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【2726】パルGrHDの特別功労賞について

結論:創業者による上場企業の私物化と思いきや、全然そんな感じじゃなかった。

 

こういう記事がありました。

パルグループ創業者・井上英隆氏に特別功労金31億円(WWDJAPAN.com) - Yahoo!ニュース

パルグループホールディングス(HD)は、5月28日付で取締役を退任する創業者で元会長の井上英隆氏(89)に対し、特別功労金31億5800万円を支給すると発表した。同日付の株主総会での承認を経て実行する。

 

実際のリリースがこちら

 

アナトールはこういう「特別な」報酬を出す事は賛成しません。

役員の報酬には「こうしなければならない」なんてルールは基本的にありません。経営者が出そうと思えばいくらでも理由付けして支給できてしまうものです。だからこそ、企業ごとに一定のルールを設けて恣意性をできるだけ排除しないと、いずれその「前例」を盾に企業を私物化して私腹を肥やす輩が出てきかねません。

実際、上場企業であっても、創業者が過半数の議決権を持つ企業が、大した利益もあげていないのに役員報酬ばかり受け取り、少数株主にはなんの利益ももたらさないような事例もあります。非上場の企業ならばまだしも、上場企業がそんなことをしてよいのだろうか、と。

 

そんなことを思いながらチラッと直近の有報を覗いてみました。

 

そもそも報酬を決めているのは、誰なのかな、と。すると・・・

 

うん・・・報酬委員会に受け取る本人がおるね。。

まあ、ご本人が決めたとしても、株主が納得しなければ支給されないわけで、あくまで支給するかどうかは株主が決定します。

よって、大株主の構成も見てみましょう。

 

筆頭株主であるスコッチ洋服店というのは、創業者ご自身が一番最初に立ち上げた会社ですから、その意思決定はご本人か親族が持つと考えられます。

 

また、2番目の大株主である井上隆太氏は取締役社長にして、井上秀隆氏の長男だそうです。ちなみに副会長の渡辺氏は長女だそうです。

 

皆さんの株式数を集めるとほぼ過半数ですから、浮動票があることを考えたら、実質的に株主総会の決定権は井上家が握っていると考えていいかと。

株主総会の決定権も握っており、状況的には「私物化」にリーチです。

 

あと考慮すべきはこの特別功労賞の妥当性です。これで特別功労賞が妥当と思われる根拠が見当たらなければBINGOです。

 

先ずは事業を概観してみます。

 

衣料事業、雑貨事業で、雑貨事業はあの有名な3COINSですね。

売上や利益の構成を見てみましょう。

 

 

売上は同じくらいですが、利益は衣料事業が大きいですね。3COINSが有名だからてっきりそっちが大きいのかと思ってました。ちょっと意外です。あと、いずれも仕入小売という比較的、利幅の薄いビジネスの筈なんですが、特に衣料は結構な利益率です。

 

トータルとしての業績も眺めてみます。

20年ー22年はコロナ禍で特に小売りなんて結構厳しい時期な筈ですが、どうにか黒字で持ちこたえてます。これは地味に凄いなーと。。

 

 

なんでこんなに急激な不況に耐えきれるのかなーと思いつつ、B/Sも見てみます。

 

まず一目見て思うのが、現金及び預金の全体に占める割合が半分くらいあります。

こういうB/Sは小売ではあまり見ない気がします。小売で多くなりがちなのは「在庫」と「出店のための有形固定資産」です。この2つがデカいものだから、小売の企業はいつも資金不足で汲々として不況やら問題が起こるとすぐに減損やら在庫処分で大きな損を出す、というのが一般的です。パルGrHDはこれだけ在庫や有形固定資産が抑えられているから、コロナ禍のような大きな外的要因があってもどうにか黒字を残せたのではないかと。ただ、このB/Sは何も考えずに作れるものではありません。コントロールしている意思を感じます。

 

という事で、理由を探ってみると「事業等の状況」のところに記載がありました。

在庫に関わる部分

 

有形固定資産に関わる部分

 

あー。。良くできてますね。。

明らかな意思を以てキャッシュフロー経営を徹底している雰囲気を感じます。

すごく先進的経営。

あと、こういうプロモーションに関する部分も、なんというか凄く時代に合ってる。

 

