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『生きとるわ』時系列考察

前回の記事で、又吉直樹の小説『生きとるわ』の小説内出来事について時系列表を作成してみた。

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この記事で書いた通り、この小説の始まりは阪神タイガースセ・リーグ優勝の夜で、最後に岡田が横井と会う場面は阪神タイガース日本シリーズ優勝の夜のことになっているのだが、現実の日付(前者が2023年9月14日、後者は同年11月5日)に当てはめていくと、どうも整合しないところが出てくる。

もちろん小説というもの自体がフィクションなので、現実の日付に整合しないとしても作品として何の問題もないのだが、個人的にどうしてもリアルに寄せて行きたい思いがあり、考察を重ねていくことにした。多少無理な部分もあるかもしれないが、一つの読み方としてご容赦願いたい。

なお、時系列に関する考察のみに絞ったため、具体的な内容についてのコメントは極力排してある。

まずスタート時点が阪神タイガースセ・リーグ優勝した日である2023年9月14日であることには異論はないものとする。

この小説の連載第1回が掲載された『文學界』2024年1月号の目次には、こう書かれている。

又吉直樹 生きとるわ
短期集中連載第1回
阪神セ・リーグ優勝を果たした夜、借金まみれの旧友が道頓堀に現れた――

そして小説の書き出しにも、

九月半ばのこの街で長袖を着ている人間は自分のほかに誰もいなかった。

とある。

大倉、広瀬とスナックで数年ぶりに再会し、道頓堀で横井と出くわすまでの冒頭の場面の次は同じ電車で帰途に就いた妻と一緒に帰宅する場面。これは同じ日と見てよいやろう。

次が、大倉の店で横井の近況を聞かされる場面。9月14日から数日後のことと思われる。

ここ数日の間に大倉の耳に入った横井に関する噂を聞くことになったが避けようがなかった。

それから数日後、横井から謝罪のメールが届く。

横井との話し合いのために大倉が公民館に併設される小体育館を会場に設定する。

集合時間は午後1時。参加者は横井に金を貸している人間で、20人近くが集まった。

昼間の時間に人が集まれるという設定を考えると、9月23日(土)または24日(日)の週末と考えるのが妥当やろう。

次の場面は岡田の沖縄出張。大手企業の子会社の監査のためで、早朝に伊丹空港を出発して那覇空港から現場に直行している。監査の一日目が終わる。

翌朝、ホテルをチェックアウトしたのは昼前やったが、子会社での講評会までは時間に余裕があったので国際通りまで歩くことにした。十月に入ったとはいえ那覇の街をスーツで歩く人は自分のほかに見当たらなかった。

監査を行うのは平日やろうから、一番早くても10月3日(月)。二日目は10月4日(火)ということになる。

次は、京阪門真市駅から歩いて15年ぶりに横井の実家を訪ねる場面。具体的な日付を示す描写はないが、ビールを勧める横井の父親に対して「まだ仕事が残ってるんですよ」と岡田が言うことから、平日であり、一番早くて10月5日(木)のことやろう。

と考えていたのだが、10月4日(火)那覇空港から伊丹空港に戻り、その足で横井の家に向かった可能性の方が高いと思った。というのは、次の場面が自宅に戻っての妻との会話なのだが、妻の第一声が「沖縄では美味しいもの食べれたん?」なので、沖縄出張に行ってからこのときまで会っていなかったと考えるのが自然やから。

しかしここで不都合に直面する。妻におやすみ、と言うて風呂に入る準備を始めた岡田が、「次の日は日曜日やというのに上司から着信があった」と言っている。

この妻との会話のあった日に着信があったのなら、この日は土曜日ということになる。

10月で最初の土曜日は10月7日(土)なので、沖縄出張の日は、10月6日(金)~7日(土)やったということか。まあそれでも不都合はない。ここで第1回終わり。

 

連載第2回は、事務所で資料をまとめている岡田のスマホに浦上香織から連絡が来る場面で始まる。この日付が問題になる。その日に二人が待ち合わせた喫茶店「止まり木」には先日のスナックにいた「定ちゃん」もいて、店内に設置されたテレビで競馬中継を見ている。

