ベッドの中、凍える寒さで目が覚めた。iPhone を見ると朝5時で、天気アプリは -6℃ を表示していた。
電気毛布はONにしていたはずなのにただの薄い毛布になっている。プラグを差し直しても動かないので故障かと思う。
仕方なく電気ヒーターをつけようとすると、これも動かない。部屋の電灯スイッチをONにしてもライトが明るくならない。
真っ暗の部屋の中、iPhone のライトを懐中電灯代わりに移動をして、ブレーカーを確認してみる。ブレーカーは落ちていない。念の為パチパチ上げたり下げたりしても変わらない。
念のため、玄関のドアを開けて共用部の廊下を見てみると、階段があるはずの空間には完全な闇が広がっていて何も見えなかった。建物ごと停電になったみたいだった。
どうしよう…と考えた結論、暗くて何もできないから諦めて一旦眠ることにした。
考えてもどうしようもないことは諦めるしかない。時間が自然と解決してくれることもある。最初は寒くて寝付けなかったが、毛布に必死にくるまって寝た。
数時間後、朝8時前に起きる。この季節のイギリスの夜明けは朝8時だ。窓から光が入ってきて、部屋は薄明るくなってきている。やはり電気は動かない。
この家の問題は、ガスがなく、暖房もコンロも電気式だということだ。電気がないと電子ケトルが使えなくて朝のコーヒーも淹れることができないし、コンロで目玉焼きを作ることもできない。
こうして僕の家は、人類が火を発明する以前の生活に戻った。
くよくよしてても仕方がないので、スマホで職場に朝のミーティングに出れないことを連絡して、ダウンの上にさらにコートを着て家を出てコワーキングスペースに向かう。
共用部の階段の完全な闇は、やや薄い闇に変わっていた。家が急にホーンテッドマンションになった感じが出ている。

家の建物を出て通りを歩いてると、同じ区画の他の建物も停電しているようで、何軒か隣のホテルのフロントも明かりがついてなくスタッフの人が困った表情をしていた。
電気会社のバンが道に止まっていて、その横でショベルカーが地面を掘り起こしている。電気ケーブルは地下を通ってるからメンテナンスのために掘り起こさないといけないのかもしれない。そういえば道に電柱がないよなと思う。ロンドンの空は広く感じる。
電気会社のホームページを見ると僕の地域にインシデント情報が出ていて「計画してない停電」とページに書かれていた。
リアルタイムで状況のアップデートがあって、こういう感じのことが書いてある:
8時50分: やあ、デイビッドだ。水道管から水が吹き漏れていて、電気修理の作業ができなくなった。水道修理が来るのを待っている。修理完了推定時刻は未定だ。また共有する。
9時44分: やあ、デイビッドだ。水道修理が完了するのを待っている。水道修理が終わるまで危険だから電気修理ができない。また共有する。
仕事中に気になって何度もリロードしたけど、更新がなくて不安感が積もる。
コワーキングスペースの窓から雪が降っているのが見えた。

仕事を終えて、夕方6時頃に恐る恐る帰ると、建物の他の部屋の明かりがついていた。今年一番ホッとした。
自分の家のライトがつくと、とてもありがたく感じた。シャワーのお湯が出なくなったときもそうだけど一度失ってみると、普段あって当然のものにも感謝を感じることができる。
この話からの学びは特にないんだけど、感想としては「イギリス意外と本気出せばやるじゃん」だった。
1日で電気設備がなおったのは意外だった。前回シャワーのお湯が出なくなったときは一週間はかかったから、少なくとも数日はかかるものかと思っていた。止まるとほんとにやばいものは本気でなおすようにメリハリをつけるのが上手なのかもしれない。