今年も期待値をはるかに超える面白さ。「これ以上面白い漫才は無理だろう」って思わせる漫才を毎年見せられて、翌年の覇者はそれを超えてくるっていう状態が近年続いているような気がしていて、人間の限界はまだまだ先にあるなと感心している。
今年の本命はエバース。とにかく隙のない、精度の高い漫才。横綱相撲で押し切れるだけ脂の乗った状態に思えるが、逆に今年取れなかったら漫才のパターンに見慣れてしまって、そのままズルズルと優勝できずに終わる危うさも秘めている。かつての和牛、オズワルド、さや香と同じ道を辿らずに取りきれるかどうか。
個人的に好みなのはヤーレンズと真空ジェシカで、この2組はたとえ優勝できなくてもすでに売れている余裕を感じる。毎年彼らの新作をテレビで見れるのはありがたいので優勝しないでほしい( )
一組目は推しのヤーレンズ。賑やかしに最適。いつも通りコント漫才かと思いきや、コントに入らずしゃべくりだけでヤーレンズワールドを展開した。基本的に楢原さんの暴走を楽しむ漫才なのだが、今回は出井さんが観客を煽って盛り上げたりして、これまでより進化した漫才を見せてくれた。昨年失速したのに3年目で新たな型で成功して戻ってくるのはすごい。結果、トップバッターとしては十分すぎる高得点。この段階で決戦3組には残ると確信(のちに裏切られる)。ヤーレンズは拾われないボケ、拾われないツッコミが大量に発生するという不思議な掛け合いがある。お客さんにも伝わってなくて、そこで笑いの空白がちょいちょい生まれることで、大ウケと小ウケの強弱がリズミカルに繰り返され、大ウケの爆発力を生んでいる。もちろんスルーされたボケやツッコミ自体も無駄ではなく、その意味にピンときたときにひっそり優越感に浸るという楽しみがあるのだが、今回の出井さんのツッコミは高度すぎて元ネタのわからないものがいくつかあった。長山洋子とか。強いて言うならその若干の置いてけぼり感が気になるかなと思っていたが、その悪い予感が残念ながら的中することになった。
二組目はメゾン。ヤーレンズが作った空気に呑まれるかと思いきや、自分たちの漫才を堂々とやり切って会場を自分たちの空気にしていた。歌ネタのおかげで盛り上がったが、笑いとは違う感情だったため、点数が盛り上がりのわりに伸びなかったのもうなずける。しかし十分健闘。
三組目は敗者復活からカナメストーン。高音のツッコミの声が自分にとっては耳障りでちょっと苦手。ネタ自体は精米歩合80%くらいの雑味をあえて残した感じで、この組だけTHE SECONDの香りが漂ってきた。
四組目はエバース。町田さんが佐々木さんの世界にのめり込んでいく展開が鮮やかすぎて圧巻。
「ルンバ車の(尿検査)陰性が一番怖い。なぜならまだこいつを捌く法律がこの世にないから」
ここのツッコミの破壊力すごかったわ。これが大ウケの締めなのはさすがに綺麗すぎる。ここまでの緻密な笑いの積み重ねを完璧に回収しきった。100点。
あまりに出来が良すぎて、2本目大丈夫なのかと一抹の不安がよぎる。結果それは杞憂だったが、それでも優勝できないのが今年の魔界なところ。
五組目は真空ジェシカ。川北さんの掴みは完璧で、ガクさんの笑神籤いじりは余計でプラマイゼロ。本ネタはいつもの安定の真空ジェシカ。ぶれなさがすごいし、ずっと面白い。しかし、これでは優勝は難しいかなと思いきや、ヤーレンズを上回る高得点。残りの五組をラインナップを見て、さすがに前半で笑いすぎて後半もう笑う余力ないでしょ、この3組がコケずに順当に点を稼いだから決勝3組決まったなと思い風呂に入る。
風呂から上がってテレビをつけると、ちょうど最終決戦。1組目はドンデコルテ。え???なにがあったん???ヤーレンズ来てないの??ドンデコルテは何回か動画で見たことがあるけれど、最終決戦まで残るか?という内容だった。
漫才を見て度肝を抜かれた。私がかつて見た動画とは違い、渡辺さんが最終形態に進化していた。この人は40歳だからこそ面白い。そんなヴィンテージ物の濃厚な笑いを届けてくれた。ただ、一人演説が仕上がりすぎていて、相方の小橋さんがいないと成立しない箇所がさほどなく、その点が漫才の掛け合いとしてはどうだったのかなという印象。他二組がこけたら優勝ありうる。
次はエバース。エバース??あの得点で1stROUND2位??あの得点を上回った組がいるのか??てことはヤーレンズだけでなく真空ジェシカも落ちたのか??と混乱。のちにエバースがあえて2番手を選んだだけとわかるが、真空ジェシカも落ちていたのは事実だった。3番手に控えるのはたくろう。完全にノーマークだったので、いったい1stラウンドで何をしでかしたのか気になって仕方がない。
まずはエバースの漫才を見る。心なしかいつもより二人の掛け合いのペースが走り気味に感じる。落ち着け。心の中で念じる。佐々木さんの腹話術、町田さんの人形の演技が上手すぎて笑いというより感心してしまった。芸達者な一面を見せてきて1stとは違う性質の笑いを作っていた。人間とキモ人間が無事に完成して、終演。十分優勝に値する2本を見せてくれた。これで優勝できないなら何をしたらいいんだって感じ。
いよいよ大トリのたくろう。相方の暴走に対して戸惑いながらも懸命に寄り添って話をあわせていく、という進行。そのあわせていった回答がことごとく、ちょうど良く外していて、言い澱むためらいとか、間、ぎこちない動きなどがバチバチっとはまっていた。台本に書き起こしても何が面白いのかわからないようなネタで、このコンビにしかできない漫才だった。エバースを倒すにはこれしかないというような内容。ボケの赤木さんが何か言葉を発する前に、もう会場がこらえきれなくて笑い始めている、みたいなすごい漫才だった。アンタッチャブルの柴田さんが「後半は自分の笑い声で正直漫才を聞いてない」と評していたが、まさにそんな感じ。観客が笑わされるのではなく、自ら笑いに行っている。無敵やん。
結果としては、たくろうが大差で優勝という幕切れ。いやはやすごいものを見た。大満足して昨日は寝落ち。
今日は昨日見てなかった1stの6組目~10組目を視聴。ドンデコルテとたくろうが勝ち上がった理由に納得する。そして改めて最終決戦視聴。そのあとはドンデコルテとたくろうの漫才を3往復ほどした。エバースは回数を重ねるごとに展開を覚えて笑わなくなっていくが、ドンデコルテとたくろうは展開がわかってるのに何回見ても最初に見たのと同じかそれ以上に面白い。脳内にリフレインする。エバースの秀才型は、ドンデコルテとたくろうのような天才型より平均点が高いものの、一発勝負の最高到達点では敵わない。エバースには酷だが、エバースが優勝する回が今後あったとしても、大会としての満足度は低いのかもしれないなと思ってしまった。いや、エバースならもう一皮むけてもっと面白くなってくれる。2026の大会自体もきっと今年の満足度を超えてくる。はやくも待ち遠しいぜ~