小田原ドラゴンの新作マンガ「堀田エボリューション」が一部でちょっとした騒ぎ(?)を起こしている。
主人公は44歳の引き籠りニート、いわゆる「子ども部屋おじさん(こどおじ)」である。
家賃4万3千円の平屋に家族4人が住んでいたが、10年前に父親が死に、妹は結婚して家を出て今は母親と二人で暮らしている。
漫画の第1話冒頭は、
「大体においておれが今のような状況に陥っているのも貧乏なこの家に生まれたのが原因なんですよ」
という主人公(堀田)の独白で始まる。以後もずっと堀田の独白が綴られる。
おれはね
「俺の人生」という映画の主人公なんですよ
はっきり言って
その主人公がこんなしょーもないことでいいんですか?
こんなしょーもない映画ありますか?
この独白は、岡崎祥久の「パーミション」という小説に出てくる主人公の独白
実年齢で半世紀すぎてるのに、いまだに俺にはなにも起こってない気がするので(中略)ストーリー的にはまだ序盤あたりなのかな、とおもったりするわけです。今後いろいろ展開していくための下ごしらえ中というか。(中略)でもなんにせよ、まだこれからなにかあってもいいだろう、というか、なきゃおかしいだろ、といつまでたってもおもってます。
を思い出させるものがある。
要するに自分にとっては大好物の設定の作品なので、今後を大いに期待して喜んでいたら、こんな指摘をする人が現れた。
新作漫画の内容が「だるま」というブログで自ら自殺に至るまでを書き記して逝った内容と酷似してる
上のような指摘を受けた小田原は、Xに次のようにポストした。
いくつか指摘を受けましたが、堀田エボリューションのキャラ設定と導入部分はある一人の男のブログに影響を受けて描いたものです。彼はそのブログを残して自ら命を絶ったのですが、ブログの一番最後に彼はこのような事を書いていました。自分が人知れず消えてしまうと自分がこの世界に存在してた事実までが消えてしまうようでそれが怖かった。と。それを読んで自分は彼を漫画の中でイキイキと復活させたいと思ったんです。余談ですが僕が普段文章でよく使う「〜です。はい。」という言い回しも彼に影響を受けてのものです。
午前3:35 · 2024年9月17日
自分は該ブログの存在を知らなかったのだが、一部のネットユーザーの間ではけっこう知られているもののようだ。
彼は2016年、28歳で自ら命を絶ち、それをネットで配信したことで有名になった。自らの人生を綴ったホームページの最後に彼はこう書いている。
このホームページを作った理由を書きます。
確かに俺は、1988年7月24日から自殺したその日まで、この世界に存在していたけども、
人知れずこの世界から消えてしまうと、俺がこの世界に存在していた事実まで消えてしまうような気がして、
それが怖くて寂しくて、自殺が出来なかったんですね。だから俺は、俺がこの世界に存在していた証拠を残す方法を考えて、
自分の人生を書いたホームページをネット上に公開することを思い付いたんです。なぜなら、このホームページには俺の人生が書かれてるけども、
だからこのホームページを見た人の脳に俺の人生が記憶されるけども、
その記憶こそが、俺がこの世界に存在していた証拠になると思ったからです。…要するに、俺が自殺出来た理由は、
このホームページをここまで見てくれたあなたのお陰なんです。
本当に感謝します。ありがとうございました。さようなら。
第1話を読んだ限りでは、主人公のモデルが特定の人物であることやそのブログに影響を受けたことは明らかではない。
今後の連載の中で明らかにするつもりだったのか、それとも連載が終わった後に明らかにするつもりだったのか、あるいは最後まで伏せることにしていたのかは不明だが、少なくとも現時点で小田原が認めたことにより明らかになってしまった。
「フィクションギャグストーリー」を謳ってはいるが、この漫画の背後にこういう実話があるのだと思うと、素直に笑えないなあという読者が出てくることが予想される。
このことで憤っている人たちの気持ちは分からないでもないが、小田原ドラゴンという漫画家がどういう人かというのをある程度知って今まで追いかけてきた一読者としては、「死者を利用している」とか「リスペクトがない」という批判には素直に頷けない。
今年の7月に友人のライター・石川キンテツが突然亡くなったとき(自殺ではない)にはこんなコメントをするような人である。
キンテツの死に関して、本当に正直な僕の気持ちを話しますと、残念だとかそういう気持ちはあまりなくて「いいときに逝ったなあ」というのが1番ですね。
最近のキンテツは仕事もせず、70過ぎた親からの仕送りで生活し、コンカフェ嬢を落とすことばかり考えてました。
この先、明るい未来が待ってるようには思えませんでした。
僕も結婚が破談になって思い描いていた未来が急に見えなくなったときでもあり、ぽっくり、恐らくほぼ苦しみも無く逝ったキンテツを少し羨ましくも思いました。
正直「あの野郎、上手いこと逃げやがって」という気持ちですね。もう少し共に人生の苦しみ(と少しの楽しさ)を味わって欲しかったですね。
午後3:29 · 2024年7月27日
そして、生前のキンテツのエピソードについてこう言っている。
僕の勝手な解釈ですがキンテツはもっと話題にしてと言ってるような気がしますね。寂しがりやな人でしたから。住所が判明した死ぬほどアホな経緯も話していいよと言ってるような気がしますね。
これは自分の勝手な解釈だが、小田原にとって、この「堀田エボリューション」という漫画には、石川キンテツに対する彼なりの哀悼の意が込められているような気がする。小田原の中で、キンテツとだるま(前田仁)はどこか他人ではないようなところのある存在なのではないか。
「彼を漫画の中でイキイキと復活させたいと思った」という小田原の言葉は嘘偽りのない本当の所だと自分は捉えている。
今後の展開に目が離せない。