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呟くようにしか話せない



最近コロンボよりもトランプの方が面白くて困っている。

先月からドナルド・トランプについて調べている。必要に迫られてというわけではなく、単なる好奇心である。これから4年くらいは、世界はこの男に振り回されるのを覚悟しなければいけない。8年前(2016年)にトランプが大統領になったときには、アメリカの知識人たちは世界が破滅するような陰鬱な顔をしていたが、個人的にはどんなことになるのか大して興味もなく見ていた。

傍観者からすれば、第1期トランプ政権は、ロシアや中国と軍事的対立による過度の緊張を引き起こすことなく、北朝鮮と戦争することもなかったという意味で平和外交に貢献したように見える。北朝鮮の指導者と在任中に対談した米国大統領はトランプだけだ。しかも3回も直接会っている。

むしろバイデン政権になってからロシア・ウクライナ戦争が起こり、イスラエルハマスヒズボラへの軍事攻撃で暴れまくり、世界は戦争の時代に引きずり込まれた。トランプがこれらの戦争を止めることができれば、ノーベル平和賞をもらったとしても驚かない(驚くなかれ平和のために何にもしていないオバマノーベル平和賞を与えられているのだ)。

2016年にオバマからホワイトハウスの引継ぎの際に「北朝鮮が一番の問題だ。たぶんあなたの在任中に北朝鮮と戦争になるだろう」と深刻な顔で言われたとき、トランプが「で、金正恩に電話してみたのか?」と訊ねたというエピソードが好きだ。

オバマは黙って首を振り「そんなことしたって無駄だ。相手は頑固な独裁者だ」と答えたという。だがトランプは実際に金に「電話をかけ」、3回も会談を実現させた。金正恩はトランプにほとんどラブレターのような手紙を何回も送っている(ここで深入りするのは止めるが、あの熱烈な文面からは金正恩ファザコンであり、トランプに愛する父親を投影しているとしか思えない)。

トランプはプーチンに弱みを握られているとアメリカの情報機関はメディアと一緒になって攻撃し弾劾裁判にまで持ち込んだ。だがその証拠はついに出て来なかった。

こんなことを書いていると、「おまえはトランプ信者になったのか? Qアノンに絡めとられたのか? ミイラ取りがミイラになったのか」と言われそうである。

アメリカの(アメリカだけではないが)進歩的知識人にとって、トランプを少しでも肯定することは罪悪に等しいという傾向が確かにある。そして、実際トランプを肯定する人間は陰謀論に染まったような偏った政治的信念の持ち主が多いのも事実である。

しかし、率直に言って、トランプについて調べれば調べるほど、この人物の持つ一種の「得体の知れなさ」に魅力を感じてしまう。それは彼の政治的信条や立場への共感を意味しない。トランプの魅力は、政治的信念やら陰謀論を超えたところにある。

それはヒトラーにも人を魅了するカリスマ性があったとか、ナチスもよいことをした、というような議論とはちがう。ヒトラースターリンというのは一個の観念の化け物である。今のロシアや中国の独裁者もそういうところがある。トランプにはそういう意味での観念性はない。彼はむしろ言葉のあらゆる意味で「人間」である。彼を見ていると、ドストエフスキーの「地下生活者」のように、「二足す二が四」であるような世界に全力で抗っているように思える。それもスケールがでかい(トランプの著書に『でっかく考えて、でっかく儲けろ』というのがある。面白い本だった)。

第1期トランプ政権の内幕本の多くは、ニューヨークの「意識の高い」ジャーナリストやワシントン政治のインサイダーによって、トランプに対する軽蔑と憎悪をむき出しにして悪意たっぷりに書かれている。そんな本の中で憎々し気に語られる逸話が自分にはいちいち面白くて仕方がない。

例えばトランプはペンタゴンの将軍たちが軍事行動の必要を説得しにブリーフィングに来ると逆に彼らに延々と説教し、「あとどれだけ死者が出れば終わるんだ?」といい、現場の下士官や兵士の話を聞きたいという。そして実際に兵士たちをホワイトハウスに呼んで話を聞き、その結果アフガニスタンから米軍を撤退させるよう命じる(実際に撤退が行われたのはバイデン政権になってからで、やり方がまずかったために大変な混乱と犠牲をもたらしたのは周知のとおり)。

2016年の10月、選挙戦の最終盤を迎えたときに10年以上前のテレビ出演の際に隠し録音された猥談テープを公開され、支持率が急降下し、周囲の全員から選挙を降りるよう助言されたとき、敢えて路上に出て民衆に話しかけ、「降りるつもりは全くない」と宣言する。

大統領になって、ツイッターを止めるよう周囲からいくら注意されても「これは俺のメガホンだから」と言って止めない。

余計な事前知識があると第六感が働かず判断が鈍ると考えており、意図的に何も記憶せず、その場その場の直観で行動する(それが周囲には危なっかしくて仕方がない)。

繰り返すが、自分はトランプの政治的主張の多くには賛同しない(というより関心がない。と言うと叱られそうだが。まあ自分はアメリカ人じゃないので)。言ってみれば、日本で外山恒一が政権を取ったような眼で面白がっている。しかもトランプは外山恒一よりもずっとパワフルでめちゃくちゃである。こんな面白い見ものがあるだろうか。

トランプを明確に支持できるところが一つあるとすれば、彼は戦争が嫌いだということだ。彼が戦争を嫌うのは、軍事力の行使を否定するからではない。カネの無駄遣いであり、人命の無駄遣いだからだ。先に書いたエピソードのように、彼は将軍を軽蔑し、下士官や一兵卒の意見に耳を傾ける。トランプはホワイトハウスでも警備員やルームサービスをしている人たちにしょっちゅう政治的な意見を求めた。彼らが新聞やテレビで聞いたことを答えるとトランプは、「いや、ニュースではなくて君たちがどう考えているのかを知りたいんだ」と言う。

トランプは子どもの頃から不動産業をしている父親に仕込まれた。父親のフレッドはニューヨークの低中層所得者向けの集合住宅の建設で財を成した人物で、建設現場に毎日通っては、落ちている釘を拾い集めて再利用し、市販の塗装剤の成分を研究して自前で作ってコストを削減するような人だった。トランプはそんな父親から仕事の仕方を叩き込まれたと言っている。

本当は家業を継ぐはずだった長男のフレディーがアルコールに溺れて四十代で早死にしたのを見た次男のトランプは、若い頃から酒は一切飲まない。祖父もアルコールが原因で病死していた。幼い頃に母親が感染症に罹った経験から極度の潔癖症になり握手を嫌った。

つづく




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