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涙の銀!日本女子シングルでは初となる五輪ダブル表彰台の上で、最後まで笑顔を守った太陽のような坂本花織さんに感謝するの巻。

12:00
日本の太陽に涙の銀!

いよいよ最後の週末に入ってきたミラノ・コルティナ五輪。そのクライマックスにふさわしい、尊い競い合いが繰り広げられました。フィギュアスケート女子シングル、素晴らしい演技たちがつづくなかで、坂本花織さんが銀、中井亜美さんが銅、そして千葉百音さんが4位と、日本勢が上位にズラリと並びました。素晴らしい演技、素晴らしい試合でした。誇ってもらえたらいいなと思います。




迎えたフリープログラム。ショートプログラムで上位発進となった日本勢はいずれも最終グループでの登場となりました。最終グループを迎える段階でトップに立つのはアメリカのアンバー・グレンさん。ショートプログラムではジャンプの要素抜けなどがあり、70点台に乗せられず13位と出遅れていましたが、フリーではトリプルアクセルの成功などで盛り返してきました。何かとザワつきが多い今大会のアメリカにあって、強い心を示す演技。ショートとフリー、ふたつのプログラムで競うからこそ生まれる悲嘆と雪辱だったなと思います。最後に歓喜の叫びとガッツポーズが見られて、よかったなと思います。

最終グループ、まず登場したのはジョージアのアナスタシア・グバノワさん。団体戦ではメダル獲得を目指してショート・フリー両方に登場したというなかで迎えた個人の種目ですが、もしかしたらその過酷さが少し出てしまったのかもしれません。完璧な演技とはならず順位を下げます。ロシアからの中立選手として出場のアデリア・ペトロシアンさんも、冒頭の4回転トゥループが転倒となり、本来の演技には至りません。ショート、フリーともに出来得る最高の構成にはしてきませんでしたが、仮に構成を上げてきたとしても、立場的にも経験的にもチカラを出し切るのは難しかったかなと思います。「出られた」、それ以上を望むには堂々と出られるような世界に戻すこと、選手の頑張り以外のものが求められるでしょう。

残る演技者は4人、そしてそのうち3人が日本勢。まず、日本勢から最初に登場したのは千葉百音さん。初の五輪とは思えない落ち着きぶりで、直前の採点に時間が掛かるなどややナーバスになりかねない状況にも乱されるところはまったくありません。見た目の印象にはとても美しい演技で、初の五輪をノーミスで演じ切りました。ただ、速報の技術点と最終スコアにはやや乖離が。コンビネーションジャンプでqマークの回転不足を都合3回取られており、速報値の77点台から74点台までマイナスされました。全体的に採点が辛い傾向のある大会と感じますが、僅差で競う拮抗した大会でもあるので、辛くならざるを得ないのかなと思います。それでも千葉さんは演じ終えた時点で暫定トップに立ち、残る3人の演技を待ちます。初の五輪で堂々のメダル争いです。

そして、日本勢最大のライバルと目される、今季GPファイナルの女王、アメリカのアリサ・リウさん。かつてはトリプルアクセルと4回転を駆使するジャンプで知られたスケーター…いわゆる「天才少女」でしたが、一度の引退を経たあと、スケートの完成度を高めることを追求し、今大会は団体戦を含めてトリプルアクセルも含まない構成としました。音楽のチカラ、演技の美しさ、弾ける笑顔、あがる大歓声。場内の空気を途切らせることなく、熱狂を加速させていくような演技は、明るくて強くて華やかで「これぞアメリカ」というもの。ジャッジにGOE+5を連打させたまったく軸のブレないレイバックスピンから、天高く一本指を突き立てるフィニッシュは、すごい盛り上がりでした。エンジョイフィギュアスケートでした。ジャンピングハグが出るのも納得の演技です!



この熱狂のなかで自分の演技を貫けるのは、この人、坂本花織さんしかいなかったのではないかと思います。一番苦しいタイミングを一番強い人が引き受けてくれた。それは偶発的なものですが、日本にとってはまたも坂本花織という太陽に救われた瞬間だったと思います。引退を表明し、これが最後と決めて臨む五輪の演技。愛の賛歌ほかに乗せて演じるファイナルの演技は、坂本さんらしいものでした。大きくて流れのある世界一のダブルアクセルで「これが坂本花織だ」とリンクの支配を奪還すると、不動の軸で貫くスピン、壮大なステップシークエンス、ジャッジの心深くまで飛び込むトリプルサルコウ、どの要素も高い加点を積み上げていきます。

惜しむらくは演技後半最初のコンビネーションが、トリプルフリップの着氷こらえで繰り返しのジャンプとなったことくらい。余ったコンボを最後のトリプルループにつける選択肢もあったと思いますが、その1.5点とかを取りにいくことよりも、坂本さんはこの演技の完成を目指しました。もともとの構成を知らなければ、どこに予定と異なる箇所があったかもわからないような美しい演技。本人は朗らかな笑顔ではなく、泣き出しそうな笑顔で演じ終えましたが、観衆は立ち上がって笑顔と大歓声を贈っています。今日だけではなく、坂本花織というスケーターのすべてに対しては、お祝いも労いも別れも笑顔こそが似つかわしい、そんなことを思います。




この大会を締めくくるように最後に登場したのは中井亜美さん。ショートの弾ける笑顔から連続するように笑顔で滑り出した中井さんは、冒頭のトリプルアクセルを見事に成功!トリプルルッツからのコンビネーションでセカンドジャンプが2回転になるなど耐える場面もありますが、初の五輪で、最終滑走という重圧のなか、金メダルを狙って躍動した17歳に眩しさ以外のものなどありません。最後のキュートな決めポーズで演技を終えた段階では、速報の技術点もこれまでのトップに立つ78.06点を示していました。かつて見られなかった夢が、一瞬心によぎるような演技でした。

ただ、まぁ、辛いなというか、厳格だなというか、オフィシャルのスコアを見ているとそこからグングンTESが削られていきます。後半のコンビネーションジャンプふたつに、エッジの「!」とqマークが2個つき、最終のTESは72.53点まで下がりました。この素晴らしい演技が結局フリー単独では9位となるだなんて。正直納得がいかない。スコアが出たのに中井さんが無反応だったときには、これは怒りの抗議活動でもせねばならんかと奮い立ちましたが、それは「どこに順位が出るのかわからなかった」のだそうで、自分がメダルだと理解したあとは跳び上がって喜んでくれたので一安心。金メダルを決めたアリサ・リウさんもお祝いにきてくれて、嬉しいメダル獲得となりました!



