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負けヒロインが多すぎる! (5) 感想

1~4巻もたいへんおもしろかったが、ブログ記事にすることはなかった。5巻は格別面白かった。当然ネタバレはあります。

 

全体感想

膨らんでいた期待の更に上をいく完璧なお話に仕上がっていた。面白すぎて2周したし、電子書籍で買っていたのに紙の本も買った。登場人物それぞれの思いがしっかりつたわってくるうえ、構成も美しい。美しい構成を活かして、さらに登場人物たちが飛躍する。相互作用が完璧だ。

物理であると、読みたいところをすぐに読み返せていいね

 

前段:1~4巻まで

膨らむ佳樹への期待

1巻から佳樹の存在感は際立っていた。佳樹は中学生であるため、基本的に高校や文芸部のイベントには参加できない。そのため1~4巻で描写されるのはメインで展開されるシーンの幕間、ぬっくん*1が家で考え事しているシーンが多い。

そんなあまり大きくない扱いだが、佳樹の行動はメインストーリーの文芸部女子に負けないくらい強烈なインパクトを残す。愛が強すぎるブラコン妹っていうのは言ってしまえばよくいるキャラなのだが、積極的すぎるスキンシップの他にもスマホのストレージを共有しているところなど印象に残るシーンが多い。もちろん物理的なストーカーもする。

そして、ぬっくんもシスコンなんだよね。アニメだとあまり強調されていなかったが、原作だと1~4巻までの時点でぬっくんのシスコンぶりが描かれている。佳樹のファンクラブを認めないなど。佳樹の異常行動もぬっくんが淡々と流しているところがまたシュールで面白い。

そんな佳樹が表紙を飾る5巻は面白いに違いないと、読む前から期待していたものだ。

お兄様の恋愛推進派

そんなお兄様LOVEな佳樹だが、兄が女性と近づくのを基本的には推進してきた。勝手に八奈見さんからのLINEに返信するし。もちろん無条件で兄を手放す気ではなく、面接が必要!だの温水流を叩き込むなどと息巻いてはいるのだが、兄に友達や彼女ができることを歓迎している。*2

上記の推進姿勢は佳樹の過剰なスキンシップとは相いれない側面だ。結局佳樹はどうしていくのか?というのは5巻読む前から疑問であった。

 

5巻の内容

あの佳樹が他の男にチョコを……!?

佳樹が同じ中学の橘君に告白するのでは?という疑念を軸に話が展開していく。今までのお兄様LOVEっぷりを見れば、佳樹が他の男子にチョコを渡すなどありえない、ぬっくんの勘違いだろうと思うのだが......。それにしては疑念が深まることばかり起きる。豊川稲荷のシーンなどは、いったい佳樹はどんな目的でぬっくんと八奈見さんの写真を撮っているのかわからず。単純な勘違いではなさそうな雰囲気が深まるいい展開だった。自分の失恋と佳樹の恋愛を重ねた、八奈見さんの"格"を感じるシーンも。存在感がすげえ。

悪いイタズラ妖精

朝雲さん大暴れの中学校潜入作戦など、真相を確かめるための行動が空振りし続ける中。まったく自然でないタイミングで佳樹の真意を聞き出すことになる。が、佳樹はぬっくんの策動を悪いイタズラ妖精と表現した上で、「だからそんな悪い子には――教えてあげません」と拒否する。このシーンは佳樹の末恐ろしさが出ているのと同時に、怒るどころか逆にうれしい気持ちも出ているはずなんだよね。こんなにぬっくんが佳樹のことを追いかけてくれて嫌なはずがない。シチュエーション含みで最高のシーンだ。

ゴンちゃんへのお節介と佳樹自身

もちろん上記はミスリードで、橘君"が"甘夏先生に告白することになる。結局勘違いでした……で終わることなく、ここから橘君のことを好きなゴンちゃんの気持ちと、お兄様のことが好きな佳樹の気持ちを重ね合わせたシーンがぶつかる。そもそも感情的になる佳樹が珍しかったうえ、佳樹がゴンちゃんに繰り出すお節介はすべて"いずれ来る兄との離別"に焦る佳樹自身の感情という構成が最高に美しい。「兄妹なんていつか離れ離れになるんだよ!」「お兄様がいて、それだけで佳樹はいいの!」と自分に言い聞かせる佳樹のなんと痛々しいことか。

ようやく実現した兄妹間の会話

ぬっくんは佳樹の気持ちを勘違いしてイロイロ疑ったことを謝り、佳樹はわざと勘違いさせてしまったことを告白する。兄が変わっていくのがうれしい一方でさみしい。今まで、兄の恋愛を推進していたのも本心であり、かつ兄がどこかへ行ってしまうのを寂しがる相反する気持ちも本心なのだ。そのもやもやを、橘君に何もしないゴンちゃんへぶつけてしまった。これは悪いことだ。

家族アルバムを見ながら、兄はゴンちゃんと橘君の2人しかわからない積み重ねを尊重するように諭すいっぽう、ぬっくんと佳樹の積み重ねも同様に変わらないということを示す。この解決策は、豊川稲荷での八奈見さんとの会話を発展させたものだ。もっというと、1巻で八奈見さんの袴田への思いを決めつけてベラベラしゃべっていた失敗を踏まえて、このぬっくんの諭しにつながったのではないか。

しっとりと一件落着……?

これから2人が離れ離れになるかもしれないけど、それまでの積み重ねを大切にしていこう。兄妹として健全な関係を築いていこうというぬっくんの発言で今回のお話は決着を迎えたはずだった。佳樹は"本命の妹チョコ"(?)をあくまで妹として渡す。ここまでは妹として振舞っていく覚悟を決めたようにみえたが、突然佳樹の方からキスをする。ぬっくんはこれも妹としてのイタズラだと思っていたようだが。

読者としてもこれでこのエピソードはしっとり終わるんだな……。と思うわけ。生まれながらに敗北が確定している実妹という立場の佳樹はやっぱり負けヒロインなのかと。

壁の破壊

次の日の文芸部。文芸部女子たちに事の顛末を話している所に、佳樹が堂々と乱入。「過去の積み重ねの先にあるのが今なんです。可能な限り素敵な過去を積み上げていこうと決めました」といいながら部室で普段通りのスキンシップを取り、なんやかんやで文芸部が大混乱に陥る中「これからもずーっと一緒ですよ」と囁く。

これまで精神的には兄と妹という立場から自ら壁をつくり、物理的にはまだ中学生で同じ学校に通えないという壁があった佳樹。その2つの壁をいっきにぶち壊し、これからヒロインとして本格参戦すると宣言する姿。これからこの物語はどこに向かっていってしまうんだ?というわずかな困惑と、これこそ佳樹だ!ますます物語が面白くなっていきそうだ!という期待が増すラストだった。

結び

この5巻について、もちろんお話の構成は美しかった。でもそれ以上に、登場人物たちそれぞれの思いやパワーが伝わって来る。この登場人物の思いやパワーが本シリーズの魅力なのだろう。この先のお話も楽しみだし、5巻の内容がアニメ化するのも待ち遠しい。

*1:主人公の温水和彦。佳樹と苗字が同じでややこしいのでぬっくん呼びにしておく。"和彦"なんて朝雲さんしか呼ばないし。

*2:幕間の話で、お兄様が遠くに行ってしまいます……と葛藤を漏らすシーンアリ




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