将棋界で少し世間を賑わせるニュースがいくつかあった。
直近で言うと、8月16日(土)に行われたJT杯二回戦渡辺明九段VS山崎隆之九段の公開対局で解説(聞き手)を務めていた竹部女流が失言し、今後1年間の公務の活動自粛を宣言するという出来事があった。
この対局は、先日のA級順位戦を体調不良で欠席し不戦敗となった渡辺明九段が復帰できるか、負傷した膝が正座対局に耐えられるかと言った点が事前に注目されていたが、思わぬところで注目を集めることになってしまった。
将棋は山崎九段が優勢に進めるも終盤で渡辺九段が逆転し見事勝利を飾った。これも竹部女流の失言が影響したのではないかという見方もある。
何にせよ、竹部女流は9月からアベマで放送される将棋ドラマ「ミスキング」の監修として能年玲奈(のん)とラジオに出演したりしており、今後もドラマ関連での広報活動があったと思われるので、そっちにも飛んだ味噌をつける次第となった。
残念としか言いようがない。
この件についてのコメントは以上。
それからちょっとした騒ぎのようなことになっている別件があり、それが、さる6月に行われた将棋連盟の総会において、女性棋士誕生のための新制度の提案がなされ、それに対して藤井聡太七冠が「物言い」をつけたという報道である。
これは元々『週刊新潮』8月7日号に掲載された記事が元で、後にネットニュースになったことで広く知られるようになった。週刊新潮といえば、2015年には叡王戦の発足に関して事実を曲げた記事があったとして連盟から公式にコメントを出す事態に至ったこともあり、今回も誤解を与えるような書き方がなかったともいえない。
そもそも総会における各棋士の発言は他言無用とされていて、報道関係者に漏らしたのは誰かという問題もある。
藤井聡太七冠の発言についても、決して提案に対する批判というニュアンスではなく、単なる確認の趣旨であったという別棋士のコメントもある。藤井七冠が新制度に不満を抱いていることを匂わせるような記事の書き方はミスリードの可能性が高い。
とはいっても、藤井七冠の「棋力の担保はあるのか」という発言自体は正鵠を突いたものであり、心中疑問をふとこっていた他の棋士たちや、奨励会で涙を呑んだ元奨らの声を代弁する見事なものであったと思う。
仮に新制度により女性棋士が誕生したとしても、実力が十分でなければその後の棋士生活は「だから言わんこっちゃない」という一層厳しい目に晒されることは必至である。やはり棋士となる以上は男女の別なく同じルートを辿るべきではないのか、という観点は軽んじるべきではない。藤井七冠の発言は、棋界全体の将来を考えてのド正論であり、一部で言われるような女性蔑視のニュアンスを含むものでは微塵もないことは自明である。
この報道に初めて接した時も、藤井七冠の慧眼と胆力に改めて敬服する思いが沸きこそすれ、間違っても対立や批判を煽るような見方はあり得ないと思った。
一方で新制度を提案したと言われる羽生元会長の思いも分からないではない。女性棋士の誕生が将棋界の盛り上がりにつながるというのも確かだろう。しかし繰り返すが、「別ルート」による女性棋士の誕生は、当該棋士にスティグマを背負わせることにもなりかねないのを危惧する。この件に限っては、藤井七冠の正論の方に重みを感じる。
今日も藤井聡太七冠は永瀬九段と王位戦第四局を戦っている。先のJT杯と同じ8月16日(土)はアベマトーナメントで深夜まで激闘した直後である。
一ファンとして、この青年が今将棋界に存在することの僥倖を感じざるを得ない。