ピーター・フォークが『死者の身代金』で共演したリー・グラントと共に演じたニール・サイモン脚本の舞台『The Prisoner of Second Avenue(二番街の囚人)』について調べてみた。

あらすじ
この物語は、ニューヨーク市マンハッタンのアッパー イースト サイドの二番街に住む中年夫婦の深刻化する問題を中心に展開する。メル・エジソンは、22 年間勤めた勤続年数で職を失い、景気後退期の中年失業者という状況に対処しなければならない。この物語は、猛暑と長期にわたるゴミ収集ストライキのさなかに展開する。エジソンと妻のエドナは、騒々しく口論好きな隣人、マンハッタンの通りからアパートまで響く大きな音、さらには白昼のアパート強盗に対処しなければならず、エジソンの窮状はさらに悪化する。メルは仕事を見つけられず、エドナは仕事に戻る。メルは最終的に神経衰弱に陥り、彼を新たな現実に復帰させるには、兄のハリー、姉妹たち、そして何よりもエドナの愛情深い世話に頼るしかない。
【初演】
日程:1971/11/11―1973/9/29
劇場:ユージン・オニール劇場
上演回数:798回公演
演出: マイク・ニコルズ
CAST:ピーター・フォーク (メル)、 リー・グラント (エドナ)
『死者の身代金』が初放映されたのは1971年3月1日。
この番組の視聴率・評価ともに高く、シリーズ化が決定。
フォークは9月12日から舞台のリハーサルに入るため、それまでに90分のコロンボ映画を6本完成させなければならないことになった。
この劇のストーリーをこのブログから引用させてもらう。
第1幕
第1場
ニューヨーク二番街のアパートの一室。真夏の深夜、2時半。47歳のメル・エディソンが眠れないでソファに座ってイラついている。エアコンは温度調節ができず、部屋は冷え込むばかり。かと言って消すと耐えきれないような熱帯夜。だが彼のイライラの原因はまだ他にもあった。車の騒音、流れないトイレ、隣から聞こえてくるパーティーの騒々しさ、14階なのにテラスに出れば臭ってくる生ゴミ…。
妻のエドナは心配して休暇を取って旅行しようと提案する。だが22年も勤めている会社がリストラ中で不安な様子を見せているメルは旅行など考えられない。するとそこへメルの声がうるさくて眠れないと、隣から苦情の電話がかかってくる。メルはカーっとなり、壁の向こうから叩かれたら、叩き返すようにとエドナに命じる。
メル:叩き返してくれるな?
エドナ:叩き返せば、むこうだって叩き返すにきまってるでしょ。
メル:叩いてくれないのか。
エドナ:叩くわよ、叩くわよ!(と二度壁を叩く)
メル:(電話に) これでどうだ? (向うも叩き返してくる。エドナに) 叩き返せ! (エドナ叩く、向うも叩く。メルはエドナに指図を繰り返す) 叩き返せ! (エドナ叩き、相手も叩く) 叩き返せ!
第2場
数日後の午後。エドナが買い物から戻ると、部屋が泥棒に荒らされていた。警察に電話したあと、ひとり動転して大声で泣いているところへメルが帰宅する。メイドが掃除に来なかったのかなどと言い、異変に気づかずボーっとしているメルに、エドナは事の次第を説明する。問題はエドナが鍵をかけずに買い物に出てしまったところにあったのだ。あきれるメルだが、彼の落胆は別にところにもあった。実は4日前に会社をクビになっていたのである。メルの愚痴は最高潮に達し、胸が痛み出してしまうが、泥棒は飲む薬さえ残してくれなかったのである。メルはテラスに出て大声で「くそったれ!」と叫ぶが、階上の住人からバケツで大量の水をかけられてしまう。
第2幕
第1場
約6週間後。エドナは秘書として働きに出ている。エドナはメルの世話をしながらも、働く女性として溌剌とした日々を過ごしていた。だが、メルは相変わらずイジけており、精神状態は不安定なままである。
第2場
2週間後。メルの兄のハリーと未亡人の三人の姉がメルを心配して訪ねてくる。ハリーは姉たちが年の離れた末弟のメルを甘やかしたのがいけないと非難する。経済的に余裕のある兄、姉たちは、どうやって弟を立ち直らせるかについて議論を始める。エドナはメルが回復したら、サマーキャンプの経営をさせて生きがいを感じてもらおうとして、資金の援助を願い出る。
第3場
さらに6週間後。エドナの勤めていた会社は倒産してしまい、彼女は失業している。ハリーが来訪し、サマーキャンプ用地への出資を申し出るが、メルはそれには及ばないと兄の申し出を断る。兄が帰ると、メルはエドナがハリーに援助を求めたことを非難する。2人の口論の声が大きくなると、上の階から再び苦情の声が聞こえ、メルがバルコニーに出ると、またもや水をかけられてしまう。やがてラジオが雪の予報を告げると、メルはシャベルを持ち出してくる。雪でも何でも怖くはないかのようにシャベルを手にして幕となる。

