「我々は大恐慌に向かっている。こんなことを言ったのは初めてだ。唯一の問題は、それがバイデンの任期中に起きるか、私の任期中に起きるのかだ。私はフーバー(1929年に発生した大恐慌に対処した米大統領)にはなりたくない」(2023年9月、サウスダコタ州の遊説先で)
先月あたりからドナルド・ジョン・トランプ(DJT)という人物について自分なりにリサーチを重ねてきた。彼についてはもともとたいした印象を持っておらず、メディアによって流布されている「乱暴で傲慢で単細胞な人種差別主義者=アメリカ国民の愚劣さを体現する男」というイメージしかないところから出発した。
2016年から2020年までの第1期政権については何冊もの内幕ものが書かれており、中でも歴代政権について高い評価を受けた調査レポートを書いている米国を代表するジャーナリスト、ボブ・ウッドワードの2冊『FEAR(恐怖の男 トランプ政権の内幕)」(日本経済新聞出版社、2018年)と『RAGE(怒り)』(日本経済新聞出版社、2020年)が最も信頼に足る資料だろう。
また、ややトランプに対する憎しみ過剰とも思えるゴシップ本的なマイケル・ウォルフ『炎と怒り トランプ政権の内幕』及び実際にホワイトハウスでトランプの側近として仕えたジョン・ボルトンの回顧録も読んだ。




第1期政権に至るトランプの評伝としては、ボブ・ウッドワードが副編集長を務めるワシントン・ポストの取材班による『Trump Revealed』(邦訳あり)が最もよく書けている。他にも1980年代にトランプがカジノ経営に乗り出したときに彼の下で働いたジョン・オドンネルによる暴露本『D・トランプ 破廉恥な履歴書』(飛鳥新社)も参考にした。




トランプ自身の自伝(といっても実際に書いたのはトニー・シュウォーツというライター)『アート・オブ・ディール』(ちくま文庫)はトランプの生い立ちからニューヨークの不動産デベロッパーとしてホテル王になるまでの軌跡を生き生きと描く良書。
トランプの姪(早死にした兄フレッドの娘)が書いた『世界で最も危険な男』という暴露本は完全なタイトル詐欺で、ただの富豪一家の内輪話にすぎなかった。
大統領選挙に出る前にトランプが書いた「金持ちになる方法」の類のハウツー本が何冊も出ており、主だったものには目を通した。



あとは国立国会図書館デジタルライブラリで、1980年代末にトランプが来日して日本の財界人と接触した際の記録なども読んだ。その中で印象的だったのは、日本の経済人から当時の日本のバブル経済についてトランプにいくら説明しても、トランプは理解できないと言って決して納得しなかったというエピソードである。
トランプの考えでは、日本のバブル景気は不自然なものであり、そんなものが続くはずがないというのである。
その一年後、日経平均バブルは崩壊した。
つづく