
2025年8月公開
監督:山田敏久
脚本:長谷川康夫
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あらすじ:太平洋戦争、数多の海戦をくぐり抜けて終戦後も復員船として走り続けた日本海軍駆逐艦雪風を描く。
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史実に基づいたフィクションですってよ。ちょっと調べてみましたがフィクション強めです。
雪風については艦これで知りました。劇中でもたびたび幸運艦と呼ばれていたとおり戦場を生き延びた駆逐艦ですな。雪風の映画があると聞いて、戦闘妖精を思い浮かべたのはナイショです。
さて、本作の感想ですが、不自然な説明セリフが多くてがっかりします。顔面アップが多くてがっかりします。クライマックスがヤバいです。
説明セリフは、雪風の過去と将来を説明するものであったり、現況の説明であったり、まあ、百歩譲ってしょうがないかなと思います。それにしても演出などが下手だと思いますけどね。
艦内の場面ではやたらと顔面アップになってしまいます。予算がなくていろいろ映せないんでしょうねえ。海を漂う人間を救助する場面が本作の見どころなのでしょうけど、それも雪風の甲板から手を伸ばす乗員のみ映します。ここはいくらなんでもどうにか演出してほしいところです。海に向かって大声で叫ぶ乗員しか見えないのは滑稽です。
そして、クライマックスがヤバいです。
復員船となった雪風が……復員船ってわかります? ここでは説明しませんよ?
復員船雪風の艦内で赤ちゃんの生まれる場面がありまして、それも赤ちゃんの泣き声と周りの歓声だけなのですが、それに対して乗員が「新しい命が生まれてくることがこんなにもうれしいことなんて」みたいなとんでもねえ臭いセリフを吐くわけです。こんなセリフはキショすぎます。
そのあと、艦長室へ戻った艦長が椅子に座って、同期の写真を見て、突然死ぬという……は? え? 何? これは史実??? 調べてみたらかなり違いました。作中では1943年くらいから乗艦している艦長が復員船でもそのまま艦長をやっているのですが、史実だと1945年5月以降陸上勤務になっていて戦後は専売公社社員となり1978年に病没となっています。フィクションとして復員船でも艦長を続けたことにしたのはわかるけど、死なせる意味がまったくわかりません。艦長室に戻る直前に、医官によると体調が悪いみたいなセリフがありましたが、こんな死亡演出はいらないですよ。
クライマックスのヤバさはまだあります。
雪風は復員船のあと台湾海軍の駆逐艦丹陽となり、作中では1970年沈没ということになっていますが、1970年の大阪万博と重ね合わせる演出があるわけです。それで、天国にいると思われる雪風の甲板に並んだ乗員が我々観客に向かって、「おーい! 見てるぞー! ずっと日本を見てるぞー!」と手を振るわけですよ。
映画史上で類を見ない気持ち悪い演出でした。手を振られて、私は赤面しちゃいました。早く映画館から逃げ出したくなりました。
海上自衛隊のプロパガンダかなと思わせる演出も挟みつつ、艦長が艦橋の乗員の肩を蹴る演出もありつつ、これは、なかなかのキショキショ映画でした。
沈没した艦から海へ逃げ出した人々を救助するなんてすっごい尊い、命は大切だね、という感じの映画にしたいのでしょうけども、雪風じゃなくてもそれが駆逐艦の仕事でしょうし、なんだかなあ……日本の田舎にいる乗員の家族も描かれていますけども戦地の兵隊さんのために在郷軍人会の指揮のもとニッコニコでお芋さんを作ったり、女性が真剣に弾薬を作ったりしてる演出も気持ち悪かったです。
他にもいろいろあるんですけど、坊ノ岬海戦で艦長が急に考えを変えたところもそうですし、いろいろおかしいところがあります。
だったらどうすりゃいいんだよって話ですけど、ゼロダークサーティとかアメリカンスナイパーみたいな実録物に徹してみたらいいんじゃないですかね。フィクションをできるだけ排除しましょうよ。仁義なき戦いみたいな実録物でもいいでしょうし。