この舞台はトニー賞では作品賞の候補となり、マイク・ニコルズが演出家賞を、主人公の兄のハリーを演じたヴィンセント・ガーデニアが男優賞を受賞し、3年に渡るロングランとなった。1975年にはジャック・レモン主演で映画化されている。
リー・グラントはテレビのインタビューで、この舞台のことについて、劇中でセリフを忘れてしまったが、フォークが助けてくれなかったことがトラウマ体験になったと語っている。
「ピーター・フォークとニール・サイモンの演劇に出演した時にトラウマになりました。第二幕で、セリフを忘れてしまったんです。それは、私たちが閉幕する週の水曜日の昼公演のことでした。その公演は1年間上演されていました。舞台上でセリフを忘れてしまい、共演者が[たいてい]「卵のことですか?」などと言う瞬間は、俳優なら誰でも経験したことがあるはずです。でもピーターは私をどう助けてよいか分かりませんでした。ピーターは観客の方を向いて、親指で私を指さしました。突然、私は何千人もの観客の前にさらされました。幕が下りなければなりませんでした。その後、2つの演劇に挑戦しました。セリフは忘れませんでしたが、自分が望んでいた、そしてそうなる必要があった素晴らしい女優ではありませんでした。怖かったのです。怖がったら終わりです。」

またリー・グラントが『死者の身代金』について語っている97歳の時のインタビューがあったのでざっくりと訳しておく。
「彼はとてもオープンで、とてもフレンドリーで、独創的な警官だったので、レスリーはいつも自分が有利だと感じていました。私(レスリー)は彼を弄んでいました。彼は混乱した子供でしたが、彼はそれを利用もしていました。彼が自分が何をしているのか分かっていないふりをして、つまり、素晴らしい策略で、彼は私を捕まえたのです。私はそれが素晴らしい演技の選択だと思いましたし、レスリーにとってとても楽しかったです。なぜなら、私は彼を過小評価していたので、彼を弄ぶことができたし、彼は私に惹かれていると感じたからです。その女性は、殺す力、誘惑する力、混乱させる力など、自分の力を楽しんでいました。彼女には何か特別なものがありました。彼女には感情がなく、完全な操作者で、良心のない殺人者でした。彼女はそれを楽しんでいました。彼女は夫を殺すことを楽しんでいました。彼女はギャンブラーでした。彼女は彼とテーブルについて、お金を見て観念して捕まりました。そして、あなたが勝ったと言いました。それはピーターが私に言ったのと同じことでした」
「二番街の囚人」の舞台上映の期間に「刑事コロンボ」シリーズは大ヒットし、フォークは、誰も自分の楽屋に遊びに来ず、みんなが話したがるのは刑事コロンボのことだけだと不満を漏らしたという。