大阪で競馬のテレビ中継をやるのは関西テレビ日曜日15時00分から16時00分の枠か、サンテレビ 土曜日15時00分から16時00分の枠のいずれかである。

沖縄出張から戻ったのが10月7日(土)とすれば、この日は10月8日(日)で、定ちゃんが見ていたのは関西テレビの中継である。とすれば岡田は日曜日に事務所に出勤して仕事をしていたということになる。

岡田は会計士であり日曜日に事務所に行って自分の仕事をすることに特段の不自然さはない。雰囲気的に休日に妻と自宅で二人きりで過ごすのは気まずそうでもあるし。

ちなみに、この日のレースで定ちゃんが賭けた真弓(7番)と岡田(16番)の馬は「トキメキ」(7番)とカイザーメランジェ(16番)で、それぞれ18頭中15位と17位であった(「リトルバスタイガー」という馬はいない)。

ここから話は現在時制を離れ、岡田と横井らの高校時代の回想に入る。これが第6回まで続く。

 

連載第7回は、岡田が高校の映画部の顧問やった廣野先生の油絵の個展に行くところから始まる。岡田が初めて降りる寂れた駅からタクシーで個展会場である古民家の一部を改築して拵えたギャラリーに向かう。

この日付が問題になる。「仕事帰りやったので、手ぶらで来てしまってすみません」との岡田のセリフがあり、「日が暮れた住宅街を駅に向かって歩き出した」との描写があるが、先に述べた通り岡田は休日にも仕事に出ているから、これだけでは決め手がない。

10月8日(日)に「止まり木」で香織と会って店を出た後に、廣野先生のことを思い出して個展に向かったという可能性も捨てきれない。

そして次に、「クライアントの会社で期中監査」を終えて大倉と広瀬に会った西心斎橋のスナック(ショパン「ワルツ」という名前だとこの日に判明)に寄る場面が続く。

この日付が問題になる。このスナックに来ていた定ちゃんがママにクライマックスシリーズ阪神戦始まるから」と言い、ママが「ほんまや、来週からか」と答える場面がある。

この年のクライマックスシリーズ阪神戦は10月18日(水)から始まった。だからこの会話が交わされたのは10月9日(月)から10月15日(日)の間である。

この年の10月9日(月)はスポーツの日で祝日のため、この日に会社の期中監査があったとは考えにくい。したがって一番早くて10月10日(火)のことやろう。

「ワルツ」に横井を呼び出すことに成功するが、肝心の話ができなかったため、浦上香織に頼ることにする。翌日、「止まり木」で香織に会う。「昨夜のことを掻い摘んで香織に聞かせる」とあるので、この日付が10月11日(水)と推察できる。

この日の夜、香織に連れられて入ったバーで泥酔し、知らない部屋で目覚め、明け方に帰宅する。ここで第7回終わり。

 

第8回は、香織と飲んで記憶をなくしたまま事務所に行って監査調書を読んでいるところから始まる。これは10月12日(木)のことやろう。

事務所から帰宅して、妻との話し合いがあり、妻が実家に行くと言って出ていく。一人で自宅で飲んでいるところに香織からメールがあり、香織のいる店に行く。

このときのタクシー運転手が「来週から阪神6連戦ですね」と言っていて、これは定ちゃんも言っていたクライマックスシリーズ(10月18日~)と同じ。

 

第9回は、香織と一緒に狂態の一夜を過ごす場面から始まる。そして、

妻にメールを何度か送ったが、返信がないまま数日が経っていた。

覚悟を決めて妻の実家に電話をかける。電話に出た妻の母親の、「有希、今日は土曜日やから仕事休みで家にいてるんやけどね」との台詞がある。

この日付が問題となる。

前回の記事ではこれを10月21日(土)のこととしていたが、妻が出て行った後の狂態の一夜を10月12日(木)とすれば、「数日」という描写が聊か気になるも、10月14日(土)であることも可能と見た。これにより後の不整合性がかなり解消されることになる。

妻の実家を出て、公園で横井に長文のメールを打ち、タクシーで自宅に戻る。横井からの簡潔な返信を見たところで第9回は終わる。

 

第10回は、難波駅から歩いて大倉の店に向かう所から始まる。

この日付が問題となるが、前回の話からの続きの行為と見てよいだろう。つまり10月14日(土)である。大倉の店を出てワルツに寄り、定ちゃんとママの邪気のないやりとりをみて己を省み、この日は終わる。

