※この記事は漢直アドベントカレンダー 2025 の11日目の記事になります。
はじめに
今回はT-Codeの練習方法について、論文やeelll/JS memo等で提案されている内容をご紹介しようかと思います。
練習方法についてはeelll/JS memoが詳しいのですが, 漢直をやったことのない人にはこれでも分からない,という方もいらっしゃると思うので, どういう事をやっているかというのを説明できればと思います。
文献: 日本タッチタイプ入力コード用の練習システムのテキストについて1
練習システムのテキストを作成するに当たって次の方針をとっているようです。
- 連想・ニモニックの排除
- ナンセンス文の排除
- 練習量の適正化
- 興味の持続
連想・ニモックの排除とは,キーボードのキーの字を覚えてそれに従って入力するといった事はせず, 事前にキーの位置を示す図等を表示して,軽く覚えてそれに従って入力するといった感じです。
練習文については意味がある文章になっているとか, 練習文は適度な長さになっているとか, 目標は3%以下とかそういった目標を設定すると興味が続くとか, 色々工夫をされているようでした。
文献: 日本語タッチタイプ入力コード用の練習システムの作成2
これは東大の研究室で作成したCAIシステムCATT(Computer Aided Type rainer)についての論文です。
eelll.jsにもありますが,この練習システムの他のタイプ練習ソフトと違う所は次の点です。 本文から引用します。
通常、練習者が入力したキーは画面には表示されず、カーソルのみが移動して入力位置を示す。 練習者は提示された練習行全体を終わりまで打ち、入力途中ではエラーがあっても システムからはそれを知らされず、中断も受けない。これは、エラーをいちいちその場で、訂正させることは タイプのリズムを破壊し、練習者が打鍵の正しさを意識するようになり、無意識下でのリズミカルな動作である タッチタイプを実現するためには好ましくない考えられるからである。 この考え方は[3]の練習システムと共通であり、一方多くの市販のワードプロセッサーの練習システムは その場で訂正を行わないと先へ進めない形式になっている。
この[3]の論文が豊橋技術科学大(TUT-Codeを開発した研究室)だったりするのも面白いところです。
この「その場で訂正を行わないと先へ進めない」形式にすると,自分の場合うっかり「ミスしてそれを修正するところまで」 学習してしまって,特に「ATC」とかでついつい合っているのでバックスペースで削除しようとした方も 何人かいらっしゃるのではないかと思います。
そういうのを避けようという意図なのだと思います。
漢直特有のなかなか面白い練習方法です。
文献: 練習テキストから上達が計算できる日本文タイプ作業の認知的習得モデル3
実は個人的に結構面白いな,と思ったのは文献3で,習得したい文字は必然的に練習用テキストにたくさん含まれるのですが, 間隔が2以内だと一度入力した文字の打鍵が脳内のキャッシュに入って,習熟していないのに入力スピードが上がる,誤打率が下がる等の影響が 統計データから分かったそうです。
また,そのキャッシュの効果は「句点」を入力するとクリアされ,習熟度と入力スピード・エラー率の低下が比例関係となる効果があるのだそうです。
そこで,現在で言うところのEELLLのテキストは学習したい文字が二文字より多く離れているか,ワザと句点や中点で区切られている, ということのようです。
最近練習している600番台(最上段を含む練習テキスト)で学習したい漢字を含む熟語が中点が区切られているなぁと思っていたのですが, そういう理由があったということで非常に納得しました。
練習ソフト「eelll/JS」と「EELLL」とそれ練習用テキストの内容
「eelll/JS」と「EELLL」の二つは,今でも利用可能なT-Codeの練習用ソフトの二つになります。現在では他の漢直の練習用としても使われていたりします。
練習用のテキストは研究で開発された内容そのものと思われます。
詳しくはEmacs版オリジナルのEELLLの作者前田さんに聞いた方がいいかもしれませんが,
多分,X.com上でぼそっとポストして終わりなんだと思います。
まぁ,皆さんお子さんもいらっしゃいますし,お忙しいですもんね。 うちの子も期末試験期間中で頑張っているようです。
さて,早速EELLLのT-Code用練習用テキストについて簡単に説明していきましょう。
だいたいEELLLTXT もくじを見てもらうと, どの文字の順番に練習していくかがお分かりいただけるかと思います。
いつか見たキーボード(Qwerty配列格子状)の配置図を次に示します。

論文等から紐解くT-Code (1) 設計編では, 昭和41年の新聞の頻度の高い順に打鍵の指の順から「RL」「RR」「LL」「LR」となっていることをご紹介しました。
上中下の三段ではおよそ900字で,最上段(R', L')がからんだ文字がおよそ450字あります。
レッスン番号も大むね「RL」→「RR」→「LL」→「LR」→「R',L'がらみ」の順に並んでいます。 大まかにまとめると次の通りです。