中井さんが嬉し涙を流すなかで、金を目指してきた坂本さんも止まらない涙を拭っていました。金を目指してきた人が銀なのですから悔しさがないはずがありません。この日の演技にも満足はできていないでしょう。本人が意図したとおりの、磨いてきたとおりの、完璧な演技は残せなかった。わずか1.89点差の最終スコアを見れば、無限にタラレバも浮かぶかもしれません。

それでも、最後まで笑顔でいようと、止まらない涙を隠せないまま、笑顔を見せつづけた坂本さん。坂本花織は女子シングルを救った光であり、日本フィギュアスケートの、いや世界のフィギュアスケートの太陽でした。前回北京五輪、4回転を駆使するロシア勢を前に挑む前から「絶望」の言葉が飛び交うなかで、自分の演技を極めて銅を獲ったこと。その後の暗澹たる世界を思えば、あの銅は女子シングルにとって金にも等しいメダルでした。この種目を守り、照らす光でした。

それから4年、世界をリードしてきた坂本さんはみんなの太陽だった。明るかった。あたたかかった。頼もしかった。この五輪の開幕を迎えてからも坂本さんを見ない日はありませんでした。団体戦に始まり、各個人種目、そして自分自身の種目と、毎日いるんじゃないかというくらいにリンクやスタンドに坂本さんの姿がありました。誰かが苦しいとき、誰かが落ち込んだとき、その傍らで励まし、元気を分け与えていたのは坂本さんでした。自分のことだけでも大変なはずなのに、自分に対してする以上の熱量で、みんなのことを見守っていました。

銀の表彰台に乗った坂本さんは、精一杯の笑顔を見せながら、金のアリサ・リウさんが上手にぬいぐるみをセットできるようにサポートしたり、通例では銅メダルの選手が担当することが多いオフィシャルの表彰台自撮りも買って出て、自慢の撮影テクニックを見せていたりしました。目に入る誰かに手を差し伸べずにはいられない、そんな人となりが、最初から最後まで坂本花織だったなと思います。

試合後のインタビューにあった「銀メダルで悔しいと思えるくらい成長したのかな」の言葉は、スケートについての振り返りなのでしょうが、人としても大きく大きく成長してこの日を迎えたのではないでしょうか。坂本花織は日本の、世界の、頼もしいリーダー、太陽だったと思います。引退を迎えたあとも、何をするにしてもまたみんなの中心にいて、たくさんの人をあたたかく照らす、そんな存在でいてもらえたら嬉しいなと思います。

すべてを終えて今何をしたいかと問われたとき、「今は、相当悔しいので、泣きたいと思います」と答えた坂本さん。もうずっと泣いていたわけですが、それは満杯のコップから水がこぼれていただけで、この舞台を去るまで笑顔を頑張って作ってくれていたのだろうと思います。なので、最後は自分を労わってあげてほしいなと思いました。氷の上じゃなかったら、胴上げでもしたいような、そんなカーテンコールだったと思います。ありがとうかおちゃん!かおちゃんのいるスケートは、とても楽しかった!

↓たくさん泣いたあとは、笑顔のエキシビションお待ちしています!




これは中継内で主に4位の千葉百音さんに向けられていた言葉ですが、自身も平昌五輪で4位となった宮原知子さんがこんなことを言っていました。「やっぱりもうあと一歩でメダルっていう順位であることに変わりはないので、もっとできたんじゃないかって思う気持ちは、もちろん消えないですけど、でも順位以上に大事にすべきものってあると思うので、今は悔しいかもしれないけど、そういった頑張ってきた自分っていうのは認めてほしいです」という言葉、千葉さんだけでなくたくさんの人に通じる言葉だと思います。たくさんの悔しさとやるせなさを抱えた人が、自分を労るきっかけになるといいなと思います。順位は大事だけれど、僕らも順位だけを愛しているわけではないので、何位であろうがかおちゃんはかおちゃんで、いつだって最高に輝いている、そう思います!


悔しくて辛くても、笑顔を守った太陽のようなかおちゃんに感謝!

ふたりの出会いに感謝!フィギュアスケートの歴史に宇宙一の演技を刻んだ、三浦璃来/木原龍一「りくりゅう」ペアの強く尊い金の巻。

18:00
1+1を158.13にした金!

新たな歴史の扉が開きました。すでに日本勢にとって歴史的な大会になりつつあるミラノ・コルティナ五輪に打ち立てられた金字塔、フィギュアスケートペア三浦璃来/木原龍一組、「りくりゅう」ペアによる金。しかもフリー世界歴代最高得点となる158.13点をマークしての金。ロシア勢の不在など些末なこととかき消し、今ここに史上最高の演技があることを高らかに示しての金。歴史的な金になりました!




世界一のチカラを持ってりくりゅうペアは五輪にやってきました。世界選手権を二度制し、今季はGPシリーズ連勝からのグランプリファイナルも制覇。四大陸選手権を制したキャリアとあわせて、五輪制覇によるゴールデンスラム達成に手をかけるところまでやってきていました。「獲り得る」ではなく「獲るべき」まで自分たちを高めてきていました。

しかし、それでも簡単ではないのが五輪という舞台。人生を捧げた者たちとの戦いは、世界一のチカラをもってしても容易く勝ち抜けるものではありません。ショートプログラムで起きたアクセルラッソーリフトでのミス。リフトを得意とし、リフトで世界をリードしてきたペアにとって、信じられないような出来事でした。これが五輪か。ここで裏切られるか。そう唸りました。

演技を終えたあと頭を抱える木原さんの姿。このペアのリーダーシップを取り、リフトさながらに力強く「りくりゅう」を導いてきた頼もしさが消え入るように、うなだれ、目を濡らし、焦燥して見えました。得点差で言えばトップまでわずか6.90点差ですので、まったく諦める段階でも落ち込む段階でもないのですが、「これが五輪か」によるダメージは相当な深刻さに映りました。ことに、この大会ではすでに金確実とみられた選手が「これが五輪か」によってメダルさえも失う姿を見てきたばかりなのですから。



迎えたフリー。りくりゅうペアは金メダル候補としては早い、第3グループでの登場となりました。この演技のあとにメダル圏内にいるペア4組による最終第4グループの演技が行なわれます。ただ、りくりゅうペアの直前が前回金の中国スイ/ハン組であったことと、日本で一番なじみのあるシングルは6人のグループで行なわれることが多いこと、そんなこともあって今これが最終グループのような錯覚も覚えます。先に演じてプレッシャーを掛けられるか。真の強さが問われる瞬間です。

冒頭のトリプルツイストを高く鋭く美しく決めると、3連続ジャンプも見事な同調性で決めます。嫌なイメージがよぎっても不思議はないアクセルラッソーリフトもこの日は何の問題もない本来の出来栄え。ひとつ心理的難関を突破してりくりゅうは自分たちの強さを示しました。

その後もつづく攻めの演技。武器であるスロートリプルルッツは大きくて流れがあります。デススパイラル、笑顔で入るペアコンビネーションスピン、歓声あがるトリプルサルコウ、高くて大きくて安定したリバースラッソーリフト、GOE+5をつけるジャッジも出たスロートリプルループでは、三浦さんの振り付けがガッツポーズのようにも見えました。まだ要素を残した時点ですでに速報の技術点はこれまでのトップを上回っています。

