この小説を映画にした作品『妻二人』(1967年/増村保造監督)が好きで原作を読みたいと思っていたら、先日通りがかった古書店の外箱の中にこの本がありました。
まるで竹取物語でおじいさんがその竹だけが光って見えた時のようでした。
読んでみたら想像以上のおもしろさでした。
アガサ・クリスティやコナン・ドイルのように頭のいい登場人物のユーモアや意地悪さで読ませる展開ではなく、とことん御都合主義の主人公の自我を掘り下げる会話とモノローグで読ませます。うわーこの男せこいなー。相変わらずチンケやなーと思いながら読まされているなかに、凡人の覚醒の瞬間みたいなのがたまにあるのがおもしろい。
自分の損得しか考えていない主人公が中心だからこそ、周囲の人の人間的魅力が引き出されて、みなさんキャラクターがしっかり立っています。
映画のレビューを見ると、この語り手役にあたる俳優さんがロボットのような喋り方で棒演技がひどいと評判なのですが、「それ原作通りだから!」と教えたくなります。
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それにしても、この世にはミステリーファンがほんとうに多いんですね。
映画を観なければ知らなかった昔のアメリカの小説にレビューがいくつもついています。
わたしはこの頃、江戸川乱歩と赤川次郎が好きで読んでいた子供時代とは違う感覚で、また推理小説をおもしろく感じるようになりました。昔は不気味さを楽しんだりゲームのように犯人を当てっこするものと漠然と思っていたのだけど、それだけじゃないですね。
この小説をきっかけに「環境に適合するために作られた自分の感情を疑う」という、もうひとつ地面の下にある意識を読み取る楽しみを見つけました。
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