『ANIMAL』を観てまいりました。
いやあ、猟奇的、猟奇的ですよ、この映画は。
本当にタガが外れたように猟奇的な映画でございまして、とにかく病的なレベルで父親が大好きすぎる男が、父親の暗殺を企てた連中に報復に出るのが前半の話なのですけれども、後半ではその暗殺事件の裏には一族のゴタゴタがあったということが明らかになる、というのが物凄く乱暴な概要でございます。
まあ一言で言ってしまえば、頭のおかしいファザコンの男が父親に仇なす連中を片っ端からぶっ殺しまくる血みどろのバイオレンスアクション映画、ってところでございます。
何が凄いかって言ったらもう、主人公がキチガイ過ぎている。
あまりにもキチガイ。
あんまり「キチガイ」という言葉は口にしない方が良いのでしょうけれども、あれをうまく形容できるのは「キチガイ」くらいしかないですよ。
あるいは、「ケダモノ」。
タイトルの『ANIMAL』を日本語に訳すなら、間違いなく「ケダモノ」が最適でしょう。
この主人公は度を超えて父親のことが大好きすぎるので、例え駆け落ちするほど愛している恋人であっても父親のことを悪く言うのは決して絶対に許さない、そんな男なのでございます。
そんな男ですから、父親を殺そうとした連中には容赦しない、徹底的に殺して殺して殺しまくるのでございます。
しかもこの映画が常軌を逸しているのはそれだけではなく、有り余る暴力シーンの一方で、セクシーなラブシーンも尋常ではないくらい多いのですよ。
暴力とセクシーが津波の様に怒濤の勢いで押し寄せてくる。
このノリには、観ていて意味が分からなくなってきましたのですけれども、今になって考えてみれば、多分この映画が描きたかったのは一人の男の愛と狂気ということだったのだろうと思っております。
というわけでして、気味が悪いくらい父親大好きな男の、限度を超えた暴力とセクシーを延々と浴びるように観せ続けられる。
しかもこの映画、上映時間がおよそ3時間半弱と邦画やハリウッド映画と比べて比較的上映時間が長いインド映画の尺度で考えても明らかに長い上映時間ですから、これに耐えられる人間はそうはいないでしょう。
とは言え、「事実は小説よりも奇なり」という言葉もありますとおり、どうもこの映画インド本国でも結構な評価をされているようで、これはもう物凄いことだなあと思った次第でございます。
ただ、物凄くインパクトのある作品でしたので、目立った結果が出ているのも納得でございます。
ただ、これを繰り返し観たいかと言うと、なかなか鑑賞するにもなかなか疲れる映画でしたのでもうしばらくは観なくて良いかなあというところですねえ。
気軽に観るにはあまりにもカロリーが高い。
ともあれ、主人公があまりにも父親が大好きすぎるのですけれども、これの恐ろしいのが、映画終盤までなぜそんなに父親が大好きなのかがはっきりと明かされないことでございます。
途中途中でもしかしたらそういうことなのかもしれないと匂わせるような描写はあるのですけれども、最後のシーン程はっきりとは描かれないので、最後までずっとすごく不気味な感じがする。
そして結局のところ、仕事一筋の父親にまったく構ってもらえなかったことの裏返しでああなってしまった感じということがはっきり描かれ、ああやっぱりそうだったんだなあと納得して終わるのですよ。
終盤では、主人公が子供の頃に父親の誕生日を祝おうとしたものの、仕事の邪魔をするなと手荒く扱われたシーンを大人になった主人公が父親と再現するという猟奇的なシーンがありましてこれがもう本当にえぐいえぐい。
主人公が「僕がパパを演じるからパパは僕を演じるんだ」とか言ってほとんど強制的にある日の再現をごっこ遊び的にするのですけれども、「パパ、パパ」と呼び掛ける息子を演じる父親に対して父親を演じる息子が罵声や水を浴びせたり、果てにはぶん殴ったりするような描写がありまして、こりゃあとんでもない親子だなあと思った次第でございます。
最後まで鑑賞して思うのは、この主人公の父親に対する気持ちは愛ではなく執着なのではないだろうかということですねえ。
あまりにも父親に相手にしてもらいたくて気が違ってしまっている。
ちなみにこの主人公は明らかにキチガイのケダモノなのですけれども、他にも姉と妹がいるのでして、しかしその2人は主人公のようではないのが、ますます主人公の異質さを際立てている。
ストーリーは一族の宿命によって主人公と敵が戦うという、それだけ言ってしまえばよくありそうな映画なのですけれども、この主人公の常軌を逸したキャラクターがこの作品を唯一無二のものにしていますよ。
というか、こんなキャラクターが2人もいてたまるか!
