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鰻喰らいに久留米迄

暑い。

早すぎる梅雨明けと容赦無く襲う熱波によって心身からの危険信号を察知した私は、気づけばJR鹿児島本線久留米方面行きの列車に飛び乗っていた。

兎にも角にも鰻を喰らわねばやっていられない。

そんな確信めいた妄想に突き動かされて到着しますは荒木駅。

福岡県民でもほとんど馴染みのないであろう、「久留米の次の駅」である。この地に何があるかというと、鰻せいろ蒸しの聖地「富松うなぎ 荒木店」である。

tomimatsu.co.jp

妻の親族が久留米に住んでいる関係で何度か訪れたことがあるのだが、もう破格の美味さなのだ。鰻の食べ方として、鰻重を上回っている。パリッとした「焼き」も勿論いいが、「蒸し」のふっくら感は衝撃的である。そして、白米は鰻と一緒に蒸し上げるため、うなぎのエキスをこれでもかと染み込ませた「炊き込みご飯」になる。これがまた抜群。蒲焼とタレと白米。材料は鰻重と同じなのに、調理方法だけでこんなに違った料理になるのかと目を剥くはずだ。とにかく無性に喰いたい。私は荒木駅から富松うなぎへの畦道を歩き始めた。


こんな道のり。


長閑。歩行人などいるはずもなく。


用水路。久しく見てない。なんだかエモい。


到着。10時から開店してる。贅沢な朝ごはん。



さあ興奮してきました。注文は迷わずせいろ蒸しの特上。ランチと思えば馬鹿高いが、これはランチではなく、医療行為の先取りである。このご時世、ちょっと通院したら平気で4〜5000円とられる。これで元気になって通院一回減ったら安いものではないか。私は熱に浮かされてまともな思考ができないでいる。


こちらがせいろ蒸し特上でやんす。何が特上というと、鰻が二段なんですね。ご飯の中に金塊の如く埋もれています。憎い演出です。


ズーム。

久々のせいろ蒸しに舌鼓を打ち、帰路に着く。心身が満たされると余裕が生まれ、周囲への視界が開ける。


行きがけの道では感じなかった、土や草木の匂い、流水や虫の羽音、路傍の野花の控えめな彩り、でこぼことした道を踏み締めるリズムの面白さなどを感じられるようになる。人工物に囲まれて死んでいた五感を久々に取り戻す。

14インチの液晶だけを眺めて、液晶の中に閉じ込められた人間にイヤホンを介して言葉をぶつけるだけですぎていく日々。それが味気ないことすら気付かなくなる前に、また自然の残る土地に逃げ込んで、とびきり美味いものを喰らいたいと思う。


さて、人工物に塗れてきます




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