08:00
最後の最後に侍よ決めてくれ!

1週間前の開幕の頃とは季節すら変わってしまったような気がする、涼やかな今日この頃。夢の9日間を与えてくれた東京2025世界陸上は、ついに21日で閉幕を迎えます。そんな祭りの終わりが見え始めてきた大会8日目は、日本勢の素晴らしい活躍により文字通りのクライマックスとなってきました。

午前のセッションで行なわれた女子20キロ競歩では、日本記録保持者・藤井菜々子さんが見事に銅メダルを獲得!スタジアムまでデッドヒートがつづき、最後の入線ではライバルの「歩形など知らんわ!」という捨て身の猛ウォークであやうくかわされそうになりながらも、しっかり3位銅メダルを守り抜きました。

聞けば藤井さんは4位のエクアドル・トレスさんが迫ってきていることを最後の直線に入るまで気づいていなかったようで、もしこれでかわされていたら観衆側猛反省のバツ悪決着だったかもしれないなとヒヤリとしました。歓声が盛り上がり過ぎて全部混ざって「ワー!」になっちゃってますからね。観衆ゼロなら関係者からの「後ろ来てるよ!」の声が普通に聞こえるんでしょうが。

ただ禍福は糾える縄の如しと言いますか、男子20キロ競歩では世界陸上を2度制した優勝候補の本命・山西利和さんが途中までトップを歩きながらも歩形違反のペナルティを受けて入賞圏外まで後退するという痛恨の出来事も。金の期待もあったなかで惜しいレースでしたが、東京五輪での銅メダルの際に感じられなかった歓声を「こうだったんだろうな」と感じてもらえていたら嬉しいなと思います。

↓そんなことでDAY8の観戦の記録は藤井さんのメダルセレモニーからです!
P9200801



夕方まで所用があって現地入りが遅れてしまったこの日。いつも通りメダルセレモニーから見守りに行ったわけですが、現地はトンデモないことになっておりました。柵で囲われたメダルプラザの広場は、通例1000人ほどの観衆を入れてセレモニーを行なっているのですが、その柵の外側に何重もの人垣ができて観衆があふれ返っているのです。ハロウィンの渋谷スクランブル交差点並みのの渋滞ぶりで、メディア用の高台の上にはDJポリス的な人まで登場し、交通整理を行なっているではありませんか。

これは近づくことも叶わんと遠目の隙間を探りまして、人垣越しにメダルセレモニーを見守ることに。「ライルズー!」「キャー!」「立ち止まらないでくださいー!」「ライルズー!」「キャー!」「こちらでは観覧できませんー!」みたいな声が終始飛び交っており、若干カオスを感じつつも、世界陸上が本当に本当に盛り上がっているんだなと目頭が熱くなる気持ちにもなりました。

そして実際に男子200メートルのメダリストたちが登場すると、爆発的な歓声があがりました。「リアルに危ないかもしれんな」と思うほどの熱狂で、メダリストたちにとっても素晴らしい喜びの舞台となったのではないでしょうか。ライルズさんはちょっと目を拭ったように見えましたので、いい光景が見えているといいなと思いました。

↓ライルズさんの目には涙が浮かんでいたかもしれない!
P9200668


その後は、この日の午前にレースを終えたばかりの女子20キロ競歩のメダリストたちもセレモニーに登場。もちろん日本の藤井さんも銅メダリストとして堂々のご登場です。大会2日目に最初のメダルセレモニーが行なわれたときはここまでの盛り上がりではなかったので、男子35キロ競歩で銅の勝木さんとあとで感想戦でもしていただくといいんじゃないかと思いました。「俺ももう一回やりたい」って話になるかもしれませんね!

