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若者たちに元気とやる気をいただきました!

あけましておめでとうございます。年々低下する活力と体力を前に、むしろこうやって衰えていけることこそが穏やかな死を迎えるために必要なことなのだ、だって元気いっぱいの状態で死ぬのヤダもん、「生きててももうそんなにしたいこともねぇなぁ、死のう」のトーンで死にたいなどと思って迎える2026年ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

9連休だか10連休だかを決め込んだ今回の年末年始は例年以上に疲労感が体内から掘り出されてくるようで(※表面上の疲れが回復したあと真の疲労感が奥底から浮き上がってくるの意)、ゲームと漫画とスマホとの指先活動だけで時間を埋めながら過ごしておりましたが、いよいよ仕事始めに向かって起き上がらねばならないという覚悟がみなぎってきました。

その元気とやる気をくれたのは、例年と同じく東京箱根間大学駅伝競走、箱根駅伝です。何を運ぶわけでもないけれど箱根路を2日間で行って来いする学生たちの青き春から零れ落ちる雫によって、毎年どれだけ励まされることか。「TVerで見られるの最高だよな」「寝床から一歩も出なくても箱根駅伝見てられる」「うわ、寝床から出る前に戸塚着いた」「んあ!寝床から出る前に平塚着いた!さすがにもう起きねば!」「山の名探偵を追う黒の組織を見ながら食べる残り物のおせちは美味い」などと、彼らの奮闘からいただくエネルギーで何とか正月を脱することができる…そんな実感を強く覚えます。

そして、その若者たちの背景にある無数の人生にも。親御さんや兄弟家族、友人知人、お世話になった人、支える人、伝える人、そういう人たちの無数の人生が動き、この2日間に輝く姿を前にようやく、自分も停滞してはいられないなどという切迫感を覚えたりもします。輝かないまでもせめて何かしなければならない、という衝動が生まれます。近くで携わる人に比べて何を言えるわけでもないのですが、そうした衝動と、それを生み出してくれたことへの感謝、そんなことを思いながら今年もまた箱根駅伝を振り返っておきたい、そんなことを思うのです。

↓今年の優勝は往路新・復路新・総合新で二度目の三連覇を成し遂げた青山学院大学!



これだけ多くの人が関わる出来事ですので、それはもう無数の出来事やドラマがあるのでしょうが、何と言っても今年を象徴するのは5区に昇った黒の朝日、「シン・山の神」を襲名した青山学院大学・黒田朝日さんの超次元の走りでしょう。往路・復路・総合のすべてで新記録を樹立した青学の強さは5区ひとつで説明できるものではありませんが、それにしても5区は凄まじかった。数々の山の名手たちが築いた記録をさらに1分55秒も上回り、1時間9分台から1時間7分台へと「8分台飛ばし」の記録更新を成し遂げました。最終的に総合2位の國學院大學との差は2分33秒あったわけですが、5区で青学が國學院につけた差が2分49秒(※5区での区間2位との差は2分12秒)だったことを思うと、この超次元の走りで勝負の大勢が決したことは間違いないでしょう。

もちろんそれ以外の区間でも青学が素晴らしい走り(※5区を含めて区間賞3、区間新2)を見せたことはその通りですが、青学の層の厚さや全体を通じての速さはむしろ「あれ?あの5区を除けば國學院が勝ってたんだ」という角度から、青学以外の各チームの走りの歴史的な素晴らしさに目を向けていくきっかけになっていくものなのかなと思います。「青学の5区凄まじかったな」「でも5区がなくても青学強いな」「5区がなければ國學院もあったな」「その勝負を決めた5区の走りはやっぱりめちゃめちゃ凄いな」「でも今年は区間新5個出てるし全体的に超速だな」「ていうか17位まで10時間台なのか」「昔なんて10時間台なら優勝だったのに」「若者たちの成長は著しい!」などと螺旋階段をのぼるようにして、たくさんの人への称賛を積み上げていけたらいいのかなと思います。

どうしても順位がつくものは誰かが勝ち、誰かが負けるわけですが、順位はあくまで相対的なものでしかありません。全体の進化があったうえで、頂点の突出もあるわけで、勝った者だけが素晴らしいなんてことはありません。テレビで映るものやSNSでバズるものだけでなく、無数の素晴らしい人生の瞬間があったことに思いを馳せながら、「自分も頑張ろう」と思えるようになれたらいいなと思います。今の進化にはついていけない相対的な周回遅れ組であったとしても、自分比では前に進んでいられるよう、奮い立つ気持ちになれたらいいなと。

↓山を制するものは箱根を制すの言葉通り、勝負の5区にエースを起用した青学の采配ズバリ!



