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【書評】寺岡泰博「決断」

これを読んだ人は、昨年あった西武池袋店のストライキを覚えているだろうか。労働運動にしては珍しく耳目を集めた出来事だったが、1年の時を経て日々の喧騒のうちに忘却の彼方、という人がほとんどだろうと思う。

現時点では西武池袋店は営業しているし、ストライキに参加した人たちも大半が普通に働いているはずだ。あの出来事は何だったのか?どういう意味をもたらしたのか?そんなことを整理したく手に取った。

この本では、ストライキに至るまでの労使交渉の経緯と、労働組合執行部の決断、そしてストライキ当日の記録が淡々と描かれている。感情的な要素を極力廃することで過度に劇場化させることを避けて慎重に言葉を選んでいる印象。そのせいか、一手一手を理詰めで考えて、ストライキという選択をしたことがよくわかる。

今回のストライキが、単に雇用の維持や処遇の改善といった労働者利益の要求だけを目的とせず、「百貨店」という存在が地域社会の文化保全にいかに貢献しているか、ということを問うものであったことは瞠目すべきと思う。資本家か経済的合理性だけで測ることのできない価値を蹂躙することに、一市民として堂々と真正面から抵抗してみせた。組合執行部は、ストライキによってヨドバシへの売却を本当に止められるとは思っていなかったはずだ。ただ、おかしいことをおかしいと怒るべきタイミングで怒る人が発生しないと、「実はそこまで怒るべきことではないのかもしれないな」と「権力に対して怒って良いライン」がどんどん地すべりを起こしてしまう。その意味において、このストライキはストライキを観察したギャラリーにとって、「あ、これは怒って良いことなんだ」という「正気」の確認を促す効果をもたらした。

この本では、ストライキのあとに従業員がどのような運命をたどったか、その細部は描かれていない。彼ら彼女らが「勝ち取ったもの」は何だったのか。その答えを得るまで、今回の騒動の後日談をもう少し観察してみたいなと思う。





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