この退屈な国には もうお金がないわ
この退屈な男は もうお金がないわ
あのね、どうして今は景気が悪いの?
資本主義はきっと恋愛よりも難しいのね
ジャンニ・ヴェルサーチ暗殺/SPANK HAPPY (2002年)
二十年早すぎたバンド。
大谷能生「 散文世界の散漫な散策 二〇世紀の批評を読む」を読んでいると、かつては批評が批評としてきちんと機能した時代があったのだなと思う。
今は、批評というもの自体が難しい時代だと感じる。
何か心揺さぶられるものに出会っても、そのことについて深く掘り下げる前に「泣ける」「エモい」「感動した」という一言で済ませたり、140文字以内にまとめる形でしか感想が述べられない。それは限りなく直情的で表面的で瞬間的な感想でしかなく、到底批評たり得ない。
今年の対談の中で大谷能生と栗原裕一郎が音楽批評についてこんな風に語っている。
大谷:音楽はCDにせよグッズにせよ、ものを売らなきゃならない商売だから、インターネット以降は結局のところ拡散する=広告になって、ページビューを稼げればいいとなりがちで、批評が成立しにくいですよね。内容を薦めるのと、好きだから拡散するというのは違うんだけれど、そこが混乱してしまうから、音楽自体を語るのがとても難しい状態です。
栗原:「批評家にはなるな」というのがいまのネット世論のコンセンサスだから(笑)。
大谷:たとえばある観光地について批判すると、ネット上では「私が旅行に行って楽しかったことが嘘になるんですか?」というような反応を呼び起こしてしまうんですよね。コンサートにせよ、CDにせよ、人が経験したことをどう位置付けるかに対して、言葉が立ち上がりにくい。
栗原:音楽に限らず、批評や評論は邪悪なノイズになった。それも2010年以降の傾向かな。批評が嫌われ者なのは昔からだけど、かつては「批評は作り手になれなかった奴のルサンチマン」と皮肉を言われる程度だったのが、いまじゃ「俺の楽しみを台無しにする雑音」と積極的に否定されるようになっちゃった。
大谷:この10年くらい、「俺はそれに対して金払ったんだから、その金をもっとプラスにするような言葉をくれ」みたいな感じで、みんながそれを好きじゃないと嫌だという考えの人が多い。
栗原:…でも、批判がNGというのは商業メディアも全般にそうなっているから、その風潮がユーザーに及んだということなのかもね。そもそも評論とか批評というのは、世に知られていない、顕在化していない価値を、発見したり作り出したりする機能だったのに、産業側のパブリシティを代弁するのばっかりになってしまった。
大谷:やっている人はいるんだけれどね。2020年代にはいま言ったような問題を含めて「では、こうしましょう」という新しい展開が出てきてくれればいいなと思っています。アイドルに関してもそう。
栗原:こないだの「ABEMA Prime」で「サブスクのシャッフルプレイとプレイリストにどう対抗するか?」みたいなテーマの番組があったじゃない。楽曲が個別でしか聴かれなくなってアルバムという概念がなくなり、プレイリスターや音楽コンシェルジュの選曲が影響力を持つようになった。そういう状況に対する批評の動きってなんかあるかな?
大谷:ないね。でも、この本の最後の対談で言ったんですけど、もし2020年代に可能性があるとしたら、90年代後半からあったDJ的な感覚で音楽をチョイスしてプレゼンすることだと思います。タワレコの「bounce」はバイヤー側の視点で「この新譜に合わせるのはこれです」みたいなことを書いていた。それによって歴史がシャッフルされて古今の様々な音楽や文化が接続されてきたんですけど、あれこそ今でいうプレイリスターの視点だと思う。選曲だけに集中していていて、それが結果として批評になっている。
大谷:自分が好きなものを集めてちゃんと並べて、それに「私は音楽をこう思っている」という事がわかるような言説が加えられると面白いと思う。「朝聴くのはこの曲で、なぜならこういう考えがあるからです」とちゃんと言説化が出来るような世の中になれば、まだまだ面白い原稿が出てくると思います。プレイリストと一緒に、それを提示するというやり方はネットとの親和性もあると思う。
例えば平岡正明が「山口百恵は菩薩である」の中で書いたような、「流行という具体的なもの、その細部に神が宿るような繊細なものを徹底的に注視しながら、そこから自身のテーマと重なるものを引き出し、ある方向感を与えて、大きな論述へと展開する」(大谷能生)タイプの批評というものはもはや存在しなくなって久しいが、それ以前の原始的な批評のレベル、つまり対象とシリアスかつ批判的に向き合うという最も基本的なことすらできなくなっているというのが今の批評世界のお寒い現状なのだろう。
大谷の言葉に倣って、2022年の僕のプレイリスト(今年出た曲に限らない)を提示する。ただし「この曲を聴くのはこういう考えがあるからです」と言説化はできない(単に菊地成孔の番組でかかったからというのが主な理由でよく聴いた曲というのが多いだけ。)ので批評たり得ないものでしかないが。
My Playlist 2022
JOY/レイ・ハラカミ
Luv (sic) pt3/Nujabes (feat. Shing02)
それは違法でした/坂本慎太郎
OMSBから君へ/OMSB
Fearless/ Le Sserafim
Cookie/ New Jeans
I Love You 3000/ Stephanie Poetri
アイリーン/藤井隆
喜劇/星野源
Baby, I Love You/清水翔太
ずるくない?/ぷにぷに電機
オドループ/フレデリック
見上げてごらん、夜の星を/Ground Zero
釣り堀/西野七瀬
366日/上白石萌歌
Luv (sic) pt4 / Nujabes(feat. Shing02)
Let Go/m-flo
インターナショナル・クライン・ブルー/ SPANK HAPPY
あなたがわかってくれなかったからぼくはとってもさびしかった/ETER NOW
Love Never Felt So Good (original version)/ Michael Jackson
Best Part/ H.E.R(feat.Daniel Caesar)
Nothing Even Matters/ Lauryn Hill (feat. D'Angelo)
Next Level/ Aston Wyld
Next Level/ aespa
Hesitation Blues/Janis Joplin & Jorma Kaukonen
The Only Exception/ Paramore
If I Ain't Got You/ Alicia Keys