
「花」や「満ちてゆく」などのシングルを出していた時は、宇多田ヒカル「BADモード」のような日本詞と英語が半々くらいのアルバムを作るべきなのかもと思っていたが、中途半端なことになるのではとの思いもあったという。
「本当に自分が死ぬ前に挑戦してみたいことに挑戦したほうがいいのかな」と考えた時に、英語だけのオリジナルアルバムを完成させることに思い当たり、その挑戦に一歩を踏み出すことにした。
「後戻りできない」というのは、もし英語だけのアルバムを作るとなったら、本当に自分が尊敬してるマイケル・ジャクソンやマライア・ キャリーのようなアーチストと同じステージに立つことになり、もう何の言い訳も通用しなくなると考えたからだ。
それは「本当に自分が聴いてきたものと同じか、それを超えるようなものじゃないと出す意味がない」というプレッシャーでもあった。
話は変わるが、現在風はヨーロッパをツアー中である。
7月1日のベルリンを皮切りに、ロンドン公演や各地のジャズフェスに参加して海外の一流ミュージシャンと同じステージで演奏している。
その演奏を撮影したファンによる動画がたくさん上がっており、日本に居ながらほぼ全容を知ることができる。
本当はこのツアーに英語のアルバムを間に合わせたかったのだろうが、予定が狂ったと本人もMCで言っていた。
見た感じ、日本からの「追っかけ」ファンも一定数いるものの、特にフェスでは現地の聴衆が大勢詰めかけていて、風の演奏を楽しんでいるのが分かる。
アルバムより先にライブで「言い訳が通用しない」状況を迎えたことになるが、まずは順調といってよいのではないか。
インタビューに戻ると、風が渡米して挑んだ「歌詞セッション」とは、風がフックとなる言葉と鼻歌で歌ったものを用意して、それを作詞するソングライターと話し合いながら作っていくという作業だった。
歌詞を一緒に作るとなると、特に風の場合、価値観や人生観を共有できるようなパートナーでないと難しい。
このときの3人とはいずれもいいセッションができたが、シャイ・カーターとは年齢や人種の壁を越えて友達になれたという。彼が書いてくれる言葉、歌詞が凄くしっくり来て、自分の延長線上にいるような人が現れてくれたと思った。
歌詞セッションの後には、2024年6月にロブ・バイゼル、 サー・ノーラン、グレッグ・カースティンとアレンジセッションを行った。でき上がったデモに肉づけをする作業で、前回のコライトとはまた違うものだ。
Rob Bisel

グラミー賞4回受賞。SZA、ドージャ・キャット、ケンドリック・ラマー、トラヴィス・スコット、ハリー・スタイルズ、ドン・トリバー、ジェニー・キムなどのアーティストと仕事をしてきた。
2本目のインタビューはここで終わっているが、2024年10月、NHK総合「NHK MUSIC SPECIAL 藤井風〜登れ、世界へ〜」という特番が放送された。
この番組では、6月にリパブリック・レコードと契約したが、英語詞の曲はまだ一曲も完成しておらず、スタジオで苦悩する風の姿が捉えられていた。
8月にいったん帰国して日産スタジアムでの大規模ライブを行った後、9月に急遽予定を変更してロサンゼルスに戻り曲作りに取り組む。1週間で2曲のデモ音源を取るところまでこぎつけたが、次の日は音楽を作らずスタジオを出て外を彷徨う姿があった。
その後には間髪入れずアジアを巡るツアーに旅立ち、ライブ後は再び曲作りをしにスタジオに入る。
ここでもう一人の重要なパートナー、250(イオゴン)が登場する。

韓国のプロデューサー/DJ。ジャンル音楽としてのポンチャックのルーツでもあり、韓国大衆音楽の底流に脈々と息づいてきた「ポン」なるものを探究しながら、究極的には様々な世代を一つにするダンス音楽を目指し、4年の歳月を費やして完成させたデビュー・アルバム『ポン(ppong)』を2022年3月にBANAからリリース。NCT 127、ITZY、BOAなど、K-POPの楽曲プロデュースでも知られ、2022年8月にHYBE傘下の新レーベル、ADORから電撃的なデビューを果たし、世界の音楽シーンを席巻しているガールズグループ、NewJeansの楽曲プロデュースを手がけて絶賛を浴びた。