最後のリフトはリンクを巡るように長く長く行なわれ、フィナーレのコレオシークエンスへ。「やった!」とでもいうような表情の三浦さんと、「おおお!」と叫び出しそうな木原さん。最後に木原さんが三浦さんを持ち上げたフィニッシュでは、団体戦では何度も何度も拳を突き上げて三浦さんがガッツポーズをしていたものが、天高く拳を突き上げたまま万感胸に迫って硬直するような幕切れでした。美しい彫像のようでした。これまでの日々、積み上げた想い、払った犠牲、すべてがこの日この時この瞬間のためにあった、すべてをやり遂げたふたりが抱き合って涙する姿は見ている者ももらい泣きさせるようなものでした。

スタンディングオベーションで大拍手と大歓声を贈る場内。そのなかでひときわ大きな声をあげる解説の…いや日本のペア種目を牽引し、木原さんをこの種目、この人生に導いた高橋成美さんはすごいすごいすごいと連呼しながら「宇宙一」とこの演技を評しました。そう、そうかもしれない。この広い宇宙でも、氷のうえでふたつの人生が同調する美しい種目はこの地球にしかないかもしれない。だとすれば。この演技は宇宙一に違いない。この試合の勝ち負けはまだ未定ですが、りくりゅうは五輪に勝ち、自分たちの人生に素晴らしい偉業を打ち立てた。間違いなく、勝者でした。



この演技は会場の空気を変え、世界の空気を変え、五輪を支配しました。珍しいものを見たい、特別な場面を見たい、ときにそうした世界の群衆の思いは負の方向に蠢いて、力量実績がある選手が五輪の魔物に食い散らされて失意に沈む姿を望むもの。もしかしたらあったかもしれないそんな負の空気さえ、りくりゅうの演技はかき消しました。苦しい場面もあったけれど、その困難をも乗り越えて、世界一のチカラを持つ者がその強さを示して勝つ、そんな王道を見たい。そういう正の方向で世界の空気が定まった、そう思います。すべての者がチカラを発揮したとして、なおこの演技が勝つべきだ、そんな空気へと。

まるで花道が開かれるように、金メダルへと近づいていくりくりゅうペア。最終第4グループは金ではなく銀と銅を争うかのように、ショート1位発進としたドイツのハーゼ/ボロディン組も、ショート2位ジョージアのメテルキナ/ベルラワ組も、ショート3位カナダのペレイラ/ミショー組もジャンプ要素に明確なミスが出て、りくりゅうの黄金の演技には及びません。互いに生涯最高を出し尽くせば、あるいはショートのミスが順位に影響を及ぼしたかもしれませんが、そうはならなかった。

これもまた五輪だな、そう思います。これまでの偉大な王者たちが、偉大であればあるほど必ず五輪を制してきたように、本当に勝つべき者がそれに値するチカラを示したとき、必然としてそれは金に至るのだなと思います。日本を団体戦銀に導いたりくりゅうペアに、ふさわしい色のメダル・金メダルが届いたこと、心から嬉しく思います。おめでとう、りくりゅう!





すべてがつながっての今だな、そう思います。日本では決して本流ではないペア種目の歴史を紡ぎ、切り拓いてきた先人たちがいたこと。そんなひとりであり、もしも時代が違えば今このりくりゅうペアのような輝きで世界だけでなく日本でもその名を轟かせたかもしれない高橋成美さんがいたこと、その成美さんの存在もあってもともとはシングルの選手であった木原さんをペア種目に向かせることになり、オリンピックへと到達したこと。そして、そんな姿を見ていた三浦さんが、一線を退くようにリンクでの仕事に打ち込んでいた木原さんのもとへ向かったこと。いろいろな出来事がすべてつながって今ここにある。

そのなかには、その瞬間においては挫折としか思えない出来事もあったでしょう。日本はもともとシングルが活況な地域です。木原さんも三浦さんももとはシングルの選手だったといいます。しかし、シングルが活況であるがゆえにその競争も険しい。木原さんが最後にシングルの選手として出場した2012年の全日本選手権には、羽生結弦氏や高橋大輔さん、小塚崇彦さんや町田樹さん、宇野昌磨さんといった世界のメダルを獲った選手たちがズラリと並んでいます。そこに織田信成さんや田中刑事さん、無良崇人さんが居並んでの熾烈な黄金時代。そこからペアに転向するにあたっては、100%前向きな決断だったものだろうかと思います。唇を噛むようにして団体戦に活路を見出した、そんな分岐点だったのではないかと想像します。

ただ、それすらも巡り巡ってふたりの一部になっている、そう思います。ショートプログラム、ふたりの武器であったリフトが滑り落ちたとき、正と負のどちらへ進むのか別れ道があったはず。そのとき、ふたりを支える別の武器である難度・精度の高いジャンプが力強く踏み留まらせた。ミスの直後の要素スロートリプルルッツ、最高ではなかったかもしれないけれど際どい別れ道で踏み止まった。三浦さんが着氷の姿勢を崩さないまま、上半身を動かしてバランスを保ち、降り切った。ひとりが崩れそうなとき、もうひとりがその倍の強さで支えるような、絆の強さが胸を打つ着氷でした。

ふたりがペアを組んだとき、見ている側も、演じている側もごくごく初めの段階から「合っている」と感じてきました。それはおそらく偶発的なものなのでしょう。持って生まれた体格や、バランス、タイミング、滑りの技術、ナチュラルなスピード感やスピンの速度。それぞれが培ってきたものが、おそらく出会いの瞬間から自然に合っていた。外れたパズルのピースがぴったりハマるように、これだと思えるような感覚があった。努力と研鑽による積み上げは当然するとしても、スタート地点が異例の高みにあったのだろうと感じています。

そして、その「合っている」は滑りだけではなかった。まだ年若かった三浦さんと、すでにスケーターとしてはベテランの域に差し掛かっていた木原さん。年齢とキャリアの差は、木原さんをりくりゅうでリーダーシップを取る存在へと押し上げていきましたが、それはある意味で補強的な部分だったのかもしれません。団体戦の表彰台にのぼるときに、過去の経験からもしかしてブレードに影響があるかもしれないとスペアの靴に履き替えるような繊細さであったり慎重さを持った木原さんは、ショートプログラムのあと崩れかけそうな姿を見せていました。何も終わってなどいないのに、終わったという顔をし、終わったという思考に絡めとられそうになっていた。剥き身の弱さが見え隠れしていた。

しかし、三浦さんは木原さんに「合っていた」。この極限の舞台で、剥き身の自分を暴かれたとき、このペアを支えるぶんの強さを三浦さんは備えていた。木原さんを抱き締め、励まし、思考を変え、ネガティブになりそうになる表現を何度も言い直しながら、これまでやってきたことも今起きたことも何も問題はないし終わってなどいないことをすぐそばで示しつづけた。キス&クライで大転倒してもあっけらかんとしているような強さと前向きさでりくりゅうを守った。思えばそれは始まりの日からそうだったのでしょう。放っておけば静かにリンクを離れていったかもしれない木原さんの手を取り、もう一度戦わせたのは三浦さんなのだから。