↓藤井さん日本のメダル第2号ありがとうございます!
P9200729


セレモニーを終えたあとは会場入りして夜のセッションを観戦します。この日も5万8000人を超える大観衆が詰めかけており、素晴らしい盛り上がりです。子どもたちの姿もたくさん見られ、近くにいた幼稚園くらいの少年が「きょうらいるずでる?」とお父さんにたずねているのがかわいいことかわいいこと。そんな純真さを前にしては「今日は予選だから出ないね」「お父さんに明日のチケットを買ってもらいなさい」「もう売ってないけど」などとリアルを告げることは到底できず、心のなかで「キミが本当に願えばきっとライルズは現れるよ」と祈っておきましたとも(←やっぱり出ませんでしたが)。

夜のセッションの冒頭は、女子の七種競技と男子の十種競技が行われており、そこでもひとつひとつの試技に対して大歓声が送られていました。七種競技と十種競技なので、ひとつひとつの試技はほどほどの記録だったりはするのですが、それでも世界の選手たちの動きに観衆は沸き立っているよう。そういう意味では、こうやって新しい扉を開けた人がたくさん集った日に七種競技と十種競技があるというのは、いい日程だなと思いました。やり投げとか走高跳とか棒高跳びとか、「へー、これが」と思う競技をひととおり見られますからね。

男子の十種競技ではアメリカのガーランドさんが、「どう見ても投擲だけで勝つ気のマッチョ」風に見せながら走高跳では2メートル11センチをクリアしたり、400メートルも48秒73でまとめたりしていて、会場のハートを一気にキャッチしていました。最終日の午前のセッションではマッチョの110メートルハードルやマッチョの棒高跳びが見られるはずですので、今からでも間に合う方は行って見てみるといいんじゃないかと思います。

↓100メートルを10秒51で走り、2メートル11センチを背面跳びするマッチョです!
P9200877


さてそうこうするうちに注目種目が始まりました。まずは4×400メートルリレー、いわゆるマイルリレーです。日本も男子400メートル決勝進出の中島佑気ジョセフさんを中心に、決勝進出を狙って走ります。日本はシーズンベストとなる2分59秒74の好記録を出しますが、2組6位となって決勝には進めませんでした。ただ、アクシデントがあった予選1組のほうであればこのタイムは2位に相当するものでしたので、ちょっと組み分けの運がなかったかもしれません。ジョセフさんの追い込みはこのレースでもしっかり通じておりましたので、もうひとつ、ふたつ、今大会をキッカケに400メートル界隈が熱くなれば、決勝常連国というものも見えてくるような気がします!

↓すっかり国民的となったジョセフさんが走るとすごい歓声があがりました!




さぁそして、大注目の男女の4×100メートルリレーが始まりました。日本は男子4×100メートルリレーの予選2組に登場。小池祐貴さん、?田大輝さん、桐生祥秀さん、鵜澤飛羽さんのメンバーで決勝進出を狙います。日本選手権では痛恨のクラウチングよろめきがあって個人種目の代表を逃した?田さんは、このリレーにすべてを爆発させる構え。桐生さんはスタンドの観衆に手を振って「もっと歓声を」と呼び掛けています。日本チームが燃えている。スタンドからでもすごい気迫を感じます。

日本チームへの超歓声のなかで迎えたスタート。日本は1走・小池さんがいいスタートを決め、先頭争いをしながら2走へのつなぎに向かいます。2走へのつなぎではイタリアの2走の腕振りが後ろからくる南アフリカの1走に当たってしまい、この影響で南アフリカがバトンをつなげないというアクシデントが(※21日に単独再レースを行ない、設定タイム以内なら決勝進出とのこと)。このアクシデントは日本が東京五輪でバトンミスとなったものとまったく同じシチュエーションでした(※ハミ出してきたのも同じジェイコブスさん/腕振りのクセが悪い)。日本はアクシデントこそありませんでしたが、1走と2走のつなぎで手間取り、何とか?田さんにつなぎます。

2走が走るバックストレートは大きくタイムを稼ぎたい区間。日本も一時?田さんがトップに躍り出ますが、ライバルはそれ以上に伸ばしてきており、3走へのつなぎではオランダ、ガーナ、イギリスに次ぐ4位になります。3走はこの3コーナー・4コーナーをつとめつづけ、幾度ものメダルを取ってきた歴戦の桐生さん。桐生さんから鵜澤さんへのバトンパスは一発でバチンと決まり、前との差を詰めてきます。

すると、この3走から4走へのつなぎで今度はイギリスがバトンミス。スタートのタイミングは予定通りのようでしたし、後ろも特に失速しているわけではないので、4走の加速が掛かり過ぎたでしょうか。日本はこれで3番手に上がると、最後は鵜澤さんが予選全体を見てもトップに相当する速さで駆け抜け、見事にこの組3位で決勝進出を決めました!

