暑くて家のエアコンが故障して死にそうだったが(修理に来るのは月末)散髪に行ったついでにブックオフに行ったら『吉本隆明×吉本ばなな」(ロッキング・オン)が1050円(消費税別)で売っていたのでゲット。

前からこの本が読みたかったのは、先日買って読んだ『隆明だもの』(ハルノ宵子)の中にこの対談本のことが出てきたからだった。
この本を読んだ吉本の妻(ハルノとばななの母)が激怒してマグニチュード9クラスの激震が起こり吉本家最大の家庭内危機を迎えたという。それでこの対談本は「禁書」となり、文庫化されることもなかったという。
ハルノ宵子は「もしあの本を持っている方が読み返しても、どこがいけないのか、何が引っかかるのかは、お分かりにならないだろう」と書いている。
だが、この「パートⅠ:家族対談」を読んだだけでも、ばななが「もう、どうしよう。殺されちゃう。呪われちゃう(笑)」(37頁)、「酷~い。酷い、帰ります(笑)」(51頁)、「どうせいままでので怒るよ、全部」(54頁)、「やめてぇ、そんなの誌面に載せたらお母さんに殺される」(66頁)、「これは殺されそう。お姉ちゃんとかにまで私殺されるかもしれないからもう帰っちゃおうかなあ」(90頁)などと、相当に剣呑な発言をしている。
それで隆明が何を喋っているかというと、例の結婚にまつわる三角関係のいきさつを、相手の男性がなかなか籍を抜いてくれなかったキツさとかについてえんえんと漱石の「門」や「それから」「こころ」などを引き合いに出しながら語っているのだ。
ハルノによれば、「その本を読んだ母の怒りと絶望は、私の予想をはるかに越えていた。内容の、とある部分が琴線に触れたのだ。母は自分の人生を全否定されたように受け取ったのだと思う」という。その時から、ハルノは母が自死するのでは、とずっと気がかりで目が離せなかったというからちょっと想像を絶する話である。
結局、隆明がばななのアドバイスに従って、頭を丸めてダイヤをプレゼントして何とか収まった(?)が、その後も「家庭内離婚」の状態が続いたという。
『隆明だもの』に収められているハルノとばななの対談の中で二人は、「うちの倉庫からお母さんの作品が出てきた」「小説ね。そんなに長いものじゃないです。そのうち発表されると思いますよ」「あの小説を読んで、母の恐ろしさを垣間見たね。」「女!って感じ。だから私たちはこんなふうで、女!って感じじゃなくなってしまったんだ」と、けっこう凄い話をしている。
ちなみに、隆明とばななの対談本では、司会を務めている渋谷陽一がけっこう的確な合いの手を入れていて、人によっては口を出し過ぎじゃないかと思うかもしれない。