このふたりは生まれるべくして生まれたペアではない、そう思います。

はじめからペア種目を志す人がたくさんいて、ペアでの勝利を意図する周囲の後押しを受けて、すでに構築された組織と方法論によってベストなパートナー候補にあたりをつけ、成功するまで何度も何度も組み直して、「遅かれ早かれいずれ誕生していた類のペア」ではない、そう思います。ペアを組むという考えに至る人自体がまだ少なく、活躍を期待されるような環境もまだ乏しく、ほとんど誰も「金メダルを獲れる、獲る、そのために支える」などと思ってくれてはいないなかで、野生の花のように生まれたペア、そう思います。敷かれたレールなどなく、本人が辞めると言ったらそれで終わってしまうような道なき道を、紆余曲折を経て、挫折とも言えそうな分岐点を経て、それぞれが切り拓いてきたペア、そう思います。

そんなふたりが出会えたこと。誰もが「合っている」と感じるような巡り会いを果たすまで、諦めなかったこと。木原さんの時間に三浦さんが間に合ったこと。「運命の出会い」という言葉があるなら、きっとこういうことを言うのだろうと思います。このふたりが出会っていなければ、今も僕は、そしてたくさんの人は、日本がカップル種目で金メダルを獲る姿など想像もしていなかったでしょう。いつか獲れたらいいな、カップル種目強ければ団体戦も勝てるのにね、でもロシアとか強いしね、何か勝てる気しないしね、日本にはシングルがあるしね、さて女子シングル見ようか、みたいな価値観のまま長い時間を過ごしていただろうと思います。

その価値感すら変えたこの運命の出会いを、日本は大切にしないといけないなと思います。今この偉業は、本人たちの途方もない努力と忍耐と天運のもとで偶発的に生まれたものだと僕は思います。りくりゅうがいなくなったあと、じゃあ次またメダルを目指しましょう、そんな再現性のある話ではまだないだろうと思います。ただ、今大会はりくりゅうだけでなく長岡柚奈/森口澄士のゆなすみペアも五輪の舞台に登場しました。五輪の舞台に日本から2組が出場するのは初めてのことであり、「ゆなすみ」にはこの偉業につづいてくれそうな大きな期待感があります。そうして、やる人、目指す人、支える人、経験を持った人、伝える人、信じる人、憧れる人が、増え広がっていけば、価値観の次に現実が変わっていくはず。

いつか、この金メダルを見て、この絆を見て、「自分もこれをやりたい」と憧れる子どもたちがたくさん生まれ、その憧れがたくさんの応援を受けながらそれぞれのゴールまで辿り着けるようになったなら。五輪があるから、五輪にいけそうなカップルだから、だけではなく、「やりたい」というピュアな憧れがゴールにちゃんと辿り着けるように現実が追いついてくれば、日本においてもカップル種目がお家芸となっていくのだろうと思います。力及ばず破れるのは仕方ないけれど、今の日本では力及ばず破れたと納得するところまで競技をつづけるのも簡単ではないでしょう。シングル以上にペアやアイスダンスは、ふたつの魂が必要なぶん、乗り越えるべきものもふたつになるのですから。もし、力及ばず破れたと心から納得できるところまですべての憧れを辿り着かせることができるようになったら、そのなかにはきっとまたりくりゅうのように「合っている」ペアがいるだろうと思います。

そこまで辿り着いてはいなかっただろう木原さんと、

その消え残る心に火を点けた三浦さんとが、

「運命の出会い」を探し求めなくても遅かれ早かれ出会えるような日本になる日、

それが未来のステージかなと思います。

だからこの偉業は、少年漫画ならきっとこんな言葉で締めくくられる奇跡の物語なのかなと思います。

「出会ってくれて、ありがとう」
「見つけてくれて、ありがとう」
「この広い宇宙のなかで、私を」

本当に、ふたりが出会ってくれて、ありがとうです!




そんなことで、ちょっと感極まってきまして、映画化・舞台化を希望する心が昂っているので、心とお金のあるどなたか、三浦璃来/木原龍一主演によるアイスショー「りくりゅう」を企画していただけないでしょうか。本人たちの半生を振り返りながら、最後にあの感動の「グラディエーター」で締める感じの3時間くらいの公演を。途中に絶対に欠かせないキャストとして高橋成美さんが登場したときにそこだけコメディタッチにならないかは若干気になるところですが、最後は絶対に泣いて終われると思いますので。いや、リアルに、次の未来を目指すのにあたっていい案じゃないかなーと思うので、検討してみていただけると幸いです。その際は、木原さんのバイト先で三浦さんがペア結成を誘った場面は、脚色バリバリてんこ盛りで「リアルにはこうは言ってないです」「ていうか全然嘘です」「私ビンタとかしません!」くらいのドラマティックな嘘をお願いします!ショーなんで、軽くビンタするくらいの嘘が入っているほうが泣けると思いますので!


この出会いは一生の宝物ですね!末永く仲良くしてください!

五輪の魔物に襲われたかのようなフィギュアスケート男子シングルの結果を受けて、より一層勝者の尊さと勝利の困難さを強く感じた件。

07:00
魔物はいつもそこにいる、気づいていないだけで!

衝撃的な結末でした。フィギュアスケート男子シングル、あえて言うならば「イリア・マリニンさんまさかの8位」というこの結果。誰が金を獲ったか以上に誰がメダルを逃したかが語られることはそう多くはないのですが、この種目に関してはそうなるのも仕方ないことでしょう。それだけの力量と前評判があったわけですから。

試合についてはすでに十分に振り返られたあとでしょうから、各位で反芻していただければと思いますが、フリープログラムでは全体的に苦しむ選手の多い大会だったなと思います。特に最終グループは「生涯最高」はもとより自分の標準的な出来栄えにも届かない苦しい演技がつづきました。

現地の雰囲気なのか。リンクの状態なのか。団体戦も絡んだ日程問題なのか。あるいはほかの何かなのか。理由は定かではありませんが、日頃の試合とはまったく違うことが起き、だからこそ、そうした状況のなかでも自分のベストに近いパフォーマンスを出せた選手が大きな結果につながったのかなと思います。

カザフスタンのミハイル・シャイドロフさんは、この大本番に向けて4回転フリップやトリプルアクセルから4回転サルコウにつなぐ3連続ジャンプなど、自分にできるすべてを注ぎ込む演技。この1回、この日この時この瞬間に自分をどこまで高めることができるかの挑戦に勝った。そんな演技でした。

そして、日本の佐藤駿さんの演技も素晴らしかった。最後まで4回転フリップを追加するか構成で思案していたようですが、自分をオリンピック団体戦の表彰台まで羽ばたかせた「火の鳥」を貫きました。メダルを欲しがる以上に、最高の自分を五輪に遺すことに徹した、そんな選択だったと思います。この日この時この瞬間に向けて積み上げてきた長い長い準備の軌道の先に今があり、その軌道から正しく美しく跳んだ、そんな演技だったと思います。

過去の記録だけを踏まえるなら、演技を終えた時点の佐藤さんは自身のメダルはないものと思っていたでしょう。ただ、それは過去がそのまま再現されたら、の話。五輪に「たられば」はありません。過去がそのまま再現されるなら改めて五輪をやる意味はないのです。競技終盤の演技は…あえてひとつひとつ痛みをあげつらうのも無粋なので割愛しますが、あれが五輪ということだと思います。だから五輪は難しいし、だから五輪で勝つことは尊いのだ、そんな出来事だったと思います。

↓五輪の舞台で生涯最高を出せたシャイドロフさんが金!日本勢も銀銅!


