『マーヴィーラン 伝説の勇者』を観てまいりましたよ。
主人公のサティヤは新聞の長期連載漫画「マーヴィーラン(偉大な勇者)」のゴーストライターでございます。
描く漫画は偉大な勇者でも、しかしその作者たるサティヤは正真正銘の臆病者。
あまりにも臆病すぎて母親には「犬にも劣る意気地無し」と言われる始末。
しかしそんなサティヤですけれども、ある事件を契機に自身を「勇者」と呼ぶ声が聞こえるようになり、そこからいくつもの紆余曲折を経て真の勇者へと成長していくのですよ。
さて、このサティヤが母親や妹と一緒に住むのはスラム街。
しかしあるとき、政治家が強引に立ち退きを迫り新たに建てられた高層マンション団地に移住することになるのでして、最初は文句を言っていたものの今まで住んでいた住宅からは考えられないほど改善されたマンションの環境に次第に馴染んでいくのでございます。
と、思ったのも束の間、実はそのマンションは悪徳政治家が中抜きしまくったせいで完全無欠の欠陥住宅でございます。
壁も床も天井もぼろぼろ壊れ、柱も窓も何もかもが壊れていく。
ついでに水漏れもする。
しかし臆病者のサティヤには何もできない。
サティヤにできること言えば、崩壊するマンションと悪徳政治家をネタにして漫画を描くことぐらい。
漫画では立派なことを描くのに本人は腰抜けですから、気の強い母親にはメタクソに言われるわけでございますけれども、親子のこの性格の対比がまた面白い。
母親がもう猛烈に気が強くて、「もうお前がマーヴィーランだろ!」と言いたくなるくらい。
母は強し、あまりにも強し。
と、そんな強烈な母親の息子サティヤはヘタレなのですけれども、自らを「勇者」と呼ぶ声が聞こえるようになったことをきっかけに、悪徳政治家と戦うことになっていくのでございます。
サティヤはヘタレですから、謎の声に導かれるように偶然が立て続けに起きて成り行き任せで悪徳政治家に不本意ながら喧嘩を売ることになってしまうのですけれども、謎の声に必死で抵抗するわけでございます。
そしてその抵抗も来るところまで来たとき、遂には声に「勇者はただの臆病者となった」と言われて声に見放されるのですよ。
しかし、本作が面白いのはここからでして、声に見放されたサティヤは周囲の助けもあって勇気を奮い起こし、今一度再び、今度は自らの意志で敵に立ち向かうのでして、これこそ「犬にも劣る意気地無し」が「偉大な勇者」へと変貌する瞬間でございました。
これは実に王道のような展開でしたねえ。
やはりこういうのは確実に盛り上がって面白い。
そして、敵が「悪徳政治家」というのもインド映画らしくて良い。
インド映画をしょっちゅう見ていて思うのは、政治家が敵すぎるということでございます。
もう本当に政治家とか警察みたいな公権力が敵として描かれまくっているのですよ、インド映画では。
あの国の公務員はどうなっているんだと思わずにはいられないほど映画の中で公権力が腐敗しまくっている。
最近観たところでも『政党大会 陰謀のタイムループ』、『ジェイラー』、『JAWAN/ジャワーン』などなど、たくさんのインド映画で腐敗した公権力が次から次へと登場しまくっておりました。
これ以上踏み込むと私も覚醒して戦わないといけなくなりそうなのでもうこれ以上は踏み込みませんけれども、インド映画で汚職政治家が出てくると「おっ、出た出た!」となるインド映画ファンは私だけではないはず。
また、突拍子も無い展開も実にインド映画らしくて良かった。
スラムの住人たちが、欠陥住宅とは知らずに新築のマンションに引っ越してきた直後のシーンがダンスシーンなのですけれども、ダンスシーンで盛り上がってすぐにマンションの問題が次々に発生するという怒濤の展開も素晴らしい。
この勢いだけでなんとかしようとしてくるのがもうこれ以上ないほどインド映画ですねえ。
この頭のネジもボルトも全部放り出したかのような情緒不安定さが、実にインド映画をむんむん感じるポイントでございます。
というわけでして、平凡な人間が覚醒して敵と戦うという王道展開と、インド映画の頻出要素をふんだんに盛り込んだまさに王道のインド映画でございました。
これが面白くないはずがない!
おしまい。
