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世界陸上よ、日本の東京に来てくれてありがとう!

夢のような9日間が終わりました。東京五輪・パラリンピックを哀れに思った世界陸連が運んできてくれた世界陸上という夢は本当に素晴らしい体験となりました。僕も何やかんやで9日間全日国立競技場に日参し、「世界」を全身に浴び、超熱狂と超興奮を堪能しました。

1年前の時点では「9日間も行っていられるのか?」というそこはかとない未知数もありましたが、しっかり振り切っておいてよかったなと思います。日々高まる情熱を吸い尽くしてもらい、身体と心が疲労困憊となって「もう大丈夫です…」となるには最低9日間は必要だったなと終わってみて思いましたから。

今は少しだけ「2〜3日なら寝なくても大丈夫だったのでは?」「寝ないで午前セッションの沿道に立てばよかったかも?」「そしてそのまま0時まで夜セッションを見ればよかった」と、持続可能性を無視したプランが時間を巻き戻しての再考を促してきてはいますが、「楽しい」と「疲れ切った」を同時に感じられるところでおさめておくのがいい塩梅かもしれません。

僕はこの大会を「東京五輪で陸上のチケットだけが9日間当たった」という脳内設定で過ごし、仕事も私用もそのほかの大事なことも9日間半ば放置して、動きつづけました。最後の週末は僕程度の情熱では弾き出されるほどの熱狂に翻弄されながら、「きっとこうだったんだろう」と思える時間を過ごすことができました。無念を成仏させた、そう言っていいかなと思います。改めてその機会を与えてくれた世界陸連と陸上競技に心から感謝したいと思います。皆さまにも「東京は本当はこうだったんだろう」と思ってもらえていたら嬉しいです。

夢の9日間を本当にありがとうございました!

↓ということで、DAY9観戦の記録です!
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いよいよこの夢も終わりか…と寂しさと切なさと憂鬱さがぶり返しながら向かう国立競技場。9日間通ってみて改めていい場所だなと思います。今までよりもさらに好きになりました。千駄ヶ谷の駅にたどりつけば、駅前では「チケット譲ってください」のボードを掲げた人が立っています。慌ててチケット転売サイトなどを見れば転売価格は定価の数倍にまで高騰しているよう。この9日間でついにそんなことになったかと、しみじみ思いました。

いつものように向かったメダルプラザももう別世界のようです。メダルセレモニーの時刻に余裕を持ってたどりついたはずが、すでにメダルプラザ周辺は厳重警戒で排除モードになっています。入場は規制され、通行も規制され、警備の人が壁を作って近づく者を剥がしています。

さらには、大会9日目に行なわれる種目のメダリストたちのセレモニーに参加するには「夜セッションのチケットを持っていて、かつ競技場内で配布する整理券(リストバンド)が必要」という設定となりまして、こちらは参加を見送ることに。リストバンドを受け取るには一度入場せねばならず、今回の世界陸上は再入場が一切不可ですので、整理券をもらいに行けば前日分のメダルセレモニーは見られないという一長一短があり、先着順にも間に合わない気がしたので体力と時間のある方にお任せすることにした次第。

↓これまでたくさんメダリストを見られてよかったです!
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↓まぁ、無観客よりはいいんじゃないですかね!



入場するとすでに男子の十種競技が競技中です。この日もフレッシュな観衆がたくさん集っており、選手たちの試技のひとつひとつに大きな歓声があがり、選手が手拍子を求めれば雷のような轟音が響きます。僕の隣席では合コンらしき男女2VS2がビール片手に自己紹介を始めており、ついに「俺と世界陸上行かない?」が口説き文句になる時代が来たかと感慨を覚えました。僕も今度「僕と織田陸上行かない?」とかのお誘いでもしてみますかね。織田裕二さんがいるとカンチガイしてくれるかもしれませんしね。会場がビッグアーチとかだと来てくれないかもですが。

隣席での自己紹介とオープニングの褒め合いが終わった頃合いで、注目の競技がスタート。眠れる森の美女ことウクライナのマフチフさんが登場する女子走高跳の決勝が始まりました。マフチフさんの寝起きの世界記録更新にも期待しつつ、まずは「寝ました!」「起きました!」「寝床を移動しました!」の名場面を見守ることに(←パンダでも見ている人のようですが陸上です)。