次の場面は、仕事終わりに船場センタービルでお土産のカステラを買い、横井の実家に向かうところである。この日付は、「仕事終わりに」という表現が気になるが、10月15日(日)とみる。その方が後の不整合性を回避できるから。横井の実家から去ってミナミの知らない店で一人酒を吞み、この日も終わる。

 

第11回は、自宅で遅く目覚めて出社すると午後になるが、この状態で会社に顔を出すのは得策ではない、という岡田の独白から始まる。意を決して高校の龍先輩に借金の依頼をするため電話をする。この日付は、10月16日(月)である。

龍先輩は、「来週に十三でアコースティックライブすんねん。もし時間あったら来てくれへんかなと思って。」と岡田に言う。この「来週」というのが悩ましいが、一番早いタイミングを考えると、10月22日(日)ではないやろうか。月曜の電話で次の日曜日を来週と言うのはちょっと苦しい気もするが、後の整合性のためそうすることにしたい。

それで、10月22日(日)のライブに行き、ライブ後に龍先輩と二人きりで語り合うことに成功するが、借金は断られる。(ここから第12回)仕方なく大倉の店に向かう。いよいよ手詰まりになり自暴自棄の岡田は香織の部屋に行ってハロウィンのコスプレをして痴態を晒す。

10月23日(月)、自宅で二日酔い状態の岡田に横井からメールが届く。「止まり木」に呼び出され、香織との画像を見せられ、300万要求される。

翌朝(10月24日(火))、顧客の山下夫人から現金300万を税務修正申告を騙って受け取り、(ここから第13回)そのまま横井の指定した口座に振り込む。妻からやり直すことにしたと連絡があり、家に戻ってくる。

翌日(10月25日(水))出勤途中に香織から「取り返しのつかないことになるから」すぐに会いたいと連絡が来る。

翌日(10月26日(木))午後に香織の部屋を訪ね、マンションを出たところで三人組の男につかまる。

数日後、取引先の現場から会社に戻る途中、「先日の三人組の一人」弁護士の毛利から200万の示談金を要求される。この日付はいつか。27日(金)では早すぎるし、28日と29日は土日なので出先の仕事があるとは考えにくい。つまり、10月30日(月)しか考えられない。

10月31日(火)、岡田は妻の出勤を待って、自宅のリビングから、午前10時きっかりに山下夫人に電話する。しかし200万を再度騙し取る試みは失敗する。先週末(10月28日、29日)に山下夫人の息子が税務署に確認して嘘がばれたのやった。

 

第14回の冒頭、毛利にもう少し待ってくれと電話するがあっさりと断られ、話し合いの日時がメールで送られてくる。これも10月31日(火)のこと。話し合いの日時は「想像していたより急やった」。

話し合いの日が来るまで、落ち着かない時間を過ごした。

この日付が問題となる。11月1日、2日では早すぎる気がするから、11月3日(金、文化の日ではないやろうか。先を急ぐと、話し合いが終わって家に戻り、翌朝(11月4日)に妻が出て行き、その日の夜に離婚届を出すのだが・・・

もうこの時点で、阪神タイガース日本シリーズ優勝(11月5日)は翌日に迫っており、残りのイベントを入れる余裕がないのである。

ちなみにこの調子で行くと、「数日後」に広瀬に呼び出され、大倉が入院したことを知る。さらに香織と横井がグルになって騙していたことを知る。

それからミナミで横井を探し回る。

朝まで街を歩きながら横井を探す生活は、すでに三日目に突入していた。

それでタイガース優勝の日に横井を見つけるのだが、どう考えても、11月4日からこの日までに数日+3日が経過している。

無念、万事休すか。

 

___この問題を解決するには、どうしてもある部分を変更する必要がある。

そう、龍先輩のライブを、10月22日(日)ではなく、10月17日(火)にする。

それで、龍先輩のセリフを、

「あんな、急な話で悪いねんけど、明日、十三でアコースティックライブすんねん。もし時間あったら見に来てくれへんかなと思って」

に変更すれば、奇跡的に整合するかもしれない・・・

 

そしてこの記事は以下につづく

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