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泥の船

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4年間の非正規雇用を経ていまの職場に採用されて、契約書の「雇用期間の定めなし」という文言を見たときは涙が出るほど嬉しかった。毎日定時で帰って、夏季と年末年始には当然のように1週間の休みがあって、自分がやりたいと思える仕事ができる。夢のようだなんて思っていたけれど、本当に束の間の夢だったようで、財政状況の危うさが少しずつ具体的に見えるようになってきた。組織の事情とは別に、ここ数か月の間に体調不良者のしわ寄せがくることが増えて、仕方のないこととはいえ、だからこそ少し疲弊している。その影響で思うように休みが取れないこともあり、いらいらする。顔はにこにこ、頭の中は罵詈雑言でいっぱい。

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できるだけこの生活を続けたいと思う一方で、ずっとどこかに行きたい。もう2回目の更新を迎えた部屋と、職場まで車で30分、休日は東京都内にも横浜・静岡方面にも出やすい立地は心底気に入っていて、もし職場が変わって、この生活を手放すことになるのはとてもいやだなと思ってしまった。愛着から執着になりつつある気配。求人や物件情報を見て、ここで働いてみたいとか、この土地のこの部屋なら住んでみたいとか、そう思えると安心する。もう先が長くないことがわかっているなら、見学もかねて転職活動をするのも悪くない。なにもかもに対する執着をすてていきたい。

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何もできない人間だと思っていたけれど、そこそこに仕事も生活もできるようになって、もう充分だなと思う。曲がりくねった山道を運転していると、標高が高いところでこのままハンドルを切らなければ死ぬかもしれないんだよなという考えが頭をよぎって、自分にはそうする勇気がないことを悟る。具体的に死にたいという気持ちがあるわけではなく、はじめから存在しなかったことになりたい。

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涅槃はまだ遠い。




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