| レッスン番号 | 手の順番 | 内容 |
|---|---|---|
| 1~15 | RL | ひながな |
| 16~19 | RL | 数字 |
| 20~25 | RL | カタカナ |
| 101~106 | RL以外 | ひらがな |
| 201~236 | RL | 漢字 |
| 301~359 | RR | 漢字 |
| 401~460 | LL | 漢字 |
| 501~552 | LR | 漢字 |
| 601~680 | RL', LR', R'L, L'R | 漢字 |
以前の説明で,T-Codeでは二打鍵の手の順番でだいたい頻度が分かると言った気がしますが, 基本的には頻度順になっているといえるでしょう。
実は,LL',RR'等の第1,2打鍵が同じ手の最上段がらみの漢字にはこの練習テキストには入っていません。
というのは,あくまで私の想像ですが,
部首合成変換等であったら便利な漢字が追加されている感じなので,
それ単体での言葉があまりない漢字も多いような印象を受けています。
また,部首合成変換ができる前にある程度練習テキストが固まっているので, その点も700番台が幻となっているのではないかと思います。
また,EELLLの練習テキストは自分でも編集・追加が可能なので, 自分専用のレッスンを追加するのもいいのではないかと思います。
私の場合は始めた当初は1年間で400番台までやってましたが,ほとんどが300番台を練習をしていました。 その後マイブームが12年前ぐらいに来て,その時500番台までやっていたかと思います。
で、またマイブームが今年来て,400~600番台を練習し直していて, 現在は主に600番台をだらだらと練習しています。
ただ,ネットとかの情報で,漢字を読み書きするのと「かな」を読み書きするのは別の脳の部位を利用している, 時なものを読んで,ひらがなだけのレッスンを練習し直すということもやっています。
次の動画は私が試しに練習している時の動画ですね。Emacsのtc.elからEELLLを立ち上げて練習しているものを録画したものになります。
音声がないというのもあり,非常に地味です。
練習は一行ずつ上の文を入力して最行にエンターを入力すると結果が分かるというものです。 入力途中は自分が入力した文字は見られません。
エディタの上半分に「木を見て森を見る」形式で練習する文字(とそれと同じ手のパターンの文字)の運指が示されています。 はじめにこの表で確認してから入力する感じです。別に運指を見ながらでも構いません。 覚えさせるのは「視認→反射的に指動かす」の方で頭で覚える感じとは少し違います。
「文字を見ると反射的に指が動くまで練習をして待つ」という気持ちぐらいでちょうどいいぐらいかもしれません。
また,EELLLは練習文がわりと秀逸で,40年前に考案されたとは思えないほどの文章です。
レッスン番号515番の中の文章で,わりと最近やった内容なのですが(LRなので900字のうちの最後のレッスンです)「税」の漢字を覚えるレッスンの文章です。
税関で免税品に重い関税をかけられて、税額が印税を上回った。 増税後の税率が高いのに、国税庁はもっと重い税金に税法を改正したい。
私はこの文で「税」を覚えました。まさに「今更」という感じです。 もっと早く500番台練習しとけば良かった。
なお,練習用テキストのtc.el版はEELLLTXT のリンク先で全文が見られます。
練習時間について
習得には300~400時間の練習が必要とされています。 これは英文タイピストが一人前になる練習量と同じとされているので, 漢直の開発者は「これは英文入力でも速く入力するには通る道だ」みたいなことをおっしゃっていました。
ただ,Qwertyのローマ字入力で日本語を変換している方にとっては,平仮名の運指が全く想像もできないこともあり, 相互に干渉することもなく利用できると思います。
自分の場合は1ヵ月平仮名の練習をしてその後IMEのローマ字変換テーブルをいじって無理矢理実戦投入するという 無謀なことをやっています。
最初の平仮名を指で覚えるのは苦労しました。 といっても,今もそうなのですが,入力する前にどう入力するかの場所を見て, EELLLで入力していて指が覚えるまで待つといった感じです。
なので,最初は入力方法を目で見てもいいのでリズムを一定に間違えないように入力することが重要です。
指に覚え込ませるので,間違った指の使い方で間違った入力をすることは, 間違った動きを指に覚え込ませるということにつながります。
その辺りは eelll/JSの練習方法についてが参考になるかと思います。
さいごに
今回はT-Codeの練習方法について説明してきました。
個人的には,何故「・」とか「。」とかで区切った短分が練習文に出てくるのか?が疑問でしたが, その理由が分かってよかったかな?と思います。
漢直は習得するまでには非常に時間がかかりますが,習得してからは「かな漢字変換がない」という 大きなメリットを得ることができます。
また,Google日本語入力等を使うと,IMEだけでT-Codeを利用することも可能です。
その方法についての説明も後日紹介する機会があるかもしれません。
それでは今回はこのへんで。
ではまた。