真っ暗だった鍵山さんの表情が、佐藤さんのメダル確定で満面の笑顔に変わった!

日本はずっと「団体戦」で戦っているようでした!

表彰台に飛び乗る夢を叶えた皆さん、おめでとうございます!



五輪には魔物がいると言われます。もちろん、そんなファンタジーはありません。突き詰めれば、それは「弱かった」に尽きます。慰めの言葉や、勝ち負けがすべてではないという別の価値観の提示や、さまざまな不運・不利がなければというタラレバ繰り言、採点や判定に対する疑義など、過去(あるいは予測)との不一致を補うような言葉はいくつも用意があるのですが、勝利とメダルを求めた選手にあえて端的に言うならば「弱かったから」になってしまうのです。

五輪は過去を競う場所ではありません。過去の実績で五輪の結果が決まるなら、五輪をやる意味はないのです。五輪は日常的な範囲で出せる、平均的なチカラを競うための舞台ではありません。100回やってどちらが強いか、という話であれば、それは体力・技術だけでなく、抑えた出力でどの程度のチカラが出るかといった効率や、資金や環境がどれだけ整っているかという持続可能性など、さまざまな要因も含めての勝負になります。日常とは言うなればリーグ戦のようなものですが、五輪という非日常はそういう性質のものではないのです。

2019年6月24日にミラノ・コルティナ五輪の開催が決まったときから、この日この時この瞬間に向けて人生を捧げ、ここで自分の生涯最高のチカラを出すための長い長い一発勝負は始まっていたのです。途中経過は参考資料でしかなく、すべては初めからこの日この時この瞬間の1回だけの勝負だったのです。その1回きりだから、何年もの準備があるから、初めて出せる生涯最高最大最強のチカラがある。そのチカラは誰が一番大きいのか、その答えが初めて出るのが五輪なのです。「8年とか4年かけて人生すべてを注いだ準備をしたらどっちが強いかな?」の答えは誰も持っていないから、それを五輪で確かめるのです。それが「実力」なのです。だから難しいのです。だから尊いのです。

たくさんの人生がすべてを犠牲にして、たくさんの人を巻き込みながら、この日この時この瞬間に向かってきました。怪我をするかもしれない。病気になるかもしれない。不慮の事故に遭うかもしれない。道具が壊れるかもしれない。用具を盗まれるかもしれない。交通事故で会場入りが遅れるかもしれない。急に音楽が止まるかもしれない。楽曲が使えなくなるかもしれない。世界的なパンデミックで大会が中止になるかもしれない。母国が急に戦争を始めるかもしれない。特定の選手にだけ有利(不利)な判定をする審判が紛れ込んでいるかもしれない。隕石が落ちてくるかもしれない。そんなすべての危機を回避するのは本人の体力・技術だけでは到底足りません。自分以外のチカラや幸運も総動員して、すべてに備えるのです。

今回も団体戦の表彰台に乗ったときにブレードのエッジが刃こぼれしたという話がありました。そんな事故・不運があったとしても、刃こぼれしたエッジで転倒すれば、それは「8年とか4年かけて人生すべてを注いだ準備」に不足があったということ。靴が壊れてもいいように同じくらい使い慣れたスペアを用意する、であるとか。何を踏むときにも本当に踏んでいいのか確認する、であるとか。あるいは刃こぼれしても直せるような体制を組む、であるとか。それもこの長い長い一発勝負の一部であり、ほんの入り口でしかありません。「道具が壊れる」なんてのは、さっきありそうな危機を適当に列記したときにごく自然に入ってきていますよね。冷たい言い方ですが、当然備えるべき範囲のことなのです。

日本はその点で本当に幸運だったというか、素晴らしい備えができていたというか、佐藤駿さんを指導する日下匡力コーチが過去の苦い経験からブレードを研磨する技能を習得しており、今大会でもその技能によって各選手が問題なく滑れるように応急処置ができたといいます。本当ならば「もし靴が壊れたらどうしよう?」の答えを個々に持っておくべきでしたが、「研磨する」の選択肢を行使できたのは、まさに「支える人たちのおかげ」であり「幸運(=過去の不運とも言える)」であると思います。ひとりで戦っているわけじゃない、ありがたいことです。そんなことに思い致していれば、普段から支える人たちへの感謝の念が自然とこぼれると思うのです。自分では到底やり切れない準備を、その人たちが担ってくれているのですから。ほかの人の人生を使わせてもらっているのですから。支える人に感謝の念がこぼれない選手は、備えが足りない、僕はそう思います。あなたはまだ自分ひとりで戦って勝てる、そう思っている段階なんでしょうね、と。

五輪の魔物とは、そういうすべてのことなのです。

そこで起きるすべてが魔物のようになり、自分が今まで気づいていなかったこと、備えが足りなかったことを突きつけてくるのが五輪であり、そのなかでも特に気づいていなかったことや備えが足りなかったことを、人は未知であるがゆえに「魔物」と呼ぶのです。

日常のなかでは些細な、取るに足らないことが、「8年とか4年かけて人生すべてを注いだ準備をしたらどっちが強いかな?」という極限の戦いにおいては日常の千倍・万倍の強さで効いてきます。自分が重圧にどれだけ強いのか、重圧のなかで使える体力はどれだけあるのか、ほんの少しだけ配慮を欠いた言葉がどれほどの悪意の広がりを生むのか、今まで自分を知りもしなかった人たちが急に猛然と悪意や好意を向けてきたときどんな影響を受けるのか、自分がどんな責任や義務を負うことになるのか、すべては五輪でしかわからないことです。五輪に匹敵する舞台は五輪しかないのですから、五輪を知らない選手がいるのは無理からぬことです。が、それも備えのひとつ。「期待の若者にあえて早く一度経験をさせる」とか「弱いことを前提に徹底して守る」とか、できること・してあげられることはあるはず。できなかったのは足りなかったということ。備えが足りなかった結果として起きたことは、甘んじて受け入れるしかありません。そして、その不足が何で、どうすれば解消できたのかを確かめる機会もまた、五輪にしか存在しないのです。今度はすべてに備えられたのだろうか、自分は本当に強くなったのだろうかと自問自答しながら4年後に向かう、それしかないのです。

そんな難しい戦いだから、五輪の勝者は尊いのだと僕は思います。

まして、五輪を何度も勝つというのは、途方もない尊さなのだと思います。

五輪は出てみないとわからないように、五輪に勝つとどうなるかというのは勝ってみないとわかりません。期待も重圧もさらにいや増すでしょう。好意も悪意もさらにいや増すでしょう。責任も義務もさらにいや増すでしょう。そのとき自分がどうなってしまうのかは、その立場になってみないとわからないこと。それはきっと「8年とか4年かけて人生すべてを注いだ準備をした一発勝負(自分だけ常時魔物遭遇モード)」なのだろうと思います。想像もつかない世界の話ですが、そういう世界を見させてもらうことに、素晴らしい喜びがあり、尽きない感謝があります。願わくば今大会も、そんな途方もない勝利が見られるといいなと思います。すでに日本勢による同種目連覇の可能性は潰えましたが、種目問わずであればまだまだチャンスはありますのでね!