あとこの主人公絡みでもう一つ印象に残ったのが、父親が暗殺未遂に遭って入院した後、父親が社長を務める会社に出向いて従業員を鼓舞すべく演説をするシーンですねえ。
社長が倒れた後の会社で「犯人の首をこの手で掻き切ってやる!」と集まった従業員の前で高らかに宣言するのですけれども、これが会社で言うせりふか?
とても会社の演説とは思えないせりふですよ。
しかもこれのやばいのはこの演説をテレビで放映しているわけでして、つまりはテレビ視聴者の前で堂々と殺害予告をしているということですから、こりゃあとんでもないですねえ。
また、途中で社是を唱和するシーンもあるのですけれども、これも狂気とも言えるレベルの熱狂がありまして、世界一熱狂的な社是唱和でございました。
この会社の社是がなかなか強烈な社是でして、「力、前進、勝利」なのですよ。
この社是にしてこの社員あり。
社是が従業員の隅々にまで行き渡りすぎている。
ちなみに、一瞬だけ少年ジャンプの「友情、努力、勝利」が頭によぎったのはここだけの秘密でございます。
ともあれ、従業員も従業員で、主人公が右手を高らかに掲げて誓った殺害予告に対して声の限りに叫びを上げ応えるのですけれども、このポーズと熱狂、そして背景のデザインも相まってこれがなかなかヒトラーの演説のようなのですよ。
そもそも会社のロゴが鍵十字ですからその点でもヒトラーの演説をモチーフにしているのは明らか。
会社名が「スワスティカ鉄鋼」だったのですけれども、この「スワスティカ」というのがどうも鍵十字を表すらしいですねえ。
勉強になりました。
そして案の定作中でもナチスっぽいと指摘されておりまして、やっぱりじゃないかと思い笑ってしまいました。
ところで、探してみたらこの狂気の演説の動画がありましたので紹介しておきましょう。
これでいつでもあの狂気の演説を観ることができます。
印象に残ったシーン繋がりですと、小学生が考えたみたいな阿呆な兵器が登場するこのシーンも好きですねえ。
合理性とか必要性みたいなものをかなぐり捨てた馬鹿みたいにでかいガトリング砲を搭載した派手派手トンデモメカ!
いやあ、本当に馬鹿馬鹿しくて好きですねえ。
インド人も派手なメカが好きと分かって、嬉しいことこの上ない。
やっぱりでかくて派手なメカはロマンですよ。
というわけでして、このシーンには世界中の男子が沸き立つことでしょう。
とりあえず派手なメカを出して敵をなぎ倒しておけば楽しいですから、間違いない。
そういえば「意味不明なほど派手で阿呆なメカ」と言えば、去年観た『マーク・アントニー』にも登場しましたねえ。
廃工場で阿呆みたいにでかい大砲を搭載したメカで主人公が敵を蹴散らしていましたし、やっぱり楽しかった、あのシーンは。
今後も阿呆みたいなド派手メカが登場する映画が待ちきれない!
さてところで、鑑賞中ずっとこの主人公の顔どっかで見た気がするなあと思っていたら、演じているのが『ブラフマーストラ』でも主演を演じていたランビール・カプールという俳優でございました。
『ブラフマーストラ』ではなよっちい優男を演じていたのに今度は狂気のファザコンヒトラーとは、物凄い変わりようでございます。
俳優としての引き出しの多さに脱帽ですねえ。
ちなみに、この映画は続編があるのですけれども、主人公そっくりに顔を作り変えた敵の殺し屋が出てくるのでして、それで主人公も敵も同じランビール・カプールが演じるっぽいですよ。
言うならば独り相撲ってやつですねえ。
しかもこの同じ顔の敵もヤバイやつでして、次回作はANIMALがたくさん出てくるということで『ANIMAL PARK』らしいのでございます。
日本語にするなら「ケダモノの群れ」?
いやあ、やっぱりこの映画、頭どうかしてますよ。
おしまい。
