
∞「放流」
現在は教育目的以外で放流をしていないという豊田町ですが、過去には放流していたそうです。
もともとホタルの名勝地として有名だった木屋川ですが、環境の悪化と乱獲により昭和30年代頃、徐々に見られなくなっていきます。これを憂慮した地元の方が立ち上がり、保護活動の一環としてホタル飼育施設が建設されました。
その後、昭和40年代~平成初期ぐらいまで放流を続けたようです。
と、言ってもそれは「他所からホタルを捕まえてきて放流した」ということでは無いとのこと。
ホタルが田んぼで農薬を使うとホタルが激減することが経験から分かっていたので、農薬散布前にホタルを捕まえ、稲刈りが終わる10月頃に再び川に戻すという「一時避難」の意味合いがあったようです。
〈参照:全国ホタル研究会誌「豊田とホタルと人」、国土交通省の「木屋川ダム開発事業検証に関わる検討結果報告書」(平成24年)、豊田ほたるの里ミュージアム学芸員さんお話〉
∞「ホタルとカワニナ」
そのホタルですが、1匹のホタルが成虫になるまでに20匹ぐらいのカワニナが必要となります。が、これは、その一匹が間違いなく成虫になるとしてです。
厳しい自然界では、ホタルは卵50個に対し1匹ぐらいしか成虫になれないそうです〈参照:しまね棚田元気ネット〉。
途中で死んでしまう幼虫が食べる分も考えれば、1匹が生き残るためには、×20のカワニナでは足りません。
そして、カワニナだって、全て食べられてしまうわけにはいかないのです。
つまり、ホタルを増やすためには、食べられてしまう以上のカワニナが増えるだけの条件も不可欠です。
人のエゴで、増えてほしいものだけ放流しても、それを支えるだけの環境がないと破綻してしまうということですね。
効果が無いと、放流をやめた豊田町。
ほたる船から見た幻想的な光は、観光用に整えられたものではなく、自然そのもののなのです。
∞「水と岸辺」
綺麗な川の代名詞のような印象があるホタルですが、「水質階級と指標生物」によると、餌のカワニナとともに「水質階級Ⅱ ややきれいな川」の指標生物になっています。
適度な栄養分を含む川である必要があるのですね。
ホタルの生育には水質だけではなく、河畔の環境保全も大事なことです。
国土交通省の「木屋川ダム開発事業検証に関わる検討結果報告書」(平成24年)には、ほぼ手つかずの自然環境が保存されている区域のことが出てきます。そこは、河畔林も残っていてホタルが一番発生している場所らしいです。(地図で確認したところ、「木屋川ゲンジボタル発生地」と重なっているっぽい。ほたる船のコースもその一部っぽい)
「河川改修をしなければホタルは残る」という地域の方の言葉も記載されていました。護岸工事によるホタルの増減を経験としてご存じなのかもしれません。川の改修による環境の変化について考えさせられます。
多様な生物が生息する環境を守りながらも、そこに住んでいる方々が安全に快適に過ごせる方法を探ることが大切だなと思います。
ホタルのことを調べて知ったのですが、世には「ホタル護岸」というものがあるそうですよ。
生き物の住処になる隙間があるブロックのようです。豊田町にもホタル護岸を施工した場所があるようです。
同じ山口県の山口市でホタル護岸に改修した一の坂川では、ホタルの放流もあり3年目からホタル発生が顕著となったようです。〈参照:びわこ豊穣の里、他〉
確かに、いくら水質がよくても、護岸がビシッとコンクリートで覆われていたならば、増えることはできないでしょう。
ホタルの場合、卵を水際の苔や草のあるところに産み、幼虫は川底で過ごし、川の土手の土の中でさなぎになるようですから〈参照:ベルテクス株式会社「コンクリート水路でホタルを保全ホタル水路」〉。
∞∞「思ったこと」
餌のことや河畔の環境のこと、言われてみれば当たり前のことです。けど、全く意識していませんでした。
ホタルを見れば「この川は自然が豊かなんだね」「もっとわさわさ飛んでいればいいのに」などなど漠然と思う程度。この数のホタルが飛んでいると言うことは・・・・・・なんて考えたことなかったです。
光の乱舞。
それは、ホタルだけでも、カワニナだけでも、水だけでも、周辺の環境だけでもなく、全てが互いに結びつき合ってピタッとはまったからこそ、見られる景色だったのです。
なお、木屋川のホタルの数ですが、山口県観光連盟によると「数万匹」ってなってました。
それだけの数を養うだけの環境が整っているということなんですよ。すごい川です。
そして、ホタルごとその環境を守ってきた豊田町の方々の取り組みに頭が下がります。
~ホタルを増やすためにはホタルを始めカワニナや様々な生き物が生息できる環境をつくりだしていくことが大切です。~〈豊田ほたるミュージアム〉