↓マフチフさんが寝ました!
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↓マフチフさんが起きました!
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↓マフチフさんが寝床を移動しました!
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どうやら競技中に雨が降ってきたようで、さすがのマフチフさんも雨のなか寝ているわけにもいかず軒下まで移動した模様。なんか日本中が「寝ているところを見られてよかった」みたいな満足感を覚えてしまったせいかもしれませんが、マフチフさんはこの日はベストのパフォーマンスではなく、また金を意識した戦略だったことや競技途中から見舞われたゲリラ豪雨の影響などもあってか、記録は1メートル97センチ成功までで銅メダルに。金メダルはここ数年マフチフさんとメダルを分け合ってきたオーストラリアのオリスラガースさんが獲得しました。

さらに、各選手の記録が拮抗したことで、銅メダルには同順位で2人が並ぶこととなり、パリ五輪では怪我により棄権したセルビアのトピッチさんが獲得。テレビではすでに泣きながら相合傘でメダルの行方を見守るトピッチさんがとらえられていたようで、日本もキュンキュンすることに。これはちょっと日常系走高跳漫画とか誕生する世界線に入ったかもしれませんね。個人的にはまたしても競技場の反対側の席を取ってしまっており、すごい遠目に見守る感じだったのが惜しまれるので、また機会を見て近くでキュンキュンしに行きたいと思います。

↓マフチフさんが寝るところだけ追った過去の動画です!



そんな走高跳などを見守っている間に国立競技場には異変が。何と、猛烈な雨がフィールドとトラックに降り注ぎ始めたのです。その影響で男子円盤投げの決勝は中断されたほど。そのほかの種目は予定通り進行していきますが、影響がないということもないでしょう。リレー競技の始まりの頃が一番雨も強く、ちょっと国立の神様も「ひと波乱起こそうか?」という気分なのかもしれないなと思いましたよね。

↓マイルリレーのボツワナ代表はクールなランニングのポーズ!
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しかし、いわゆる「波乱」はなく、注目のリレー種目は強いチームが本当に強いレースで金を手にしていきました。男子のマイルリレーは大本命アメリカに、400メートルの個人種目で金・銅のダブル表彰台を達成したボツワナが肉薄。3走までリードしていたアメリカを最後の直線でボツワナが抜き去り、大興奮の金となりました。もはや日本勢云々とか関係なく、この9日間で体験してきた超歓声があがるレースでした!

女子のマイルリレーは大本命アメリカが圧勝。個人的にお気に入りのオランダのボルさんを応援しながら見ておりましたが、アメリカ4走のマクローフリンさんにバトンが渡ったあと、さらに突き放していくような強さに「こりゃかなわん」と脱帽しました。

↓ボルさんを追っているはずが、最後はマクローフリンさんを見てました!



↓オランダは銅メダル獲得を祝ってかわいいきららジャンプ!
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さらにつづくリレー種目、次は女子の4×100メートルリレーです。この種目には今回で世界大会を退くというジャマイカのフレーザープライスさんが有終の金を目指して登場しました。アメリカにも気になる選手がいたりしてどちらを応援しようか迷いつつ見守ります。赤と白のジャパンカラーの髪で登場したフレーザープライスさんは1走を担うと、アメリカの1走で100メートルと200メートルを制したジェファーソンウッデンさんに先行します。最後の直線に入るところまでアメリカとジャマイカは激しく競り合っていましたが、アメリカの4走シャカリ・リチャードソンさんが個人でメダルを逃したぶんまでチカラを発揮し、アメリカが先着。フレーザープライスさんは有終の銀となりました。

