「クロコダイル・ティアーズ」 雫井修介 著

それなりのネタバレを含みます。
あらすじ
舞台はある老舗の陶器屋。
貞彦と暁美が当代として、そして二人の息子の康平とその嫁・想代子、更に孫の那由太。
二人は康平に跡を継がせるように考えており、康平もそれを受け入れようと店を手伝うようになり、そしてそれもすっかり当たり前となった。
しかし、そんなある日、康平が殺害される事件が起こってしまった。
息子を失った夫婦は悲しみに暮れる。
一方で、想代子は悲しんでいるようには見えるものの、あっけらかんとしているようにも見え、暁美はどこか違和感を覚えていた。
そして康平を殺害した犯人・隈本は何と想代子の元交際相手だった。
そして最終判決の日。
そこで懲役刑となった隈本は、判決を聞きに来ていた想代子に向かって「お前が頼むから殺してやったのに」といったことを叫び出した。
いよいよ想代子を疑い出す暁美だったが、確信は持てない。
そのまま家に住み着き、そして店で働くようにまでなった想代子に、暁美は常に疑心暗鬼を抱き続ける。
感想
疑心暗鬼というよりは、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いというお話。
暁美は元々、想代子が好きではないので、一挙手一投足から気にかけて、そして更に疑念のループに捕らわれているようでした。
現実でもそういうことってありますね。
他人が成すことをフラットに是々非々で判断できることなんて赤の他人くらいで、距離が近ければ近いほど難しくなってしまいます。
私もなるべく公平に見たいとは思いますが、感情を完全に排除することはできないですねえ。
そして想代子側の視点で考えると、無自覚な悪というのもあります。
ウェザー・リポートの言葉に「お前は自分が『悪』だと気づいていない…もっともドス黒い『悪』だ」というものがありますが、それに近いというか。
「あーあ、あいつ邪魔だなあ。急に刺されちゃったりしないかな(ちらっ)」みたいなね。
確信的なことかどうかは本人しか分かりませんし「そんなつもりで言ってないし(ちらっ)」みたいな逃げも打てますし。
まあ「人を見たら泥棒と思え」くらいの方が今の時代に合ってるのかもしれません。
それが幸福なことかどうかは別として、ベターを目指すなら。