整理したり。
「いつもどおり」な状態にしようとしてるくせに、なぜか普段やらないことを、いろいろやっている。
すべては、心を落ち着かせるため。
明日は8時半には会場入り。
9時半には大会が始まる。
自分は14試合目なので、10時ぐらいには、たぶんもう試合は終わっている。
今回は1ラウンドで終わる。
だから、よーいドンで、お互いスパークするように、激しくぶつかり合うことになるのは確実。
何の温存もなし。
よーいドンで、100%と100%がぶつかる。
そんな戦いになるだろう。
明日の対戦相手は、実は過去に戦ったことがある。
当初は、過去に引き分けた選手であると勘違いしていたが、実際は過去に私が勝っている相手だった。
だけど、その時の彼の印象は──「予想以上に強い」だった。
試合中、彼は鬼の形相になった。
あの顔は忘れられない。
そういうの、試合ではよくある。
これまで8試合してきたけど、ほぼ忘れている試合もある一方で、
相手の表情、衝撃、匂い、血の味──
強烈に覚えている試合もある。
今回の相手は、まさにそれ。
鬼の形相が頭に焼き付いて、トラウマになったほど。
よーいドンで90秒。
終わった時、私は勝って、手を挙げて喜んでいるのだろうか。
それとも──
いや。
「やる前に負けることを考える馬鹿がいるか」
そう言ったのは、アントニオ猪木。
私は絶対に勝つ。
彼との対戦成績、引き分けにはさせない。
2連勝して、勝ち逃げする。
勝って、メダルをもらって、ひとまず自分の中で「キックという競技」に決着をつけたい。
勝ちたい。
でも、まるで予想ができない。
いつもそうだ。
慣れることなんて、ない。
減量も今回は辛かった。
何かと不安がつきまとった。
いろんなミスもした。
でも、それらは明日の午前で終わる。
すべての結果が、明日出る。
笑って、リングを降りたい。
仲間たち全員で笑って、祝杯をあげたい。