朝日新聞社説 斎藤兵庫知事 組織の長として失格だ
2025年3月29日 5時00分
組織に問題が生じた際、独立した中立の立場から調べてもらう。調査結果に基づいて関係者の責任を明確にし、必要な対策を講じて、信頼を回復していく。そのために第三者委員会はある。
しかし兵庫県の斎藤元彦知事は、第三者委が認定した自身の職員へのパワハラ行為を謝罪しつつ、自らの処分は否定。知事を告発した元県民局長の男性への対応が「違法」とされたことには「見解が違う」と受け入れを拒否した。あまりに恣意(しい)的で、第三者委の意義自体を否定するとも言える、看過できない事態だ。
兵庫県の第三者委は、斎藤氏のパワハラ行為として10件を認定した。斎藤氏は関係職員に謝罪したが、今後の対応については「襟を正し、研修などを受けながら、風通しのよい職場作りに向けて努力していく。それが私の責任の果たし方だ」と語った。
職員のパワハラ行為については、懲戒処分指針に基づき減給などの処分がされてきた。自身への処分に触れない斎藤氏に対し、県庁内で不公平だとする声が出ているのも当然だろう。
斎藤氏は、男性が作成・配布した告発文書を自ら入手し、側近幹部に調査を指示した。それ以降の県の男性への対応に関し、第三者委報告書は事情聴取や懲戒処分の一部について、公益通報者保護法に照らし「違法」と断じた。
斎藤氏は「各種論点には異なる考え方もある」「第三者委とは見解が違うところがある」と報告書を認めず、「処分は手続き、内容とも適正だった」と従来の主張を重ねる。第三者委の提言を受けて公益通報保護の体制整備を進めると説明し、「報告書全体をしっかり受け止めていると考えている」とも語った。
兵庫県の混迷は1年前、斎藤氏が会見で男性を「うそ八百」「公務員として失格」と非難したことから始まった。第三者委はその発言を「パワハラに該当する」と批判。斎藤氏は「強い発言だったことは反省している」としたが、撤回の意向は示さない。
この人には、言葉や論理が通じない。そう思わせるようではトップの資格はない。
報告書への姿勢について、斎藤氏は「さまざまな方から意見をうかがい、最終的に知事である私が見解を判断した」と説明するが、「その内容や手続きの詳細についてはコメントを控える」という。
報告書を「真摯(しんし)に受け止める」と繰り返しながら実質的に拒否する姿勢は、もはや独善と言っても過言ではない。斎藤氏こそが「知事として失格」と言うほかないだろう。

