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全力と真剣

先の日曜日、市のイベントでカローリング大会なるものに参加をしてきた。町内の父親LINEグループで参加募集があり、普段なら既読スルーするところを血迷って挙手してしまったのだ。カローリングなるスポーツがどんなものかどころか、そんなスポーツがあること自体知らなかったのだが、共有された競技の写真を見ると、体育館など室内でできるカーリングみたいな競技ということが判明した。この写真を見て思わず元道民の血が騒いだ。たぶん、先日ロコ・ソラーレのドキュメンタリーを見て感極まってしまったのもあったのだと思う。

とはいえ、具体的にはどんな大会なのかは詳細も知らぬまま、娘2人を連れて会場に乗りこんだ。会場の体育館にはすでに大量の市民がビブスを身に着けワイワイと準備をしていた。ビブスにはそれぞれの町内会の名前が記載されている。大会としてはどうやら町内会対抗らしく、老人から小学生まで様々な年代が集められていた。


大会の概要は10ある町内会をABの2リーグに分けて総当たり戦を行い、各リーグの上位2チームで決勝トーナメントを行うというもの。決勝トーナメントに出場した町内会にのみ景品が用意されていた。競技としては6人一チームで、一人一投ずつ交互に投げる。ブラシでごしごしこするスイーパーはいない。点数計算は、本来のカーリングだと円の中心に最も近いストーンを投げたチームにしか得点が入らず、得点の計算方法は「そのチームの『相手チームの一番近いストーン』よりも内側にある自チームのストーンの数」が点数になるというルールだが、市の大会ではこれをかなり簡素化して、真ん中の小さい丸が3点、その外側が2点、1点となり、それを単純に足し合わせて勝敗を決めるという形になっていた。小学生でもわかりやすい。

使用するストーン(競技的には「ジェットローラー」と呼ぶらしいがここではなじみのある名前で呼ぶ)」を触ってみると、裏面にローラーが付いていて、ほとんど力を入れずにかなりの距離を滑らせることができる。本家のストーンもスコットランドのとある島から取れる石じゃないとダメ、みたいな珍妙なしきたりがあって、とても高級なものらしいが、このカローリングのストーンも1セット(2チーム分計12個)で40万くらいするらしい。それがこの会場には4セットある。なんでこんな代物が市の備品にあるのかは不明だが、市の財政が豊かであることを実感する。

大会とはいえ、所詮地域の集まりだから勝敗にこだわらない穏やかなイベントと思っていたのだが、町内会の重鎮たちはなぜかやたらと張り切っていて、「やるからには優勝」みたいなことをブツブツとつぶやいていた。私は子どもたちに面白い経験をさせたいという思惑だけで顔を出したつもりだったのだが、場違いだったかなと不安になる。町内会長は「いやいや、楽しむことが大切よ」「でもあそこには負けたくないな」「でもプレッシャーに感じることないけん」「でもあわよくば決勝トーナメントには残りたいな」と本音と建前でおもくそ葛藤していた。

どうも、うちの町は市内では地位が低いらしい。出来上がった歴史が浅く、人数規模も小さく、それでいて高齢化率も高い。比較的由緒ある大所帯の町はなにかと態度が大きく、我が町をナチュラルに劣等地区扱いするような嘲笑が日常的にあるようだ。大人のしょうもない小競り合い。表面的にはニコニコと取り繕いつつも、内心面白くない町内会長は、こういうちょっとしたコンテストでしか一矢報いることができないのだと思う。どうも、完全にお遊びで楽しんだらではいけない空気が漂い始める。


1戦目は我々家族に出番がなかったものの、中学生とおじいちゃんが活躍して圧勝。町内会長の目が血走る。いやマジやん。

2戦目は我々家族がチームメンバーに。6人チームのうちの2人を娘たちが担当した。お母さんと小学生チームという様相。娘たちの投じた石はどれも円をとらえきれず敗戦。娘たちも残念がったが、それ以上に重鎮たちが露骨に肩を落としていた。娘たちを励ましてくれるものの、その表情にはねぎらいよりも残念さのほうが上回っていてやや気まずい。