そうした走りの部分もそうですが、人間力というか生き様や立ち振る舞いのような部分で、本当に現代の若者たちは素晴らしいなと、光を見つめるような気持ちになる大会でもありました。5区で超次元の走りを見せた黒田朝日さんは、レース後のインタビューで今後の目標を何度も聞かれていましたが、そのたびに「実業団で駅伝で活躍する」「マラソンで世界を目指す」の2軸を繰り返し繰り返し丹念に強調していました。大きな勝負に勝ったあとの一番浮つきそうな瞬間でも、自分が何を生業として競技生活をつづけていくのかという構造に思い致した視点を持ちつつ、かつ大きなビジョンも展望していく姿には、目の前の競技を見据える解像度の高さも、社会や人生のなかに自分の走りがあることを俯瞰する視野の広さも併せ持つ姿が見えるようで、立派だなぁと心から感心しました。自分が大学生の頃、あんな偉業をやってのけたらまず「イェー!」「次は金メダルっすね!」から始まって、とんでもない舌禍を起こしそうな気がするのに。いや、何なら今この瞬間でも、自分より若者たちのほうが大人に見えさえします。あとはもうヨソの監督車の横を通過するときに深めの会釈をできるようになったら、社会人20年戦士くらいの落ち着きが出ることでしょう。

苦しいレースとなった駒澤大学でアンカーをつとめ、見事な区間新記録(※2年連続)を樹立した佐藤圭汰さんも印象的でした。佐藤さんはこの世代の第一等のランナーとして箱根駅伝全体をも代表するような選手ですが、何と大会1ヶ月前に大腿骨の疲労骨折をし、そこから2週間程度の調整で急ピッチで今大会に合わせてきたのだと言います。現代SNS社会では、こうした穏便な選択ではない「尖った事例」に対してやたらと批判が巻き起こったり(※休むべき的な/未来があるのだから的な)、責める相手を次々に探し始めたり(※指導や管理がうんたらかんたら/メディアの拝金主義がうんたらかんたら/やり甲斐搾取がうんたらかんたら)するようなところがありますが、佐藤さんの言葉を尽くした振り返りはそうした批判すらも包み込んでいくような深さと大きさがありました。「この9区間、9人だけじゃなくてチーム全員、チームの関係者の方々全員が自分のことを思って最後まで支えてくださった」「その借りを返そうと思ってしっかり一生懸命走って、最低限恩返しができる走りができたのでよかった」という振り返りに、僕は本人の強い決意を感じましたし、それを尊重し支えた人々の思いを受け取りました。こうした受け答えがその場の即興で出るというのは、普段からの深い思いがなければできないことです。駒澤としては故障者なども多く悔しい大会となったのでしょうが、エースが最後に意地を見せてくれたことで、いくばくか明るい締めくくりになったのではないかと思います。

そして、ポメラニア〜ンジャンプの件。往路の3区でレース中に犬がコースに入り込み、國學院大學の野中恒亨さんが犬と接触しないようジャンプして避けたという事例についての、野中さんや仲間たちの対応は見事なものだったなと感心しました。まずレース中に犬がコースに入り込むことは、それはもちろん避けていただきたいことです。駅伝を犬連れで観戦に来た人なら当然ですし、たまたま散歩中の人だったとしても道路に犬が飛び出すのは危険ですので、犬のためにも交通の安全のためにも避けるべきです。リードなりをつけてしっかり安全な散歩をしてもらいたいもの。とは言え、このことで犬や飼い主をSNS総出での業火が燃やし尽くすこともまた僕は違うのかなと思っています。駅伝は誰のものでもないみんなの道路を占有させてもらっている立場です。世のなかの犬や飼い主のすべてが駅伝に配慮するいわれもなければ、ただの1匹も道路に飛び出さずにいられるはずもないでしょう。リードをつけていてもうっかり飼い主の手から外れるときもあるわけで、こうしたミスはときに起きるもの(※まさか妨害のためにワザと犬を放ったわけでもないでしょうし)。不注意は相応に反省していただきたいところですし、法律やら条令やらに照らして何がしか対応はあるかもしれませんが、SNS総出の業火で燃やし尽くすような事例とは違うと思うわけです。

