【要点】 譲ることは可能ですが、特急券の買いなおしが必要かもしれません。
下記のリンクの件が話題になっているようです。たぶん話題じゃなくて、勝手に論争として燃やしている、ただのマッチポンプなだけだと思うのですがね。ここは一発、便乗して広告料を稼ぎます。
それはさておき、実際に特急列車の指定席を譲りたいという奇特な人のために方法をお伝えします。上記のリンクの記事のような単純な話ではないです。

1 特急券を交換した場合
上記のリンク内の記事で、JRの見解は「使用開始後の乗車券類を他人から譲り受ける行為は旅客営業規則で禁止しています」というのは少し不正確です。もちろん、派手にやられては困りますので、一般向けとしてはこれでいいですが。
正確には、使用開始した乗車券類は使用者が特定されるので、譲ったとしても他人が使用することはできないという表現になります。もちろん使用開始前は、使用者が特定されていない場合、譲られた乗車券類は他人が使うことも可能です。無記名証券の大原則です。
無効となる根拠は次の規定になります。
【旅客営業規則】
(急行券が無効となる場合)
第174条
急行券は、次の各号の1に該当する場合は、無効として回収する。(4)使用を開始した急行券を他人から譲り受けて使用したとき。
(9)指定急行券を指定以外の急行列車(未指定特急券にあっては、その券面に指定された列車群に含まれない特別急行列車)、旅客車又は座席に使用したとき。
(1号から3号、5号から8号および10号 略)
無効になっただけではなく、回収されます。だから、指定席車両で特急券を交換すると、交換した時点で無効になるので、座り続けるのであれば、新たに特急券を車掌から購入する必要があります。ここまでが原則です。
ただし、基準規程169条に「旅客に悪意がなく、その証明ができる場合は適用しない」とあるので、見逃してもらえる可能性が高いです。この規定は乗務員の裁量規定ではないので、害意がないことが証明できたら車掌は認めざるを得ません。この場合の悪意は事情を知っていることではなく、JRに対する害意を意味しますので、当事者間で特急券を交換して席を移った場合は、JRに損失を与える意図もなく、悪意(不正乗車の意図など)があるとはいえないからです。なお、内部規則にあたる基準規程ですが、JR側から主張することはできませんが、旅客側から主張することは可能です。ただ、約款解釈の一つとして主張できることなので、絶対ではありません。
したがって、特急券を交換しても、基準規程169条をもって車掌は認める可能性が高いといえるでしょう。
2 席を交換した場合
特急券はそのままで席を交換した場合です。
【旅客営業規則】
(急行券の効力)
第172条
指定急行券を所持する旅客は、その券面に指定された乗車日、急行列車(未指定特急券にあっては、券面に指定された列車群に含まれる1個の特別急行列車)、旅客車、座席及び乗車区間(営業キロ地帯が表示されているときは、当該営業キロ地帯内の最遠の停車駅まで)に限って乗車することができる。(2項~6項 略)
座席に限ってなので、他の座席に座っていたら、無札扱いです。もっている特急券は上記の174条で無効となります。席を譲った人も譲られた人も前記と同じように、原則は新たに特急券を買いなおす必要があります。ただし、1と同様に解して、無効とはならない可能性が高いです。
したがって、こちらも当事者が合意して席を交換したのであれば、基準規程169条を適用し、車掌は何も言わないでしょう。実際に席の交換はよく目にする光景ですし、現場では車掌も認めています。
というか、当事者が合意して席の交換したぐらいでは誰も迷惑しないし、ガミガミ言わなくてもいいんじゃないですかね。
3 自由席からきた客に席を譲る場合
(1)自分は他の席に行く
上記の2と同様に他の席に移動した時点で無札扱いになりますので、新たに特急券を購入する必要があります。購入するのは発駅ではなく、移動した直近の駅からとなるでしょう。というか、たぶん空いてないので、実際には他の指定席が空くのを待つか、自由席に移って自由席特急券を買うことになるでしょう。
譲られた側の自由席からきた旅客は指定席変更として差額を支払うことになります。
では、相手の持っていた自由席特急券と指定席特急券を交換して、席を譲ったらどうか。原則は2で掲げた174条の通り無効となりますが、基準規程169条によって認められる可能性は残されています。
(2)自分は立ったまま
譲った席には別の旅客が座って指定席変更するわけなので、当該座席はその方に売られたことになります。
譲った人が指定席車両に立ったままでいていいのか。上記の172条からは、「座席に限って」とあるので、該当の座席以外にいるという選択肢はなさそうです。もちろん自由席に行くわけにはいきません。したがって、自由席特急券を買いなおして、立っているしかないでしょう。ただ、こちらも同様に自由席特急券と指定席特急券を交換して立ったままということはあり得ますし、車掌も認めるでしょう。
4 不正乗車にはならない
不正乗車の処理は旅規267条により264条が準用されますので、当該規定を確認します。
【旅客営業規則】
(乗車券の無札及び不正使用の旅客に対する旅客運賃・増運賃の収受)
第264条
旅客が、次の各号の1に該当する場合は、当該旅客の乗車駅からの区間に対する普通旅客運賃と、その2倍に相当する額の増運賃とをあわせ収受する。
(1)係員の承諾を受けず、乗車券を所持しないで乗車したとき。
(2)別に定める場合を除いて、乗車券に入鋏を受けないで乗車したとき。
(3)第167条の規定によって無効となる乗車券(偽造の乗車券を含む。)で乗車したとき。
(4)乗車券改札の際にその呈示を拒み、又はその取集めの際に引渡しをしないとき。
(5)乗車する列車を指定した定期乗車券を使用して指定以外の列車に乗車したとき。(2~4項 略)
関係するのは3号で、参照している167条を見ると、1項7号で「旅行開始後の乗車券を他人から譲り受けて使用したとき」が挙げられていて、この場合は無効となる旨の表記はあります。しかしこれは乗車券です。急行券(特急券含む)に関する規定は参照されていません。
本来、約款解釈なので、事業者に対して厳格解釈をするのが原則であり、やりたくないのですが、乗車券に関する167条1項7号を読み替えて「使用開始後の急行券を他人から譲り受けて使用したとき」として類推適用するしかないです。この部分の準用関係は条文として非常にできが悪いので、早急に直した方がいいです。これは訴訟になったら、否定される可能性がかなり高いです。
いずれにしても、特急券や席を交換した程度では、基準規程169条の存在もあるので不正乗車にはあたらないでしょう。
不正になるとすれば、東京→出雲市の特急券を買っていて、岡山で降りるときに岡山までしか購入してない友人に特急券を譲って、当該友人が代わりに出雲市に行くとかです。