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リスクを取る勇気は稀少品

先月から、自分の隣の部署のサービスと自分の部署のサービスを同一のシステム上で管理しよう、という社内調整を延々と続けている。

隣の部署のサービスは運用を始めてかれこれ8年経つのだが、4年前に劣悪な課長がメンバーの意見もろくに聞かずに基幹システムを切り替えた、という事件があった。以来、その部署のメンバーは、使いにくいシステムをなんとかやりくりしながら、以前よりも非効率で不毛な業務に苦しめられていた。

簡単に言うと、システムなはずなのに、サービスの運用上必要な業務がシステム上で網羅されておらず、手作業やエクセル管理などで補完しなければならない箇所が多すぎるのだ。そして、直感的に使いにくく、ヒューマンエラーも頻発していた。

それなのに改善ができなかったのは、初期投資でまあまあな額を使ってしまったのでサンクコストを惜しんだというのと、あろうことかその当時の劣悪課長が部長に昇進したあとに、システム改善の稟議を妨害してきたというのがある。システムを改良するというのは当時の自分の仕事を否定された気にでもなるのだろう。

その元課長は「利益を上げていないサービスに追加の投資はできない」ともっともらしいことを言っていた。しかし、利益の上がらない原因がまさにその使いにくいシステムのせいで利用者の利便性が損なわれているのと、運用メンバーの工数が取られすぎていて魅力的な企画を立案するための余力が取れなかったことにあるので、元課長の主張は詭弁である。ただその元課長と正面切って対決する後任の課長が現れず、4年間ズルズルとサービスは低空飛行を続けていた。

潮目が変わったのは昨年4月。その元課長が違う事業領域の管轄へとスライドした。同時に、隣の部署の課長に新任が就いた。ついでに私も課長になった。そして、私の部署で新たに稼働したシステムの機能が上々で、既存のサービスにも連携・転用できる見通しが立ったのだった。

こんなに都合よく人事と環境がかみ合うことなど二度とない。そう思って、ホワイトナイトとしてかねてから不憫に思っていた隣の部署の救済に手を差し伸べることにした。

ただ、性急に物事を進めることはできなかった。私も隣も互いに新任で、まず自部署のマネジメントを掌握することに半年を費やした。次に部署間の交流と業務の連携などに3カ月を費やした。そうやって丹念に仕込みをして部門間の非公式な関係性を形成してから、満を持して部門をまたいだシステムの統合を持ちかけたのだ。部門を跨ぐようなプロジェクトは、互いの利害が一致しなかったり、メンツを潰してしまったり、といったことで簡単にこじれてしまう。おそるおそる提出したシステム統合の企画書は、幸いなことに隣の部署のメンバーに好意的に受け止められた。

そこから私の部署のシステムを改修して転用するための具体的な仕様を詰めるのに1ヶ月。既存のシステムの改修ではなぜいけないのか、という説得材料集めに1ヶ月かかった。そしていよいよ稟議のフェーズ。新しい部長に、入念に作り上げた企画書を提出し、プレゼンを行った。

反応は上々だったが、これこれこういうリスクはある、それについてどう考えているか、という問いかけがあった。私はこれこれこういう処置で回避可能だと主張した。部長は隣の課長にも水を向けた。すると隣の課長は必ずしもリスクがないとは言い切れないというような要領を得ない回答をした。その腰の引けた課長の態度を見て、部長は「コンセプトは共感するが投資額の大きさとリスクの不明瞭さから軽々に決裁できない。役員会には諮るが、来期は小規模の改修にとどめ、再来期に本格的な移行という2カ年計画で様子を見るというのではどうか」と提案してきた。隣の課長はそれが無難かもしれませんと言った。私は、その可能性も検討しますが、タラレバのリスクをすべて取りきることは不可能なので、あくまで基本線としては来期の完全統合で役員会に諮らせてほしい」と頼み込んだ。とりあえず役員会までは日数が少しあるので、両睨みで引き続き情報収集を進めるということ裁定され、部長との会議を終えた。


私は隣の課長の旗幟を鮮明にしない態度に軽く失望している。メンバーと企画を詰めているときはこれでシナジーがうまれるとか鼻息荒く語っていたのに、いざ部長を前にしたらわかりやすく萎縮してしまって部長の様子をひたすら伺い、態度の後出しを繰り返していた。ここで何もしなければ確かに何のリスクも新たに発生はしないかもしれない。しかし、非効率な業務は温存され自分のチームのメンバーが摩耗し続けることもまた確定するのだ。それって自分の保身のために部下を見殺しにする行為じゃないか。

まぁそれが一般的な中間管理職の姿なのかもしれない。波風立てずのらりくらりと穏便にやり過ごすことだけが隣の課長の本望だったかもしれず、そうだとすればむしろ私みたいな野心的な改革派の存在のほうが迷惑なのだろう。未来を保証されない挑戦をする勇気というのは誰にでも備わっているものではない。リスクを冒すことにためらいのない私が脇目も振らず危険な橋を渡り続けるしかない。




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