以下の内容はhttps://un-deux-droit.hatenablog.com/entry/2025/03/11/000102より取得しました。


ラスト・オヤシラズとの戦い

先週の水曜日に4本目の親不知を抜いてきた。

抜いたと言っても、随分と奥深くに埋もれていたものを、3カ所切開の上細切れにして少しずつ除去してもらったため、どちらかというと「粉砕した」に近いかもしれない。約1時間の手術。取り除いた歯は6つくらいの欠片になっていた。道理で手術中、火葬場みたいな匂いがするなぁと思っていたが、自分の歯がカルシウム粉末にされて空気中を漂っていたのだと思う。

下顎に麻痺が残るかもしれないと言われていたが、幸いにしてそのような症状は現れなかった。しかし、術後2日目から顔の左下半身が漫画のように腫れだした。人相が変わるくらい腫れるとむしろ笑えてくる。しかし痛い。今日で術後丸5日経つが、まだ鎮痛剤が欠かせない。

想定していなかった不便としては、口内を3か所縫っているせいで、満足に口を開けないことだ。無理に開けようとすると糸が引き連れるような激痛が走る。唇は2センチ開けるかどうか。唇同士でその程度なので歯と歯の隙間は1センチほどしか開けない。スプーンがぎりぎり入るくらい。こうなると食べられるものがかなり限定される。

術後3日ほどは雑炊や素麺のようなものしか食べられなかった。ちょっとした固形のものだと歯と歯の隙間を突破できない。面白いのは、食べるためだけにいちいち激痛が走るせいで、食欲が湧かなくなってくるのだ。自衛本能でも働いているんだろうか。

もう一つ面白いのは、日が経つにつれて、口が開かないなりにそれなりにいろんな種類のものが食べられるようになってきたこと。ネズミが前歯で食物を削り取るように、1つのポーションを少しずつ削り取りながら歯の隙間に流し込む食べ方が板についてきた。痛みを感じない程度の開口で、それなりのスピードで食べる技を習得しつつある。人間案外いろんな不具合を自明のものとしてうまく付き合いながら生きていくしたたかさを兼ね備えているんだなあと他人事のように思う。

ちょっとした発見としては、少ないポーションを少しずつ口に含むおかげで咀嚼回数が増え、一つ一つの食材をしっかりと味わって食べることの豊かさを感じられている。噛むごとに素材から旨みがにじみ出てくる。普段いかに一つ一つの料理を楽しんで食していなかったのかを思い知らされている。

あと2日で抜糸ができるのだが、意識しなければそのうち口いっぱいにほおばりながら飯をかっ食らういつものスタイルに戻ってしまうのだろう。物理的に少しずつしか食べ進められないこの時期に、食事の喜びを味わう習慣を自らに植え付けたい。味わいが深まるのはもちろん、咀嚼回数が多くなれば満腹中枢が刺激され、食べ過ぎ防止になる。健常なときに咀嚼を繰り返すことは苦痛だが、今ならどうせ咀嚼を繰り返さざるを得ない。ならばこれを奇貨として悪しき食習慣をリセットしてしまおう。

どうせ不自由ならば、その不自由さを逆手に取って自分にとっての新たな利益に塗り替えてしまえ。

そんな開き直りを私に思いつかせる貴重な機会となった。

そうだとしても元の自由が手に入るなら手に入るに越したことはない。明後日が待ち遠しい。




以上の内容はhttps://un-deux-droit.hatenablog.com/entry/2025/03/11/000102より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14