ただ、同社の経営陣の方々って、冒頭で井上氏が89歳だった事からも結構高齢の方が多いんです。少なくとも普通にプライベートでインスタとかやる世代ではないんです。にも拘わらずこういう新しい文化を当たり前のように取り入れ、先進的経営スタイルができているのは正直違和感がある。

 

何か理由があるんだろうなーと思ったらやはり。。

 

 

クッソ面白い、若手がワクワクする制度がバンバンありますね。

こういう若手の意見を受け入れる土壌が同社のベースにあると考えれば、同社の先進的な経営体制、財務数値も腑に落ちます。

 

この人事制度の何が凄いのかって、一つ一つの定義がしっかりしてるんですよね。

 

社員が幸せな状態とは社員一人ひとりが「自主性・自発性」を発揮できる状態だと考えております

・・・

社員一人一人が成し遂げたい自分の夢の実現のために、会社はその仕組みと知恵を提供し、社員の成長をサポートする役割を企業は担っていると考えております。

・・・

「自発性を発揮して成果を出した社員が、きっちりと評価され、自発性を発揮して提案をすることが歓迎される」そのような風土が自発性を促し、社員一人一人のパフォーマンスが上がり、結果的に会社の成長につながる

・・・

大事にしているのが、「働きに応じて平等」の考え

社員の幸せとは何か、会社の役割とは何か、どうすれば自発性が生まれて企業成長に繋がるのか、平等とは何か。全部ちゃんと哲学としてよく練られて論理的に整理されています。「社員の幸せ」とか「平等」とか、耳障りのいい言葉を並べる企業は多いですけど、ほとんどの企業はここまでちゃんと定義できてないと思います。これは結構議論して練り上げてると思います。

これは色んな企業が手本にすべきだと思います。

 

さて、こうした素晴らしい制度があっても、与えられる報酬が少なければ、「口だけ」になってしまいます。ということで報酬も見てみますと。

従業員の方は7百万円

 

これは勿論持ち株会社社員ですからグループ全体の金額ではないですが、もし仮にこれがグループ内でそれほど差がないなら、これだけ規模の小売ビジネスの従業員にしてはかなり高いレベルです。

 

さらに役員報酬を見てみると、億越えが5人もいる。従業員と役員にこれだけの報酬を与えてなお、同社は結構な付加価値を出してるってことですのでこれは結構凄い事です。

創業者の井上氏、社長の井上氏以外にも億越えが3人、そして、副会長であり創業者の長女である渡辺氏はこの中に載ってません。渡辺氏の経歴を見るに、3年ほどしか社員経験はなく、それ以降は井上氏の資産管理会社っぽいスコッチ洋服店の役員としての経験しかありません。

この経歴を見る限り、彼女は実務にあまり関与していないので、彼女に億越えの報酬が与えられないところを見ると、パルGrHDは創業家を特別扱いしているのではなく、担う役割に応じた報酬が与えられている雰囲気が感じられます。

 

会社制度や数値を追ってみると、この会社はかなり良くできている印象です。

 

まとめ

さて、話を戻します。

この記事はパルGrHDの創業者である井上氏に払う特別功労賞が、もしかして私物化にあたるのではないか、という疑問から始まってます。

これはどこまでを妥当とするのかは個人の価値観によるところかと思いますが、アナトール個人は「これだけの企業を作り上げた人なら別に多くはないかな」と思いました。

そもそも論になってしまいますが、パルGrHDは直近の包括利益で100億円以上、時価総額は2,500億円以上の会社です。その会社の半分近くの所有権を持つ井上氏の一族の方々は余裕で1,000億円以上の資産を持つ大富豪一族です。そんな一族の筆頭の方がたかだか31億円(しかも所得税で結構取られる)の報酬のために手間を踏むというのは、ナンセンスです。

加えて、パルGrHDは有価証券報告書を見るだけでも、他者のお手本となるような会社制度としてもかなり良くできた会社です。こういう会社を制度設計できる人がセコい事をする、というのはイメージが合いません。この特別功労賞は私物化とかそういう俗っぽいレベルで生まれた話じゃないんじゃないかな、と思いました。

 

いやーしかし、人材育成の所はほんと面白かった。

久々に面白い有報を読ませて頂きました。

今後のパルGrHDの動向に期待したいですね。




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