「既知の課題」と認識できていれば、人はそれを「魔物」とは呼ばない!

金に迫る銀!フィギュアスケート団体戦は最高の演技を8つ重ねた日本チームが、最後まで分からない激闘で誇らしい銀を獲得の巻。

12:00
最後の最後まで金に迫った銀!

熱戦つづくミラノ・コルティナ五輪。日をまたいで激闘がつづいていたフィギュアスケート団体戦は、最後の最後の最後までメダルの色を争う競り合いがつづく熱い戦いとなりました。アメリカが金、日本が銀、最後に色は分かれましたが、どうなっていたかわからない、どうなっていても不思議はなかった、そういう決着だったと思います。

団体戦の仕組みはアイスダンス、ペア、女子シングル、男子シングルの4種目で予選(リズムダンス/ショートプログラム)、決勝(フリーダンス/フリープログラム)を実施し、その際の順位をポイントに換算して、その総合点で競うというもの。各カテゴリの1位なら順位点10点、2位なら順位点9点…と加算していったその最終スコアがアメリカ69点、日本が68点というものなのですから、本当にあとひとつ、どこかのカテゴリで順位が違っていればという話でした。素晴らしい戦いで、誇れる銀になったと思います。

↓なんかもう感動のフィナーレみたいになりましたけど、本番の個人戦はこれからです!


戦前の計算では、金に至る道を見出すのはかなり難しいように思っていました。各種目の下馬評でいうと、アイスダンスはアメリカ、ペアは日本、女子シングルは日本、男子シングルはアメリカが上回るだろうというところでした。ただ、順位点での換算となったとき、日本はアイスダンスで大きな順位点は得られないであろう見立てでしたので、そこでの差を挽回するには至らないだろうと思われました。

しかし、日本チームは金を追い、金に迫り、最後の最後まで可能性を追求しました。緒戦となったアイスダンスのリズムダンス、日本のうたまさペアは五輪という大きな重圧のなかで躍動し、8位・3点を獲得する見事な滑り出し。アメリカは現在世界一のチカラを持つとみられるチョック/ベイツ組でしたのでもちろん1位・10点の発進とはなりましたが、悪くない立ち上がりでした。

ペアでは日本のりくりゅうペアが個人戦の金を宣言するかのようなチカラを存分に示して日本が1位・10点、アメリカは5位・6点と差が詰まります。互いに世界のトップ選手を抱える男女シングルでは、まず女子で日本の坂本花織さんが集大成の大会にふさわしい圧巻の演技で1位・10点とし、アメリカのアリサ・リウさんの2位・9点をおさえます。

そして、日本にとって大きかったのが男子シングル。今季圧倒的なチカラで別次元の戦いをつづけるアメリカのイリア・マリニンさんに対して、日本の鍵山優真さんが「生涯最高」に近い演技で対抗します。マリニンさんは持てるすべての技を繰り出したわけではない「団体戦としての堅実な構成」「初の五輪らしさのある演技」でしたが、そのわずかなつけ入る隙を見事に突いて日本が1位・10点を獲得したのです。

↓会心の演技が「金」への扉を1枚開いた!



10チーム参加の予選を終えてからわずか数時間後に始まった決勝最初の種目アイスダンスのフリーダンスでは、力量通りの展開ではありますが、アメリカが1位・10点を加算し、日本は5位・6点の加算となりました。ここで日をまたぐわけですが、その時点での順位点はアメリカが44点、日本が39点というものでした。ここから規定を睨みつつ展望を計算するわけですが、本当に紙一重、糸一本のような道が確かに見えていました。

ペアでまず日本が1位・10点を取り、アメリカはショート順通りに5位・6点だったとする。これで1点差。女子シングルではこれは当日の出来いかんという部分もありますが日本が1位・10点を取り、アメリカは2位・9点だったとする。これで同点。最後の男子シングルでアメリカが1位を取れば、アメリカが金となる…それは逆に言えば、ペアと女子シングルで「こうなりそう」な範囲の結果になったとき、アメリカは男子シングルで勝たねばならないということでした。

全体の日程を考えたとき、ショートとフリーで2種目まで可能なメンバー入れ替えはまず日程の近い男子シングルで使いたいところでした。団体戦決勝から中1日で始まる個人戦、同じ日程間隔のアイスダンスに比べても4回転ジャンプの連発など体力的負担が大きくなる男子シングルは入れ替えをせずにこなすのは避けたい、避けるべきであろう種目だったはず。しかし、日本チームは鍵山優真さんと佐藤駿さんというグランプリファイナルの表彰台に立ったふたりでの入れ替えができますが、アメリカにはこのふたりを上回れるほどの入れ替えメンバーはいません。これがまさに団体戦。日本は世界一のりくりゅうペアと坂本花織さんが連闘でプレッシャーを掛け、男子シングルにバトンをつなぐことで、アメリカに「イリア・マリニンの連闘」を強いた。そうしなければ勝てない状況を作った。

それでもまだ日本の勝機は紙一重、糸一本です。「こうなりそう」な結果の通りだとアメリカが1点差で勝利する。ただ、どこかでもう1点差がつく状況…具体的には女子シングルに入れ替えで出てくるアメリカのアンバー・グレンさんが3位以下に留まるなどした場合、順位点で日本とアメリカが並ぶケースがあり得ます。その際は、「異なる種目の中で上位2つの順位点を合計して決定」となります。アメリカはすでにアイスダンスで1位&1位の20点が確定済ですが、その他の種目では20点の可能性はありません。逆に日本は残る3種目すべてで1位&1位で20点の可能性があり、ペアと女子シングルはそうなる可能性が高い。仮に男子シングルでアメリカが勝ったとしても、それは2位&1位の19点まで。つまり「総合で同点ならタイブレークで日本が勝つ」が濃厚であると。アメリカはリードする立場ながら追われる怖さをこれ以上ないほど突きつけられて臨む決勝です。

まず迎えたペアのフリープログラム。意地を見せたのはアメリカのカム/オシェイ組。苦しんできたジャンプ要素も踏み止まって決め、団体金を取るために頑張れるのは自分たちだという会心の演技。演技終了後に咆哮しながら抱き合うような演技で、中継解説の高橋成美さんからも「本当に嬉しい!」と、国とか勝負とかを超えて、同じスケーターとして熱演を讃える歓声があがります。この会心の演技は、あとから演じたカナダのペレイラ/ミショー組にスロートリプルループでのミスが出たことで、予選順位を覆す4位・7点につながりました。日本のりくりゅうペアも「史上最高」に迫るような素晴らしい演技で1位・10点を獲得しますが、団体戦としての趨勢はここで大きくアメリカに傾きました。この時点でアメリカ51点、日本49点。日本は男女シングルの順位で都合ふたつ上回る必要が出てきました。

↓フィニッシュと同時にガッツポーズが出るようなりくりゅうペアの見事な演技!私はガッツポーズが終わるまで降りない!


