バイクとひと言で言っても、さまざまなジャンルがあって、サーキットをそのまま走れるようなスーパースポーツ(SS)からオフロードモデルまで幅広い。
そんな中で、ジワジワと人気が上昇しているのが「ネオ・クラシック」というジャンルだ。エンジンがむき出しで丸目のヘッドライトに2眼メーターと、多くの人が「バイク」と言えば思い浮かべるようなスタイルを現代の技術でデモファイしたモデルだ。
自分が以前に乗っていたヤマハSR400(2021年で生産終了:SRは昔からあるから正確にはネオじゃないけど・・・)やカワサキW800、ホンダGB350などがそれに当たる。Z900RSなど昔の名車を最新の技術でオマージュしたスタイルのバイクも、このジャルンに含まれるだろう。
若者には新鮮に映り、年配者には懐かしさを覚えるスタイル。そして、街の風景にも馴染み、アップライトなポジションで楽な姿勢で乗れるため、街乗りから長距離ツーリングまでこなすことができる。基本的に過激な性能は与えられず、乗り手を選ばないフレンドリーな味つけがされ懐が深く、肩肘張らずに自然体でつきあうことができるジャンルのバイクだ。
そんなネオ・クラシックジャンルの中で、正統派というか、ネオクラシックバイクの王道をゆくのがトライアンフのボンネビルだ。

ということで、今回はボンネビル納車の番外編。
まず、このジャンルの大型バイクを検討するなら必ず候補に入ってくるボンネビルT100とT120、そしてカワサキのW800。この3台で購入を検討している方にアドバイスを送りたい。
* * *
まず、ボンネビルにはT100とT120の2種類のモデルあり、前者の排気量が900cc、後者が1200ccで、T120がフラッグシップモデルという位置づけだ。W800はその名の通り800cc。この3台を比較検討してどれを買おうか悩む人が多い。自分もこの3台についてかなり調べたし、T100とW800は買う前に試乗もした。
結論から先に言っておこう。
T120とT100で迷ったら、あれこれ考えずT120を買っておけば後悔はない! と思う・・・
理由を説明していく。
まず、2021年モデルでそのスペック等を並べている。
ボンネビルT100(2021)
全長×全幅×全高2170×785×1125mm
ホイールベース1450mm
シート高790mm
車両重量229kg
エンジン形式水冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒
総排気量900cc
ボア×ストローク84.6×80.0mm
圧縮比11.0
最高出力48kW(65PS)/7400rpm
最大トルク80N・m/3750rpm
燃料タンク容量14L
変速機形式5速リターン
タイヤサイズ(前・後)100/90-18・150/70 R17
ブレーキ形式(前・後)Φ310mmシングルディスク・Φ255mmシングルディスク
メーカー希望小売価格:税込128万円~131万9600円
ボンネビルT120(2021)
全長×全幅×全高 2170×785×1125mm
ホイールベース 1450mm
シート高 790mm
車両重量 237kg
エンジン形式 水冷4ストSOHC4バルブ並列2気筒
総排気量 1200cc
ボア×ストローク 97.6×80.0mm
圧縮比 10.0
最高出力 59kW(80PS)/6550rpm
最大トルク 105N・m/3500rpm
燃料タンク容量 14L
変速機形式 6速リターン
タイヤサイズ(前・後) 100/90-18・150/70 R17
ブレーキ形式(前・後) Φ310mmダブルディスク・Φ255mmシングルディスク
メーカー希望小売価格:税込157万6000円~161万5600円
なんと、車体の寸法は同じ。シート高も一緒だ。違うのは車両重量。T100が229KgでT120が237Kg(2020モデルは244Kg)。
購入を検討しているとき、最初にT100を試乗した。T100に乗って感じたのは、その重量差からも取り回しもしやすく、パワーも実用域では必要十分ということ。乗りやすいしそれほど不満らしい不満は見つからなかった。たぶん20~30分の試乗なら十分と思えるはずだ。
ただし、その後に展示されていたT120に跨がったとき、スタンドからの引き起こしはズシリと重いが、重心が低く安定していると感じた。
この2台で大きく違うのは300ccの排気量の差。ただし僅か300ccと侮るなかれ。T120を購入後に実際に乗って感じたのは、そのパワーとトルクの差は数値の上でも体感的にも圧倒的な差があるということ。特にトルクの太さは格段に違う。低速からアクセルを捻ったときの加速は後ろから蹴り飛ばされているような感覚だ。
さらにミッションが5速と6速、フロントブレーキがシングルかダブルディスクの違いもある。細かく見ていけば、T120にはライディング(出力特性)モードの切替があったり、メッキパーツが多用されていたり、T120は至る所の造形がかなり凝っているのだ。
じゃ、大は小を兼ねるじゃないが、T120の方がいいじゃないの、って思っても、一番の悩み所はその価格差。約30万円。多くの人が160万(当時)を超える価格のバイクをためらいなく買えるわけではない。