その点で野中さん本人がインスタグラムにその場面を「ポメラニア〜ンジャンプ」という一種のユーモアも交えて投じたことは、巧みだったなと思います。その場面を本人が投じれば、そういう事例があったことや「何でもないただの一場面、というわけではない」ことは十分に伝わります。ただ、そこに添えた文面はどうとでも取れる内容であり、むしろ非難を和らげるほうに働きそうな軽やかなものだったことは、正義の暴走を抑制するものだったなと思います。あわせて4区を走った辻原輝さんのXでは、愛犬の観戦の模様を写真で示しつつ、コース乱入の危険性の指摘と、リードやハーネスをつけての観戦という対応策の要請を、絵文字など交えつつ行なっていました。事例に遭遇した本人よりも一段階抑制を弱めて、言葉は穏やかだけれど明確な意思を表明する、距離感・温度感ともにイイ塩梅の発信だったと思います。

当事者の野中さんがこの件での取材に応じた際のコメントもまた見事なものでした。記事によれば「バランスが崩れて、足がつってしまったことは事実。そこからペースが上がらなかった部分と、ちょっと動揺した部分はあった」という被害部分の指摘を行ないつつ、「ただ単に言い訳ですし」「(問題が)あろうがなかろうが、たぶん(区間賞の中大)本間(颯)君には負けていたんで。そんな影響はなかったのかなとは思います」「犬に罪はないですから。起きたことは仕方ないのかなと」とバランスを取り、この事例を「悪を叩いて正義が楽しく遊べる火種」として利用させませんでした。当事者として何も言わないはレースの安全のためにも違うけれど、この件をSNSの炎上のネタにして遊ぼうとする勢力には加担しないといったバランス感覚は、競技生活だけでなく今後の社会生活のなかでも発揮されそうな素晴らしい人間力だなと思いました。企業広報とかやったらいいんじゃないかと思いましたよね。

これが自分だったら、「あの犬何なんすかね!」「アレがなければ終盤加速してました」「完全にアレで失速しましたわー」「犬にも飼い主にお縄が必要っすわ」から始まって「いっそ蹴ってやろうかなと思いましたよマジで」「下手に避けようとすると僕が危ないんで、むしろ蹴ったほうがトータルで安全まであるかな」「やっぱ飼うなら猫っすよね!」くらいまでクチを滑らせて、飼い主も自分も大学も丸焼けにしちゃうんじゃないかと思って本当に背筋が寒くなります。いやもうホントに、対外的な仕事は若者に任せて、昭和の年寄りは過程とか人間性とかを問われない「製品」だけ出してくようにしたほうがいいと思いましたからね。こんな素晴らしい若者たちが春には弊社にも入社してくるんだなと思うと、ますます会社のなかの立場が薄ら寒くならざるを得ないですよね。そう言えば、最近僕が何か会議で発言するたびに若者たちが黙り込むなーと思ってたんですが、アレは論破されてたんじゃなくてドン引きしてたのかもしれませんね!向こうのほうが人間的に成熟してるから黙ってくれてただけで!

↓見出しだけ見ると飼い主or犬が話してみるみたいに見えますが、違います!


↓この手の事例をホッコリ事案にするとは、これが昭和の世界観か!


↓人生を懸けた大会中に、自分の走りは終わったとは言え、こういう発信にも気が回る人間力の素晴らしさよ!

國學院大學の名前を背負って、「推しに迷惑は掛けられぬ」と肝に銘じる犬の凛々しさ!

駅伝も犬も愛する素敵な若者でしたわ!



優勝校・上位校のゴール、白熱のシード権争い、そして各校が無事に箱根路を走り切る姿を見て、ようやく動き出した2026年。若者たちから元気とやる気を分けていただきつつ、若者たちの素晴らしさから覚える危機感も抱いて、今年も頑張っていこうと思います。例年、「もう今年の正月は何にもしない!」「駅伝の感想とか書かない!」「食べて飲んで寝る以外何もやらない!」と思って年が明けるのですが、箱根駅伝を見終わる頃には背筋が伸びるこのシステム、日本のためにもぜひ末永く維持していけたらいいなと思います。選手・関係者・支える人々・犬・猫・その他に感謝しつつ、2026年という長い路を走り始めたいと思います。ということで、今年もどうぞよろしくお願いいたします!




トラブルも軽やかにジャンプでかわしていく、そんな年にできますように!