神話体系や古代の魔物に詳しい人もいるだろうけど、自分が思いついたことを書いてみます。 有翼の獅子はこの物語をどう読むかに関わってくる。
ダンジョン飯 第22話
ライオスは狂乱の魔術師との対話を望むが、今はその術がない。 そのため、迷宮に囚われる翼獅子に会うミッションが示される。 物語を方向づける重要な回になりました。
このあとグリフィンの話になるのですが、変ですよね。 マルシルが大きなトリの足跡を見つける。 「これはファリンじゃないか」と言うのですがライオスは否定します。 で、実際その足跡は魔物のグリフィンだった。
でもグリフィンの下半身は「獅子」です。 センシを捕まえるとき鷲のような足をしているけど、使い魔を蹴る後ろ足はライオンでしょ? なら、足跡にも後ろ足がつくから、それを見ればファリンではないとわかるはず。 ライオスのラクガキのようなファリン像でも、後ろ足は鳥足になってます。 ここはちょっと変だな、と思いました。
理由はこれから出てくると思うけど。
有翼の獅子
迷宮の最深部にいるライオン。 深層心理学的。
まず思い浮かんだのが「ナルニア国物語」の獅子アスランです。 イギリスに住むペベンシー兄妹がタンスを通って異世界に行く物語。 今ある「異世界転生もの」のご先祖ですね。 その異界を統治する存在がライオンの姿をしています。
作者のルイスが「イエスが黙示録で『ユダの獅子の子』と呼ばれることに基づく」と答えているように、ライオンはイエス・キリストの象徴を担っています。 彼がペベンシー兄妹を「ナルニア国の王」とするために助力する。 ライオスが迷宮の王となるとしたら、このアスラン的存在が有翼の獅子でしょう。
でもアスランには翼がありませんでした。 てっきり羽根が生えてるものだと思ってた。 いま調べたら付いてないです。 おかしいなあ。 空を駆け回っていた印象がするけど。
というわけで今度は「有翼の獅子」を調べてみた。 するとヴェネツィアにいました。
「ベニスの商人」とか「ベニスに死す」とかぁ、なんで「ヴェネツィアに死す」じゃあないんだよお、の「ヴェネツィア」です。 ヴェネツィアの守護聖人がサンタ・マルコで、マルコを表すシンボルが「有翼の獅子」とされている。 しかも片手には「本」を持っています。 マルコは最初に福音書を書いた人物なので「本」を開いている。
でもそれは後付けでしょう。 紀元前から「有翼の獅子」はこの街の守り神とされていたようです。 トルコの都市タルススに起源があるらしい。 ということはトルコ人がイタリア半島に入植したのでしょうか。
メソポタミア神話に現れる「ラマス」が人間の顔をしているものの、ライオンの身体に鷲の羽根を持ち、この造形の源流と思われます。 インドの「ラーマヤナ」にもシヴァ神の化身として「シャルベーシャ」がいる。 これが沖縄に伝わりシーサーとなったという。 狛犬はどうなんだろう。 羽根が生えているのかな。
国会議事堂の入口にも「ヴェネツィアの獅子」のレリーフがあり、出入りする者を見張っているそうな。 聖域を守る門番なのでしょうね。
エディプス
エディプスに謎を掛けたスフィンクスは「女性の顔」をしています。 こちらはファリンの姿ですね。 ファリンは迷宮の門番となった。
「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足。これは何か」。 くるぶしに穴を開けられ捨てられたエディプスに「足」の謎を解かせるのはなぜでしょう。 単純に「人間」の話をしているのではない。 エディプスは「答え」を間違えたのでしょう。
では、何が正解だったのか。 それを知る者だけが聖域への入場を許される。
ライオスには「ファリンを人間に戻すとはどういうことか」です。 それが「人間とは何か」の謎になっています。 「4本足」を減らしたら「人間」なのだろうか。
黄金郷のところで「正気を保つ」の話が出てきます。 不老不死になったヤアドたちが、それでも仕事をし食事の真似事をするのはなぜか。 それは「食べること」が「人間であること」に繋がるからです。 人が人であるために料理をする。
まさか、そんな哲学が「ダンジョン飯」にあるとは思いませんでした。 物珍しい「ゲテモノ食い」のマンガだと思っていた。 でもここまでライオスたちが「正気」を保っているのはセンシの料理のおかげです。
そうなんだよなあ。 今回の見どころはマルシルが使い魔を操るところだけど、そのあとライオスが使い魔を春巻きにしてしまう。 センシだったら料理しなかったと思う。 マルシルの気持ちに配慮するから。
「正気」とは言え、ライオスの「正気」は怪しい。 使い魔を魔改造して「ギガダブルヘッドフレイムアイスドラゴン」と名付けてしまうようじゃあ情けない。 それじゃあ、ただの怪獣好きのお子ちゃま。 もうちょっと成長しないと。
それで、そのための課題がこれからやってくるわけで。
まとめ
とはいえ、まずはセンシから。 ここからキャラの深掘りが進んでいきます。
ライオンと魔女―ナルニア国ものがたり〈1〉 (岩波少年文庫) 単行本 – 2000/6/16