つづく女子のフリー。揺蕩う勝負はまだ決着を許しません。好演技つづく流れで4番目に登場したアメリカのアンバー・グレンさんは、演技冒頭に3つ連ねたジャンプ要素で着氷のこらえや、乱れによるコンビネーションの抜けなどが生じ、加点の部分で伸ばすことができませんでした。中盤からはしっかり立て直し、抜けたコンボもリカバリーしたものの、先に演技を終えていたジョージアのアナスタシア・グバノワさんには及ばず。これが初の五輪での初の演技という難しさでしょうか。その後、日本の坂本花織さんが力量と経験を高らかに示すような圧巻の演技で1位・10点としたことで、日本はここで2点差を詰めます。日本、アメリカがともに59点で並ぶ大接戦。メダルを確定させたうえで金と銀の色を争う、勝負は男子シングルでの最終決着に持ち込まれました。

↓「必ず20点取ってきて!」にしっかり応え、アメリカに連勝した大エースの働き!



同点で迎えた男子シングル。この演技で日本とアメリカ、上回ったほうが金、もう一方は銀となります。ジョージアとイタリアによる銅メダル争いが、地元イタリアのマッテオ・リッツォさんによる「嬉しさでリンクに泣き崩れる」ような演技で決着を見たのち、その素晴らしい空気・高揚感のなかで最終決着は始まりました。これが大会終盤であったなら…全員が大目標への挑戦を終え、「ここで出し尽くすことになっても構わない」と思える大団円の瞬間であったならと惜しまれるような時間です。

先に演技をするアメリカのマリニンさんは、多彩な4回転ジャンプを繰り出しますが、大技4回転アクセルには挑まず。4回転ループは3回転となり、演技後半に組み込んだ4回転ルッツでは大きくステップアウトしてコンビネーションにできず繰り返しのジャンプとなりました。プロトコルを見ればスピンやステップでの細かい取りこぼしも散見され「生涯最高」はもとより「期待された出来栄え」にも及ばない演技。それでもスコアは200点を超えているのですからさすが現役世界王者という話ではあるのですが、誰も届かないような演技ではありません。

順位で勝つしかない日本。団体戦最終演技者として登場したのは佐藤駿さん。今季さらなる飛躍を見せた「火の鳥」は冒頭の4回転ルッツを美しく決めると、トリプルアクセルからのコンビネーションも見事な出来栄えです。4回転トゥループからのコンビネーションもお見事。ジャンプ完璧、気迫最高潮。途中一瞬バランスを崩しそうになった瞬間もサラッと乗り越え、慌てるそぶりすら見せません。佐藤さんもこれが初の五輪・初の演技ですが、五輪の「魔物」をもぐら叩き並みの速さで返り討ちにするような素晴らしい演技です。フィニッシュのあとの力強いガッツポーズは、これ以上ない最高の演技だったことを示すものでした。よくやってくれたと抱きしめたいような誇らしい演技でした。金に手をかけるにふさわしい日本のアンカーでした。スコアを見るまで本当に決着がわからない、金に迫る銀でした!

↓ありがとう日本!ありがとう駿さん!素晴らしい団体戦でした!



ここに至るまで、メダルの色が変わりそうな瞬間はいくつもありました。フランスが決勝に進んでいればアイスダンスでもしかしたらひと波乱あったのではないか、とか。日本の苦しい種目とアメリカの特に得意な種目が重なっていなければ、とか。ここでこの演技が生涯最高レベルでなかったなら、とか。どのカテゴリに誰を出すかの采配が違っていたらあるいは、とか。あそこであのスピンが、とか。あそこであのステップが、とか。机上の計算はいくつも浮かびますが、五輪の舞台で出せたものだけが本当のチカラ。結果を真っ直ぐに受け止め、素晴らしい戦いの証としてこの銀メダルを誇ってもらえたらいいなと思います。

ここから選手たちはそれぞれ個人の戦いに向かっていくわけですが、団体戦が先に行なわれることで「一回滑って落ち着けた」とか「手ぶらではないことが確定した」など前向きな効果もあるでしょう。日本勢はホッカホカにあったまって臨めると思いますので、団体戦に出場していない選手も含めていい感じで五輪にノッていってもらいたいところ。

将来的には、やはりもう少しカップル競技での飛躍というか、個人戦でも複数エントリーできるような地力があると団体戦の金がハッキリ見えてくるはずですので、チャンスと思って各選手には狙ってもらえるといいのではないかと思います。昨今はフィギュアスケートも競技の方向性を模索しているようで、ショートとフリーで競う建付けから技術系のプログラムと芸術系のプログラムで競うような形への変更も検討されているとのこと。日本でも、これまで競技会を盛り立ててきたスケーターたちがプロとしてそれぞれの表現を追求する取り組みが盛んになってきていますので、そこで広がる価値観が競技会にも波及して、アイスダンスであったり芸術系のプログラムであったりの発展につながっていくと、必然として金にも手が届くだろうと思います。そんな明るい未来に向けて、頑張っていってください!

↓個人戦でもこれ以上の会心の演技ができますように!



団体戦であったまりましたし、今大会は個人戦での金も見られそうですね!

羽生結弦氏「RE_PRAY」Blu-ray&DVD発売にあたり渋谷に神殿が現れたので、巨大な壁画や天井画を巡ってPRAYしてきた件。

08:00
祝「RE_PRAY」Blu-ray&DVD発売!

数字にこだわりのある皆さんにとって、2026年の1月23日は忘れがたい日になったのではないでしょうか。羽生結弦氏によるアイスストーリー2nd「RE_PRAY」のBlu-ray&DVD発売が発売されたのです。縁起もよく、特別な想いがこもっていそうなこの日付。羽生氏とともに過ごしていると、ふと10年後くらいにアリバイを尋ねられてもハッキリと記憶が甦りそうな気がしてきますよね。「その年の1・2・3の日は確かRE_PRAYのディスクが出たから渋谷にいました」的な感じで。もしかしたらこの世界線では「推しがアリバイを証明してくれる」的な話もあるかもしれませんね。

さて、そんな記念の日を迎えるにあたり、遅ればせながら僕も行ってまいりました。東京を代表する中心地・渋谷スクランブル交差点の目の前に居を構える渋谷TSUTAYAさんが、以前実施したGIFT神殿につづき、恒例の神殿を建立してくれたのです。すでに数日前から多数の参拝報告がSNSを席巻していましたが、大変荘厳で秀麗なるその空間、発売日の歓びを盛り上げるには最高のパワースポットとなりそうです。

↓ちなみに前回のGIFT神殿はこんな感じでした!