3戦目はまた勝利し、4戦目に勝てれば2位通過できる順位に位置づけた。4戦目はまた私たち家族の出番がある。ここで町内会長がガバっと立ち上がり、こう宣言した。

「よっしゃ、次は悪いけど勝ちに行くけん。ベストメンバーで挑む」

当初は娘たち2人含む計3人の小学生がエントリーされていたが、それらをいったん白紙にしてこれまでのプレーで筋のいい人間だけをかき集めた。「あんどうさんのとこは悪いけど長女さんだけにして、妹さんのところはお父さんが投げてくれる」と町内会長直々に打診された。次女は急にレギュラーから外されてブーブー文句を言っていたが、「お父さんの応援を頑張ってくれ」と頼み込んで何とか機嫌を取り戻してくれた。子どもの楽しみを社会が奪う形になって複雑な気持ちではあったものの、私たち家族の幸福を優先して全体の士気を下げるのも気が引ける。私としても第2戦で結果的に子どもたちが足を引っ張った分を、なんとか穴埋めしなければという気持ちになっていた。ビバ全体主義。

迎えた第4戦。序盤の展開はお互い失投が続き、得点圏にストーンを置けない。膠着する中での第3投目でついに試合が動く。相手が先に円の中央へとストーンを留める。その石を軸に互いに弾きあおうとするも事態は変わらず私の最終投が回ってきた。このまま行けば1-2のスコアで負けるが、手前にある味方の石にうまく当てて3点の円まで押しやれたら一気に逆転、という盤面だった。弱くてもダメだが、強く押しすぎると医師がブレて明後日の方向に行く。なかなか繊細な力加減を求められる。私は脳内に藤澤五月をインストールして、極限の集中でもってストーンを押し出した。



いける。指先からストーンが離れた感覚で、手応えを感じた。向きも強さもイメージ通り。狙った味方のストーンに向かって、私の投じたストーンはするすると吸い寄せられていく。カツンと小気味よい音を立てて味方のストーンが円の中央へと向かっていった。私のストーンは1点のエリアに留まった。当たりが若干強かったか、味方のストーンは2点の円まではみ出してしまったが、その際に相手のストーンを一つ、無得点のエリアまで押し
出すことにも成功し、都合4-1の大逆転勝利。ほぼほぼ完璧なフィニッシュショットとなった。

町内の皆さんも、子どもたちも大興奮で勝利を喜んだ。ハイタッチの応酬。下の子は自分がプレーできなかったことも忘れて「父ちゃんのおかげで勝った」と大はしゃぎ。いや、その前の味方のストーンの位置が完璧だったんだよと補足したが誰にも伝わってなかったので、素直にヒーローの立ち回りを受け入れた。こういう一体感を久しく味わってなかったので、やっぱスポーツはいいなあと月並みな感動を覚える。

決勝トーナメントでは私が大失投するというオチもあり、あっさり負けたがいい思い出ができた。子どもたちにももっとやらせたかったなとは思うものの、大人が全力で楽しむ姿、真剣に勝ちに行く姿勢を子ども達が目にするというのもまた一つの経験だったかなと思うことにした。いくつになっても、どんな物事に対してもスカさないで本気で取り組むというのが何周も回ってイケてる大人かもしれない。



それにしても最後の大失投は、それはそれでトラウマ級に悔しかった。全試合全投球中ワーストの酷さだった。強く飛ばそうと力みが出て、手放した瞬間ストーンがグイッと左旋回して無残なコースアウト。練習含めてわずか5投しかやってないので悔しいもクソもないとは思うものの、ここ数日は「あのときもっとこんな感じでやれたらなあ」と発作のように思い出す。カローリングやりてぇ。これって完全に術中にハマってるよな。




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