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統計的差別を無くすことは難しいが、避けたほうがいい

 

 理想を言えば「全ての差別は無くすべきだ」と言いたいところですが、現実問題として統計的差別を無くすことは難しいと思っています。

 ネット上でも国家や宗教や人種や職業や男女で区分された集団に対する統計的差別を見かけない日はありません。

 

 統計的差別の撤廃が難しいのは、それが合理的な判断だからです。

 

差別の再生産

 まずは国連による差別の定義を見てみましょう。

Discrimination is any unfair treatment or arbitrary distinction based on a person’s race, sex, religion, nationality, ethnic origin, sexual orientation, disability, age, language, social origin or other status.

差別とは、人種、性別、宗教、国籍、民族、性的指向、障害、年齢、言語、社会的身分などに基づく不当な扱いや恣意的な区別のことである。

https://www.un.org/womenwatch/uncoordination/antiharassment.html

 つまり”正当”で”社会的合意”のある区別は差別とはなりません。

 ただ、この『社会的合意に基づく正当性』は決して普遍的なものではなく、むしろ時代によって常に変化し続けるものです。

 よって現実には移ろい続ける線引きによって常に差別が再生産されていきます。以前までは許容されていたこと、過去には当たり前であったことが現代や未来では差別となる、このサイクルは時代の変化と同様に止まることなく続いていくため、残念ながら差別がこの世から無くなることはありません。

 

”不当”の線引きに対する注意

 差別と区別を峻別するもの、すなわち『社会的合意に基づく正当性』は必ずしも明文化されるものではなく、パワーハラスメントのようにはっきりと定義されるものもあればマナーとして暗黙のうちに合意されるものもあります。

 つまり自らが『社会的合意に基づく正当性』があると判断していても、それが実のところは誤解であったり誤認であったりする場合もあり得ます。

 統計的差別はその線引きを揺蕩う分かりやすい事例だと言えるでしょう。

 例えば犯罪者の大多数は男性です。令和6年の犯罪白書によれば刑法犯検挙人員183,269人のうち、男性は143,899人、女性は39,370人で、比率としてはおよそ5:1であり、この比率から「女性よりも男性を警戒すべきだ」と考えることは極めて合理的な結論に思えます。

 これは統計的差別と言うべきか、あるいは合理的で正当な区別だと考えるかは人それぞれであり、現状で社会的合意が為されている事項ではありません。

 

 ただ、割合や比率を見る場合は母集団も考える必要があります。「男性のほうが犯罪を犯す可能性が高い」ことと「ほとんどの男性は犯罪を犯さない」ことは両立するためです。

 総務省統計局による人口推計の2025年1月報から2024年8月の確定値を引用してみましょう。それによれば日本の総人口は123,887千人、そのうち男性は60,265千人、女性は63,622千人です。

 延べ人員ですので厳密には正しくありませんが、男性の犯罪者は全体の0.24%、417人に1人の割合です。参考として女性の場合は1667人に1人の割合となります。

 計算してみると、意外と高いなとは思います。リスクヘッジとして男性を警戒することはある程度正当性を持ちそうです。

 ただ、「男性のほうが犯罪をする可能性が高い、だから男性を警戒すべきだ」とした見解は、99.76%の男性から「俺は犯罪者じゃない」と反発されるリスクを持つことも念頭に置く必要がありそうです。たとえ犯罪者の男女比が5:1であっても、99.76%の男性は犯罪を犯さないのですから。このそれぞれの比率を見て、統計的差別であるか合理的で正当な区別であるかを奇麗に区別することは難しいでしょう。

 

 このような事例の場合は、個人的な見解ではありますが統計的差別となる可能性こそをリスクと考えたほうがいいと思っています。

 「ある統計的差別を許容する」発想が許容される社会は、必然的に「別の統計的差別を許容する」ことでさらなる差別の再生産を生みかねません。それこそ「離職率は統計的に見て女性のほうが高いのだから女性よりも男性を採用しよう」なんて直球の統計的差別を許容するようなことになりかねない点を考えれば、避けたほうが安全です。

 そもそも「どの統計的差別を許容するか」と選択すること自体が差別の定義である『恣意的な区別』に相当するものであり、それを避けるためには全て許容しないことしか選択肢はないように思えます

 

結言

 差別を無くすことは難しいものです。差別は常に再生産されます。

 ただ、気を付ければその再生産速度を落とすことはできるかもしれません。そのためには「合理的で正当な区別」と「統計的差別」の線引きが曖昧な範囲についてはそれを統計的差別として廃止する方向に舵を切ったほうが良いかと思います。

 




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