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何もない日の物語

出かけた帰りに駅のカフェに入った。時計の針は14:05を指している。ずっと迷っていたことを断る決断ができて、心は昨日よりも晴れやか。いつもとは違う甘いコーヒーを注文し、先月は書くことがままならなかった手帳に少しだけペンを走らせた。

 

しばらくすると隣の席に綺麗な人がやって来て、編み物を始めた。ピンクと紫のまんまるい毛糸がテーブルのうえにちょこん、と置かれていて、編まれるたびにころころと踊りながらほどけていく。何ができあがるのか想像しながら、窓の外を足早に過ぎていく人々の姿を眺めた。

 

カフェといえば、先日本屋で読んだ『月とコーヒー』(吉田篤弘著)という短編集の『喫茶店ゴーゴリ〉の甘くないケーキ』という話が心に残っている。人が滅多に来ない日本の果ての喫茶店を継いだ女性と、そこを毎日訪れる男性の話で、特に何かが起きるわけではないのに、読んだ後たびたび思い出してしまうような余韻があった。誰も来ない店といえば『かもめ食堂』が思い浮かぶけど、それに少し近いのかもしれない。異国情緒のようなものに漂う孤独が、誰かへの思いを通じてほどけていくところは共通だ。あと、思わずお腹がすいてくるところも。

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色んな本やら映画のことを思い返しているうちに、時刻は夕方になっていた。カフェを出て電車に乗ると、向かいの席に親子連れが座っていた。小学生ぐらいの男の子がタブレットで算数の選択式クイズのようなものをやっていて、答えを選ぶたびに、画面には大きく「?」が表示されている。それはどうやら、「本当? もう一度考えてみて」のサインらしい。たまに「〇」が出るけれど、大体は「?」が返されていて、そのたびに男の子は「やっちゃったー」という顔でお母さんを見つめている。

 

形になっていく毛糸や、人々が向かう先、男の子の甘えた笑顔。特に何もない日だったけど、こうして雑踏のなかに見つけた小さな物語が、余韻となって残っていくのかもしれない。




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