↓その前のプロローグ神殿はこんな感じでした!




これまでの経験から順路的なものへの理解も深まり、今回は渋谷の地下街…通称しぶちかからA6出口方面を目指して店舗に向かいます。すると、さらに地下の奥部へとくだる階段にはRE_PRAYの天井画が描かれているではありませんか。近くの通路沿いには「足元注意」なんて掲示があったりしますが、これは足元に意識を向けている場合ではありません。天を見上げながら吸い込まれるように店舗に向かっていく僕。

するといきなりの展開ですが、入口正面、まさに神殿に足を踏み入れた第一歩目の地点に財宝を整然と並べた柱が立っておりました。「RE_PRAY」発売の情報と、羽生氏による注力ナレーションも至福の紹介映像、そしてもちろんの商品展示、さらには店員さんによる熱いポップが並び、RPGによくある「入口付近にいきなり財宝が見えてる」タイプの神殿か何かのよう。すべての来店客を出迎えるだけでなく、単に地下通路を通行しているだけの人も自動ドア越しに誘引するような輝きを感じます。

しかし、それはまだ神殿のほんの入り口。奥に向かえば、かつてないスケールで展開された大壁画の間が待っているではありませんか。5英雄とか5柱神とかの呼び名がありそうな壁画展示と、巨大モニターで紹介映像をエンドレスリピートする映像展示。その全容をおさめようとカメラを構えながら後ずさりすると、別の面にあるSixTONESのパネルの後ろまで下がる必要があるほどの広大な「間」です。「この後ずさりはSixTONES参拝客に怒られそうだな」と、全景は画角の広いスマホのカメラでおさめることに。今までにない盛り上げを…とTSUTAYAさんも気合を入れてくれたようで、ありがたい限りです。

↓渋谷を行き交う人々を出迎える天井画!
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↓神殿に一歩入ればいきなり財宝が眠る柱!
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↓RPGならクリアに不可欠なヒントが書いてありそうなポップ!
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↓天上からの光が差す荘厳秀麗な壁画の間!
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↓改めて5英雄の壁画を正面から堪能します!
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しかも今回の注力ぶりはこれだけではありません。お賽銭…じゃなくてお会計に向かう人が必ず訪れるレジスペースにも羽生氏「RE_PRAY」の特別な装飾が。この特別な場所への装飾は支払いをする買い物客の皆さんにとっても大きなインパクトを残すものでしょう。1000人に1人くらい「新しいPAYかな?」って思う人もいるかもしれませんが、そういう「出会い」みたいなものが、新しい世界観と最高峰のエンターテインメントを知るきっかけになるといいなと思います。まぁ、あまり「出会い」が生まれると、最近やたらと倍率が厳しいチケット争奪戦(※ゴリゴリ落ちるんですけど!?)がさらに激しくなりそうですが、それもまた嬉しい悲鳴というやつでしょう。

ひとしきり神殿を詣でて帰ろうとした出口の先にも巨大な壁画が設置してあるなど、相変わらずの見事な展示ぶりで充実の詣でを楽しんだ僕。本来なら「RE_PRAY」を買い求めるべきところではありますが、初回限定ボックスをすでに通販で購入済ということもあって、感謝の念を強く心に抱いて渋谷TSUTAYAさんをあとにします。いつも素晴らしい展示をありがとうございます!

↓レジスペースでも「RE_PRAY」が会計を見守る!
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↓お見送りの壁画からは「また詣でにおいで」「それこそまさにRE_PRAYだよ」の声が聞こえた気がしました!
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つづいてはこちらもおなじみのタワーレコード渋谷店さんへ。お店の入口でたくさんの若者がたむろする祭りのような雰囲気のなか、皆が見上げる視線の先を追うと、入口上に大きな「RE_PRAY」の看板が据えられています。タワレコさんもかなりチカラの入った展示になっている模様。店内では1階の新商品エリアに祭壇を設けて「RE_PRAY」をプッシュしてくれています。偶然たまたまで特に狙いではないのかもしれませんが、隣の展示が宇多田ヒカルさんだったものですから、「BOW AND ARROW」から「JANE DOE」へのほのかなつながりとか、初号機乗ってそう的な雰囲気とか感じたりして、こういうのもショップの腕の見せ所なのかななんて思ったりしました。

その勢いでHMV渋谷店さんに足を伸ばせば、こちらもしっかりと祭壇で出迎えてくれます。店舗のメインストリートもいえる中央通路沿いに設けられた祭壇は、紹介映像に加えて渋谷TSUTAYAさんに並び立つように長文渾身メッセージのポップが添えられ、「RE_PRAY」を押し出してくれています。この日は何となく渋谷界隈だけの巡りでしたが全国でこうした展示が設けられ、そこで新たな「出会い」が生まれているのだろうと思うと、未来もまた楽しみになるというもの。永久に手元でリプレイできるよう、ゲットしていただけるといいなと思います。「平昌五輪の金メダルは見ました!」感じの方がアイスストーリーに出会ったときの驚きとか興奮とか情報収集とか、そういう心の動きをお裾分けしていただくことも、界隈としての大きな楽しみであり、喜びですので。

↓タワレコさんも大型看板でお出迎え!
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↓店内には祭壇が築かれていました!
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↓HMV渋谷さんでも大きな祭壇を設けていました!
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とまぁ、そんな巡りやら動画まとめやらをしておりましたもので、「RE_PRAY」初回限定ボックスは受け取ったものの、取り急ぎ開封の儀だけ行ないまして、映像を拝見するのは週末のお楽しみとなりました。素晴らしい可愛らしさで「使う用が必要だったな…」「ほかのも全種出してください」「区々たるラスボスバトルごっこやります」と見惚れた8bitユヅルキーホルダーやら、魔法のように変身する特典ステッカーなどを愛でつつ、改めてこの「RE_PRAY」の世界に浸っていこうと思います。公演自体も何度も見て、映像も繰り返し見たのに、さらにディスクでも見たくなる、そういうものがあることをありがたく思いつつ、この先も楽しんでいけるよう、もう一回くらい神殿を詣でまして今後のチケット当選祈願などもしたいなと思いました。2026年はゴリゴリ落ちそうで怖い、嬉しい、怖い、楽しみです!

↓「RE_PRAY」神殿の巡りの模様を動画にまとめました!


Echoes神殿の際もよろしくお願いします!

壁画のルームに椅子とか置いてあるイメージです!



まだ行けてない巡り案件もあり、メンテ明け前なのに繁忙期到来の感触!




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