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ウサオジという男、『銃弾と正義』を観る

『銃弾と正義』という映画を観てまいりました。

インドでは「エンカウンター」と呼ばれる、裁判のような司法手続きを経ず犯人を警官が現場の判断でその場で射殺することの是非を問うような内容の映画でございました。

エンカウンターの名手として知られるアディヤンという警官が、親交のあった教師の殺害事件で犯人を追跡し、その結果エンカウンターによって犯人を射殺するのですけれども、しかしエンカウンターに頼った強引な捜査に疑問を持った人権派の判事に目を付けられ調査が進められた結果、犯人として射殺された人間は実は犯人ではなく、これはエンカウンターではなくただの殺人ではなかったのかという可能性が浮上して、さらにこの事件の裏にある別の社会問題も浮上してきて面白くなってくる、といった内容でございました。

さて、何はともあれまずは、主演のラジニカーントのダークな表情が癖になる。

目が笑っていない笑顔を始めとした凄みのある表情が実に印象的。

正直言って、主人公というよりは悪役寄りの表情なんですよねえ。

あるいはこういうのをダークヒーローっていうんですか?

そんな役回りが似合う俳優でございます。

本作でも、現場の判断で司法手続きを経ずに犯人をその場で射殺するという、ちょいとえぐい手法で敵を罰しておりましたし、まあダークヒーローと言っても間違いではあるまい。

以前観た『ジェイラー』という映画でも、ラジニカーント演じる主人公が侮辱してきた悪党に向けて「これが俺の笑顔だ!」と言って、目が笑っていない口元だけの笑顔を放った直後に殺害しておりましたが、そういういわゆる王道の「正義の味方」とは一味違った役が良く似合う俳優、ラジニカーントはそんな男でございます。

他には、このエンカウンターというものにまつわる諸々のお話も日本とは全く異なる文化が感じられてなかなか衝撃的でしたねえ。

日本は猟師が熊を撃っただけで大騒ぎになるような国ですので、警官が銃を撃ったらそこら中のメディアはハチの巣を突いたような大騒ぎ、さらに射殺なんてしようものなら猛烈な批判にさらされる出来事になるのは予想が付きますけれども、どうやらインドでは全く違うらしいんですよ。

インドでは一部で問題視されてはいるものの、エンカウンターが歓迎するような風潮もあるとのこと。

作中ではエンカウンターの名手としてアディヤンは英雄視されておりましたし、凶悪事件に対して民衆が「犯人にエンカウンターを!」と言って抗議活動をするシーンが描かれておりました。

パンフレットの内容も踏まえると、どうもインドでは司法制度に問題があるらしく、裁判に異常に時間がかかったり有力者や富豪なんかだとうまいことちょろまかして保釈されたりといろいろあるようでございます。

作中でも、後半に出てくる黒幕は金に糸目をつけず弁護士を雇ってうまいことやったり政治家に根回ししたりしてアディヤンの追跡をかいくぐっておりましたから、現実でもそういうことがきっと多いのでしょうねえ。

とは言え、本作でも描かれていたように、かといってエンカウンターですべて解決できるわけではないのでして、エンカウンターには問題もあるのでございますよ。

一番衝撃的だったのは、警察が自作自演で護送車を事故らせて、犯人が逃走を図ったということにして射殺するシーンですねえ。

どうやらこういったこともパンフレットによるとしばしばあることで、このような警察の自作自演で犯人を射殺するのはフェイク・エンカウンターと呼ばれ社会問題にもなっているようでございます。

犯罪者も相当なことをやっていますが、警察も相当ですよ、これは。

他には本作の後半で大きな問題となっていた誤射でして、関係のない人間を殺害してしまうことですねえ。

相手を殺害してしまったら後で間違いと分かってももう取り返しがつきませんから、これは日本でもたびたび話題になる死刑問題もつながる話かと思いました。

こういった問題を踏まえると、作中で人権派判事が言っていた「拙速な正義ではなく、迅速な正義を」というセリフが実に印象的ですねえ。

いくら裁判が遅々として進まなかったり裏から手を回して釈放したりと問題があるからと言って、雑な捜査で急いで強引に決着をつけてはいけないという戒めの言葉でございます。

他にもエンカウンターに対しても身分の差別などがあるらしく、富豪や有力者にはいくら圧力がかかってもエンカウンターを行わないと言われていたりして、そういった差別の要素がすっと出てくるところも実にインド映画らしいと思いました。

差別に関して、事件の捜査のシーンでも、嘘の証言をして容疑者となった友人が逃げるのを手助けした人が本当のことを証言したのに対して、警官の一人が「こいつはスラム出身ですよ?こいつを信用するんですか?」と言う場面もありましたし、それに対して「彼は金のためではなく友情のために嘘をついた。だから信用できる」と主人公が返すところもなかなか衝撃的でした。

また別の面白かったところとしては、インド映画特有のインターバルの前後で話の流れが大きく変わってくるところですねえ。

日本では無視されがちですが、ちょうど尺の真ん中あたりでインターバルが来るのですけれども、この前後で大きな転換点を迎えることが多いのでこの辺が一番おいしいポイントともいえます。

本作では、ちょうどのこの直前でアディヤンがエンカウンターによって射殺した人が実は犯人ではないということが明らかになり、「それでは真犯人は一体誰なのか?」ということで後半パートが始まるのですよ。

この犯人ではない人を誤射してしまったというのが分かるシーンはなかなか衝撃的ですねえ。

エンカウンターによって凶悪犯を始末してこれにて一件落着かと思いきや、取り返しのつかない間違いを犯していたことが分かって血の気が引くような場面でございます。

この急展開があるからインド映画を観るのをやめられないんですよ。

これが楽しみで観ていると言っても過言ではない。

さて、というわけでして、主演俳優の真に迫る演技やインドの社会問題、またインド映画らしい中盤での急展開など、実に面白い作品でございました。

おしまい。




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