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私の11月は踊る

14歳の私は蒸気機関車みたいな生き物だった。
朝から朝まで元気だった。朝から晩までどころではない。深夜ラジオをお供に、一晩中何かしら読んだり書いたりしていた。
そんなほとんど徹夜の状態で朝を迎え、自転車に乗って学校へ行く。山奥に住んでいたので毎朝毎夕山道を下ったり登ったりしていた。重いペダルを漕ぎながら、顔面にぶつかってくる羽虫を吸い込んだり吐き出したりしながら、それでも私たちはお喋りを止めなかった。
授業中はとにかく妄想に勤しみ、休み時間になるとその妄想を友だちに語ってずっと笑い転げていた。友だちはいつも私の書いたものを褒めてくれた。おかげさまで私ときたら、自分は世界一文章が上手い14歳なのだと思い込んで常に鼻の穴を膨らませていた。
14歳の私はよく食べた。運動嫌いのモノグサ太郎だったくせにいつもお腹が空いていた。夜中にチョコレートをバリバリ齧っていた。そのツケはきっちり外見に反映され、鏡を覗くと岡崎京子の漫画に出てくるような、ありとあらゆるキモさが強調された女オタクがそこにいた。
14歳の私の世界にインターネットはまだなかった。雑誌とテレビとラジオを不器用に繋ぎ合わせて、山奥の村には存在しない「文化」の空気を必死にかき集めていた。
ミニシアターと呼ばれるような映画館に行ってみたかった。映画雑誌に紹介されている、村では絶対観られないマニアックな映画のあらすじを何万回も読み返してどんな映画なのかを自分なりに想像した。
深夜ラジオでしか流れてこない曲が好きだった。テレビに出てこないバンドのライブに行ってみたかった。
村の図書館や本屋には入荷されない漫画や小説を読んでみたかった。若者しかいないオシャレなカフェの片隅で孤独な物語を読みたかった。深夜になっても明るい街を歩いてみたかった。夜になっても営業しているお店にふらっと立ち寄ってみたかった。14歳の私にとって東京はいつだって夜の七時だった。ウソみたいに輝く街。


この11月、私はまるで14歳の私みたいな元気さで、14歳の私がやってみたかったことをやり込んだ。
とにかく遊んで遊んで遊びまくる。
40をとうに過ぎて一体どこにこんなパワーが残っていたのか、自分でも首を傾げるほどに11月の私のたましいは元気だった。
仕事をやっつけ家事をやっつけ新幹線に一人飛び乗り、やれ横浜だやれ千葉だと都会を走り回って遠方の友だちと遊び狂い、かと思えば地元で車を飛ばして幼馴染とケタケタ笑い合い、とにかく人と会うたびにめちゃくちゃ食べた。何を食べてもおいしくて胃袋が悲鳴を上げるまで食べ続けた。明日のことなんて考えずに食べて飲んで笑って喋って歩き回った。旅から帰った次の日、ふくらはぎがおかしな震え方をしていた。
誰と会っても読んだり書いたりする話をした。11月に会った友だちはみんな読んだり書いたりすることが好きな人ばかりだった。だからものすごく盛り上がる。それが本当に楽しくてたまらない。大人になると日頃の生活の中で読んだり書いたりする話ばかり延々と出来る機会なんてそうそうない。これはただの趣味だからだ。
14歳の私はいつも趣味の話ばかりしていた。趣味の話しかすることがなかった。私の世界はそれしかなかった。現実の話は出来なかった。みんなみたいに現実のことがうまく理解出来ていなかった。14歳の現実は直視すればするほどつらいことばかりで、言葉にすることすら嫌だった。自分の冴えない進路のことより漫画のキャラクターの架空の恋愛模様で頭をいっぱいにしていたかった。
今大人になった私は一応現実の生活を回している。ヒイヒイ言いながら回している。回しているつもりだ。もしかしたら回せていないのかもしれない。ある日突然みんなみたいに回せていなかったぶんのツケを払えと言われて人生が詰むかもしれない。
それでも14歳の頃と違い、今の私はそれなりになんとなくぼんやりと現実の話も出来るようになった。分かってなくても分かったような顔をして話せるし、それはそれで気持ちが少し楽になる。もっと早くこういうことが出来るようになりたかった。
大人になってよかったと本当に思う。14歳の頃出来なかったことがたやすく出来るようになる。新幹線に飛び乗るなんて、トレンディドラマの中のあるあるであって自分の人生にそんな瞬間が訪れることはないと思っていた。
それでいて14歳みたいに遊ぶこともまだなんとか出来るもんなんだな、とこの11月で思えたのでよかった。たましいが燃え尽きるまで趣味の話をぶっ続けることが私にはまだ出来る。嬉しい。それに付き合ってくれる友だちがいる。嬉しい。本当にみんなありがとね。
ただまあやっぱり、あの頃と違ってふくらはぎが変な震え方をするくらいには疲れるので、毎月蒸気機関車みたいに生きてるとすぐ脱線して大事故が起こることだろう。今後も適度に生きつつたまにめちゃくちゃ暴走しようと思います。友だちのみんな、よろしくね。また遊ぼうね。




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