
70歳になると、ふとしたことで年齢を感じる。
そのひとつが、髪を切る回数かもしれない。
若い頃は、髪を切るタイミングなんてあまり考えなかった。
気がついたら伸びていて、「そろそろ切るか」という感じだった。
でも70歳になると、少し違う。
まず、髪の伸びがゆっくりになる。
昔は1ヶ月もすると気になっていたのに、今は2ヶ月くらい平気だったりする。
それに、毎日忙しいわけでもない。
会社もないし、会議もない。
誰かに会う予定もそんなに多くない。
だから髪が少々伸びていても、
「まあ、いいか」と思える。
けれど不思議なもので、
髪を切る日というのは、ちょっとしたイベントでもある。
散髪屋に行って、
「いつも通りで」と言う。
世間話を少しして、
最後に鏡を見て「さっぱりしましたね」と言われる。
それだけのことなのに、
帰り道はなぜか少し気分がいい。
70歳になると、
毎日の生活の中にある小さな出来事が、
生活のリズムになっていく。
散歩すること。
コーヒーを飲むこと。
そして、髪を切ること。
2ヶ月に一度くらい、
「ああ、そろそろ散髪かな」と思う。
そして昨日、髪を切った。
たったそれだけのことなのに、
今日はなんだか気分がいい。
70歳の暮らしは、
大きな出来事よりも、
小さな出来事が一日の区切りになる。
昨日、髪を切った。
それだけで、
昨日は一日をちゃんとやり切った。
そんな気がしている。