それを共同で作り上げて維持していく意思が両方になければ続かない。
共同幻想を維持する意思に善も悪もない。それを見事に漫画にするなんて。読んでびっくりでした。この漫画を読んだあとに、本を何冊もあっさり捨てる決断ができました。
この漫画は恋と陰謀論がテーマで、陰謀論にのめり込む人と、その人にどう接していいか真っ直ぐに悩む人の物語です。途中にユーモアがたくさんあって、二度読むと登場人物の部屋の描写に発見があり、初回の読みでは見落としがあったことに気づきます。
人間が人間と向き合って「あなたが望む共同幻想には参加できません」と意思表明することのやさしさについて、これまでこういう角度でじっくり考えたことがありませんでした。
リアルではどうしても「触らぬ神に祟りなし」という処世術をとってしまうから。
特に2巻は、自分の人生に前向きに集中できない時の思考をこんなふうに漫画で表現することができるのかと、胸に迫り来るものがありました。
特定の誰かありきの過去と未来に集中してしまうときの思考を文章化したものでは、過去に武者小路実篤の『お目出たき人』と、三島由紀夫の『正気のおわり』を読んだことがあったけれど、漫画でやったらここまでできるのかと、漫画ならではの凄味も感じます。
他者との関わりの中で抱く「関係性を固定したい」という気持ちは「安心したい」という渇望の変化形。「努力せずに安心したい」となれば、それなりのみじめさを経験することになる。
正気でいたいという気持ちって、その気持ち自体の存在が「そもそもどこ視点からよ?」 とつっこみどころ満載の対象です。この迷宮に飲み込まれそうな時に、その時のために持っておく本として、この漫画は精神安定剤としても機能しそう。
Kindleで初めて漫画を買ったのですが、わたしの古い端末(何代も前のPaperwhite)でも快適に読めました。