↓レース終了後は、アメリカのジェファーソンウッデンさんを抱き締めていました!
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↓何か女子種目ではこのジャンプが流行した大会でした!
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さぁ、そしていよいよ男子4×100メートルリレーの決勝。日本勢が入場してくると、地鳴りのような歓声があがり、日本勢への超声援を送ります。スタート前のコールでは、この大会を席巻したムーブメントであるアニメ漫画コンテンツのポーズを4人でリレーした日本チーム。「ONE PIECE」の主人公ルフィのギア2、ギア3、ギア4、ギア5までの強化をリレーでつなぎ、自分たちの最高到達点を示す構え。同じ「ONE PIECE」からアラバスタ編でのビビとの別れのポーズを演じたアメリカのライルズさんも、これには大喜び。世界から逆輸入されてきたアニメ漫画ムーブメントに、本家本元の日本が応えてみせる、大会の文脈すらもなぞるような素晴らしい交流の場面でした。世界がどれだけ理解してくれているかはわかりませんが、とにかくライルズさんは「いつまでも仲間だ」ということは伝わってきました。

そして始まった決勝のレース。日本は1走から2走のつなぎで少しバトンが詰まって後退し、さらに3走・桐生さんの足が痙攣してしまったとのことでで後れを取り、4走の鵜澤さんはラップタイム8秒台を出す好走でしたが先行するチームに追いつくには至りませんでした。それでも国立の大観衆が超歓声をあげる6位フィニッシュ。この光景をもう一度見たい、この歓声をもう一度体験したいと思わせるには十分な体験を生み出してくれたと思います。リレーチーム、そしてすべての日本勢に感謝です!

↓ありがとう日本!お疲れ様日本!



その後、場内では閉会式がスタート。ボランティアの皆さんとYMCAを踊ったりして、大観衆が夢の9日間の終わりを惜しみます。次回の開催都市となる北京にフラッグが渡され、北京からはお迎えの映像が流されました。次はまた2年後、それまでしばしのお別れとなりますが、今回はかつてないほど真剣に濃密に世界陸上を見守りましたので、ここで見た夢のつづきを今度は北京で楽しみたいなと思います。北京の皆さんよろしくお願いします!

↓と、閉会式やって終わりと思うじゃないですか?
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↓でも誰か入ってきてるんですわ!忘れ物かなと思いきや、さっき中断した円盤投げやるんですって!
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↓ありったけのタオルでサークルを拭きながらやるんですって!
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テレビ中継では大会総集編など始まっているなかで、閉会式すら終わった会場でここから始まる最後のメダル争い。まるで競馬の12レースのように「まだ帰りたくないだろ?見ていけよ」と陸上の神様が名残を惜しむ僕らに手を差し伸べてくれたかのよう。さすがに国立のお客さんも帰途につき始めてはいましたが、それでもまだ名残を惜しむたくさんの観衆が残ってアフターの円盤投げを堪能していきます。結果的にはメダルセレモニーの整理券を見送って大正解!(←まぁ競技を見たらセレモニーを見れないとか、その逆とか、どうかと思いますが)

↓タオルで花道を作り、一投ごとにサークルを拭く懸命の作業!



そして、この円盤投げは最後に素敵な思い出をくれました。世界記録保持者であるリトアニアのアレクナさんが、2投目で67メートル84を投げて長くトップをキープしていたなかで迎えた暫定2位スウェーデンのスタールさんの最終投擲。このあとには現在1位のアレクナさんを残すだけですので、ここがまさに勝負のどん詰まりです。大会全体の最後の種目の最後の投擲のそのどん詰まりでスタールさんが投じた円盤は、このコンディションにもかかわらず大きく伸びて70メートル47センチを記録!逆転金メダルとなったのです!

↓おおおおお!最後まで見守っていた人へのご褒美のような試合!


↓最後の最後まで面白かったぞ世界陸上!
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決着の頃には23時をまわり、並行して行なわれていたメダルセレモニーもこの種目の決着を待っていたということで、さらに深夜までこの宴はつづいていきました。帰りたくないとぐずる僕も「終電」という絶対的なリミットが迫るなかで、ようやく競技場をあとにする心が決まりました。駅までの道を走るとき、「これが自分の世界陸上だ」と清々しい気持ちになりました。たくさん楽しみ、まだまだ楽しみたいという気持ちを残しつつ、少し休みたいという心地よい疲労感も溜まっています。無念を成仏させるに足る、素晴らしい時間でした。世界記録も見られましたし、さすがにお腹いっぱいになりましたので、夢から醒めて日常に帰ります!皆さまお疲れ様でした!ありがとうございます!


世界のアスリートの皆さん、いただいたたくさんの夢を大事にします!