↓ちょっと危ないところもあったけれどまずは決勝進出!


今大会のリレーは波乱含みで、予選1組のほうではジャマイカがバトンをつなげず決勝に進めませんでした。その結果、全体のタイムで言うと、ガーナ、カナダ、オランダ、アメリカにつづいて日本は5位での決勝進出となりました。南アフリカの再レースの結果にもよりますが、メダル獲得へは決勝でもう一段上げていきたいところです。

各走者の予選のラップタイム順で言うと、1走小池さんは予選通過済チームのなかの5位、2走?田さんは予選通過済チームのなかの7位、3走桐生さんは予選通過済チームのなかの6位、4走鵜澤さんは予選通過済チームのなかの1位タイとなっています。決勝ではアメリカなどメンバーを強化してくるとみられますので予選のタイムは参考でしかありませんが、日本としては2走から3走、ここをあげていきたいところです。

まずバトンパスを素早くしっかり決めること。これが今大会の最初のレースとなったメンバーは、ひとつ叩いたぶんの上積みを決勝では発揮してもらい、特に?田さんには「?田のチカラでメダルを獲った」と言えるくらいにタイムを伸ばしてほしいところ。桐生さんはとにかく頑張ってほしい!「桐生さんを手ぶらで帰らすわけにはいかないぞ」と桐生さんからも言ってやってほしい!とにかくメダル圏内の順位で鵜澤さんにつなげば、鵜澤さんの区間は予選1組1位カナダのドグラスさんにも勝つなど互角以上に戦える手応えですので(※ドグラスさんは最後横見て走ってましたが)、十分にメダルも期待できると思います。大会全体の最終種目で日本がメダルなんてことになれば、国立の屋根が吹き飛ぶんじゃないかと思いました!

その後は、女子やり投げの決勝を応援しつつ、日本の田中希実さんが出場した女子5000メートルの決勝を見守りました。全体が牽制しあってスローペースとなるなか、序盤は最後方待機の構えで田中さんはチカラを溜め、中盤にかけて前進すると残り3周という段階からはロングスパートをかけて、1500メートルのチカラを世界の強豪にぶつけていきました。予選とは違うレース展開ですが、「勝つ」ために戦ったレースだったと思いますし、国立の大観衆にもそのことが伝わったものと思います。世界の超人が強く、順位は12位ということで入賞はなりませんでしたが、これは今日の展開のなかで勝ちにいった結果としての立派な順位だと思いますので、このレースを大事な思い出にしてもらえたらいいなと思います。5万8000大観衆の超歓声、すごい体験だったと思いますので!

↓観衆としても、これ以上ないくらい応援できたと思います!
P9201156


さて、この東京2025世界陸上もいよいよ最終日を迎えます。この大観衆がリレーのメダルを見たらどうなるのか、個人的にもものすごく興味があります。すでに人生イチくらいの超歓声を体験していますが、それをも超える何かが生まれるような気がします。届くチカラはあります。舞台も整っています。スポーツの神様がいるのなら、2021年に日本と東京が失ったものをちゃんとバランスを取ってほしい。コロナ禍で舞台を大きく損ない、内枠のハミ出しという不運によってバトンをつなげず、しかしその結果を受け止めた日本のリレーチームに東京五輪のぶんまでバランスを取ってあげてほしいなと思います。それを見ることができたら、東京も報われると思います!



最後の最後、二度とないような光景を作って最高の締めくくりに!