今日はさすがに夏のスーツで来た。もう上着も必要ない暑さ。でも空気はまだ涼しさを保っている。これが湿り気を帯びて熱が籠った空気になったら、いよいよ酷暑を覚悟しなければならない季節がやって来る。
行きのメトロの中で『デッドライン』を読んでいたら、目の前に千葉雅也の新刊の広告があった。この本はウェブで読める「まえがき」を読んだがいま一つ刺さらなかったのでまだ買っていない。そのうち電子書籍で買うかもしれない。しかしシリーズ通算で30万部というのはすごい。『勉強の哲学』と『現代思想入門』と合わせて3部作のようだ。『勉強の哲学』は東大・京大で一番読まれた本だという。自分も読んだが内容はほとんど覚えていない。

千葉雅也の『現代思想入門』はkindleで買った。80年代にはフーコーとかデリダとかレヴィ・ストロースとかラカンとかロラン・バルトとか読む奴が頭がいいという風潮があって、日本でも浅田彰やそれと仲良くしていた坂本龍一や村上龍が時代の最先端みたいなところがあった。自分はそういう、「読むと何となく頭がいいような気になれるが、実際には何の身にもならない思想というもの」(これは理解できない腹いせからの決めつけだが)に反感を持ち、その手前のニーチェとかドストエフスキーの方が文字通り「人生を変える」本だと思っていた。実際、ドストエフスキーを読んだせいで人生が変わったと思う。
千葉雅也の『現代思想入門』は「人生が変わる」というのがうたい文句だが、少なくとも自分は現代思想では人生は変わらず、ドストエフスキーと聖書(福音書)で人生が変わったと思っている(そもそも現代思想にはろくに触れてもいないのだが)。そこから精神世界というウサギの穴に潜り込んで、文字通り瞑想迷走を重ねて今に至っている。
という風に書けば、きみに一番親和性のあるのは中沢新一じゃないか、とよく言われるのだが(嘘)、中沢の本は一冊も読んだことがない。
このチャンネルで今回のケンドリックとドレイクのビーフ合戦の歌詞を詳細に解説してくれている。
ケンドリックの抉り方が尋常ではなく、これはドレイクもかなり堪えた気がする。
当初はケンドリックがドレイクに「ペドフィリア」とか「性加害者」のレッテルを貼って攻撃する悪しきリベラル派のようなやり方をしているのか、と少し気になっていたが、さすがにそこまでベタではない。メタな視点からドレイクの本質的な弱みを暴き、寄り添いつつも突き放す、一番キツいやり方でディスっている。
ドレイクの最後の「Heat Part6」は自己防御に徹する必死さがむしろ痛々しい印象のみを残す。これに「返すにも値しない」というケンドリックの態度がさらに傷に塩を塗る効果を与えている。
以前、ケンドリックのコンシャスなラップはヒップホップ本来の猥雑さを削ぎ落した窮屈さにもつながるというようなことを書いたが、ドレイクがそれに対抗する突き切ったアンチモラリティを提示できれば面白い展開になるかと思ったが厳しいようだ。
むしろそうした動きはヒップホップの外から生まれてくるのではないかと思った。