やはりT120はメーカーがフラッグシップとして位置づけているだけはある。メーカーの威信をかけて作られたその意匠に、意気込みとこだわりが伺える。逆にT100は形こそ似ているが、T120から引き算してコストを抑えているのがわかる。正直、T120と見比べてしまうと、見劣りする部分がかなりある(それでも国産のネオクラに比べたら十分な品質だけど)。
よくよく比べてみれば30万円の差の価値は納得できる。
T100は慣れてくるに従い、経験上いろんな部分が物足りなくなるのが目に浮かぶ。その上があるなら、その上が欲しくなるのが人情だ。もし、T100に乗っていて横にT120に並ばれたら、きっと気持ちが揺れるだろうな。あと30万出しておけば・・・って。
自分はきっとそんな気持ちになるだろうという予感がしたので、T100を試乗してから迷わず横に展示してあったT120に決めたのだ。
この手のタイプのバイクは、もう100%趣味の世界。妥協すればきっと後悔する。
もし、この記事を読んだT100オーナーがいたら気分を悪くされるかもしれないが、あくまでも一個人の経験上の話と聞いて欲しい(ただしバイク歴は40年近い)。もちろんT100の取り回しの軽さだったり、T120より高回転まで回してパワーを使い切る乗り方が好きなら問題ない。また、小柄な人で重いバイクに不安があるならT100の方が乗りやすいと思う。
ただ、いまT120とT100のどちらかを検討していて、金銭的な部分であと30万を妥協してT100にするなら、必死に月5万円を貯めて、半年間30万貯まるまで待ってT120を購入することを強くオススメする。その満足度はその価格以上だと思う。すべての部分でクオリティーが高いのだ。ネオクラに廉価を求めても意味は無い。必要なのはメーカーのこだわりとそれを受け止めるバイカーの感性。まずは両方を見比べ試乗してみて体感すればその意味はわかる。もし、それでも価格的に厳しければT120の中古車がオススメだ。むしろ2021年モデルより2020年モデル以前の方が一つひとつパーツにコストがかかっているし、2021年モデルでオプション扱いのパーツが標準装備されていたりする。
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では、価格的にも、排気量的にもガチでライバル関係にあるボンネビルT100とカワサキW800ならどうか?
これも結論を先に言えば「好きな方を買えばいい」ってなる。
W800のスペック等はこちら。
カワサキW800
全長×全幅×全高:2190×790×1075㎜
ホイールベース:1465㎜
シート高:790㎜
最低地上高:125㎜
車両重量:226㎏
エンジン形式:空冷4ストOHC4バルブ並列2気筒
総排気量:773㏄
ボア×ストローク:77×83㎜
圧縮比:8.4
最高出力:52PS/6500rpm
最大トルク:6.3㎏-m/4800rpm
燃料供給方式:FI
燃料タンク容量:15L
変速機形式:5速リターン
ブレーキ形式 前・後:φ320㎜ディスク・φ270㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後:100/90-19・130/80-18
メーカー希望小売価格(税込):110万円
参考:webオートバイ|バイクのニュース速報と情報を毎日更新!

空冷エンジンのバーチカルツインにべべルギアなど、W800はボンネビル(こちらは水冷)と似て非なるものだ。もしカワサキのバイクが好きならなおさら迷うことはない。自分もT100とW800というより、T120とW800で悩んだ。カワサキは好きなメーカーだしW800の青いタンクのカラーリングは美しいとも思う。それにW800はETCやグリップヒーター、センタースタンドが標準装備でコスパもいい。何より価格が50万円も違うので一時はW800に傾いた。
ただ、一つどうしても残念なところがW800にある。乗っていて常に目に入るメーターの作り。


PHOTO:webオートバイ|バイクのニュース速報と情報を毎日更新!
メーターは運転しているとき常に視界に入るものだし、T120のメーターは文字盤のデザインやメーターリングも美しく見ていて正統派たる威厳を感じる。それに比べるとW800はどうしても見劣りしてしまう。正直安っぽいのだ。さらにT120の液晶部分はかなり多機能だが、W800は表示もシンプル。このあたりがW800のとても残念なところ。もちろんT120の決め手となったのはこれだけではないが、価格に見合うパーツと考えれば仕方ないのかもしれない。
ただ、W800の利点は国産バイクであるが故、補修部品等も手に入りやすいし部品代も輸入車に比べれば安い。初期費用と維持整備等のランニングコストを考えれば、W800は十分魅力的であることは間違いない。もしT100とW800で選択するのであれば、自分は迷わずW800を選択するだろう。この辺は好みの問題だったり、コストパフォーマンスを重視するかでも変わってくる。
今、若い人が革ジャン羽織ってW800で颯爽と走る姿をみたら「わかっているなぁ」と感心してしまうだろう。
一方でトライアンフが好きだけど、T120ではオーバースペックだったり、もう少しカジュアルに乗りたいのであればT100という選択もありだと思う。
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個人的な主観で好きなことを書いたが(気に触ったら許して欲しい)、大型バイクの醍醐味という部分では、ボンネビルT120はかなりオーナーを満足させてくれるはずだ。
繰り返しになるがバイクは趣味だ。実用性で選んで乗るんであれば125ccのスクーターが一番コスパが高い。便利で維持費も安くすむ。
趣味で乗るバイクは、自分が好きと思ったバイクに乗るのが一番だ。その意味でも後悔しないバイク選びをして欲しいという思いを込めて記事にしたためた次第である。
【追記】
早いものでボンネビルT120に乗って3年が過ぎた。やはりいいバイクである。そのまとめ記事をアップしたので、こちらも参考にしていただければ幸いである。
ちなみに、SSなどのスポーツバイクは乗り手と乗るシチュエーションを選ぶので慎重にね。
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【参考】
たまたま、ボンネビルT100の試乗記事を見つけたのでリンクを貼っておく。やはり軽さ以外はあまりメリットがないような書きぶりだった。むしろ、より安価なストリートツインやアップマフラーが個性的なストリートスクランブラーのほうが魅力的だと。自分もストリートスクランブラーのスタイルは冒険心を湧き起こす感じが好みだ。

